本籍,本籍地のこと。〈ほんかん〉ともいう。律令の制度で戸籍に記載された土地の義。転じて出身地をいう。《令義解(りようのぎげ)》賦役令,赴役身死条に〈およそ丁匠役に赴き身死せば(略)並びに路次に埋殯し(略)牌を立て幷せて本貫に告げよ〉とあり,《続日本紀》和銅4年(711)5月条に〈主に違い礼を失はば即ち其の位を追い,これを本貫に返せ〉,《類聚三代格》天平勝宝4年(752)11月16日の太政官符に〈諸司故なく上らざれば本貫に放ち還すこと〉等とあり,本貫は本籍地をさすことがわかる。現在も学術用語として,中世武士団の出身地等をさして使用する例がある。
→本領
執筆者:五味 克夫
氏族発祥の地名をさし,姓氏と組み合わせて表記される。例えば金海金氏と慶州金氏とでは,同じ金姓であっても本貫が異なり,父系血縁関係をもたない他族とされる。本貫の地は史実に基づく始祖の出身地であることも多いが,新羅・伽倻(かや)等の建国神話や伝説に基づいて本貫を定めた氏族や,中国から帰化した者の最初の定住の地を本貫とした例も少なくない。本貫の制度は高麗時代以後,地方の豪族が当時の郡県制のもとで地域別に階層的に編成されてゆく過程でしだいに定着し始めたと考えられる。姓と本貫を同じくする〈同姓同本〉の者どうしの婚姻が禁じられる氏族外婚制の単位として重視されるようになったのは,李朝以降のことである。金,李,朴,崔等の大姓では今日でも本貫の数は数十に達するが,一方では閔,成,車,慎などのように単一本貫の姓氏もある。今日でも韓国では結婚などに際して本貫が重視される。
→族譜
執筆者:伊藤 亜人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
「ほんかん」とも読む。本籍・本籍地のこと。律令(りつりょう)制下では戸籍に記された土地。律令国家は公民を支配するにあたって、その本来の居住地を本貫と定め、その地(いずれかの国・郡・里に属する)の戸籍に登録し、その地で口分田(くぶんでん)を与えて定住させた。そして、そのうえで租庸調(そようちょう)を徴収し、徭役(ようえき)労働を賦課した。律令国家は、公民を本貫に縛り付けておくことによって成り立っていたので、公民が本貫を離れてかってに移動することを厳禁した。また、近隣の五戸をもって構成する五保(ごほ)の制を設けて、相互に監視させ、旅に出る場合には同保に告知させるなど、種々の逃亡防止の対策をも講じた。しかし8世紀初めの平城京造営のころには、早くも浮浪・逃亡が大量に発生しており、この本貫を離れた「浮浪人」が、やがて律令国家の公民支配体制を破綻(はたん)させる大きな要因となった。
[村山光一]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
「ほんかん」とも。律令制で戸籍に記載されている土地をいい,出身地・本籍地を意味する。貫は「スジ」「ミチ」を意味し,本来の所属を示す文字。律令下の農民は本貫と居住地は同じであることが原則で,律令政府は本貫を離れた浮浪人の本貫送還を図った。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…門中の始祖から代々その後継ぎとなってきた家(長男の系統)を宗家(チョンガchongga),その当主を宗孫(チョンソンchongson)と呼ぶが,これは門中の象徴的中心である。
[本貫,族譜,門中]
出自(同一の祖先の子孫であること)を示すのが姓と本貫である。朝鮮の姓は約260種類と限られているが,多くの姓はさらに系統によっていくつもの氏族に分かれている。…
…新羅末期の戦乱を経て高麗の支配層になっていった,むらを本拠地とする地方豪族たちの多くは,かつての村主たちの後身である。都で官僚,貴族になった人々も,開拓のために北方へ移住した人々も,本拠地であるむらあるいはむらの連合体の擬制的な血縁集団とみなして強いつながりを意識し,現在にまでつながる本貫の意識を育てていった。また運輸,物品製作など国家に対する特定の義務もむら単位で賦課されることが多く,むらは実質的に最小の政治単位でもあった。…
※「本貫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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