東京都千代田区北の丸公園内にある日本で最初の国立美術館(略称MOMAT(モマット))。1952年(昭和27)、東京都中央区京橋で「国立近代美術館」として開館。1963年、京都分館を設置したが、1967年、文部省設置法改正により京都分館が「京都国立近代美術館」として独立したため現名称に改称された。2001年(平成13)からは独立行政法人国立美術館の運営となった。
開館時の建物は、旧日活本社ビルを前川国男の設計により改装したもの。美術史家、美術評論家の今泉篤男(1902―1984)、河北倫明(かわきたみちあき)(1914―1995)がそれぞれ初代次長、事業課長を務め、当初は企画展を中心とする運営を行った。MoMA(モマ)(ニューヨーク近代美術館)をモデルとした運営を行い、フォービスム、キュビスム以降の作品に対象を限定し、映画なども積極的に取り上げた。また、教育プログラムにも力を入れ、旧日活本社ビル試写室を利用した映画上映、講演会などを開催した。1958年の増築工事により、近代日本絵画の常設展示ができるようになった。
1969年北の丸公園内に、設立当初からの評議員であった石橋正二郎の寄贈により、谷口吉郎設計の新館が開館し、京橋から移転。移転地は、石橋の希望で皇居の近くが選ばれた。移転によって本格的なコレクションの常設展示が初めて可能となった。
コレクションは購入などを通じ、1万3000点以上(2021年現在)に及ぶ。1907年(明治40)以来、政府は毎年文部省美術展覧会(文展)を開いた。これは1919年(大正8)帝国美術院美術展覧会(帝展)を経て、1937年(昭和12)新文展へと継承され、政府は文展、新文展出品作品から買い上げる制度を設けた。その買い上げ作品の多くは東京国立近代美術館に収蔵されている。
展覧会では「日本におけるダダイスムからシュルレアリスムへ」展(1968)、欧米と日本の動きが併置された「シュルレアリスム」展(1975)、「キュービズム」展(1976)など、欧米の現代美術の流れとそれに対応する日本における美術の動きをつなげる試みが企画された。
また、1999年(平成11)から2001年にかけて増改築し、展示室の拡張、図書室の整備が行われ、レストランやミュージアム・ショップが新設された。
国立映画アーカイブ(旧、東京国立近代美術館フィルムセンター)は東京国立近代美術館開館時に映画部門として開設。1969年(昭和44)、文部省設置法施行規則改正により「フィルムセンター」となり、本館が北の丸公園に移転後の1970年、京橋の旧館をフィルムセンターの専用施設とした。日本で唯一の国立映画機関であり、1993年国際フィルム・アーカイブ連盟(FIAF)に正会員として加盟している。1984年火災によりコレクションの一部が焼失した。1986年には神奈川県相模原市にフィルムセンターの分館が設けられた。2018年(平成30)東京国立近代美術館より独立し「国立映画アーカイブ」となった。
また、1977年(昭和52)分館として工芸館が北の丸公園内に開館。文化庁からの移管および本館からの作品474点をもとに、陶磁器、ガラス、染織、漆工、木竹工など、第二次世界大戦後のものを中心に、国内外の工芸作品約4000点(2021年現在)を所蔵する。文化庁からの移管分は日本伝統工芸展出品作から購入されたものなどである。この建物は、1910年、陸軍技師田村鎮(やすし)(1878―1942)の設計により建てられた2階建てれんが造りの旧近衛師団司令部庁舎(国の重要文化財)を転用したものである。2020年、通称を「国立工芸館」(2021年4月より正式名称)として石川県金沢市の本多の森公園に移転。建物は、1898年(明治31)に建てられた旧陸軍第九師団司令部庁舎と、1909年に建てられた旧陸軍金沢偕行社(かいこうしゃ)を移築したものである。
[鷲田めるろ 2021年12月14日]
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東京,北の丸公園内にある美術館。1952年京橋に国立近代美術館として開館,67年京都分館独立(京都国立近代美術館)に伴い現名称となり,69年現在の建物(谷口吉郎設計)に移る。京橋の旧建物のフィルムセンター(1970開設)と77年旧近衛師団指令部(北の丸公園)を改装して設けられた工芸館を分館とする。近代日本美術を中心に収集・常設陳列するとともに,内外の近・現代美術の動向をとらえた企画展を開催する。収蔵品は約2500点である。
執筆者:千葉 成夫
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