東夷(読み)トウイ

デジタル大辞泉 「東夷」の意味・読み・例文・類語

とう‐い【東×夷】

古代中国人が東方の異民族を称した語。→西戎せいじゅう南蛮北狄ほくてき
昔の日本で、京都の人が東国武士を呼んだ語。あずまえびす。

あずま‐えびす〔あづま‐〕【×夷】

京都からみて、東国の人、特に無骨で粗野な東国武士をあざけっていった語。東夷とうい

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精選版 日本国語大辞典 「東夷」の意味・読み・例文・類語

とう‐い【東夷】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 東方のえびすの意 )
    1. 中国で、東方に住む未開の異民族をさしていったことば。黄河の中・下流地域に住む漢民族を「中華」と呼ぶのに対して、中国東北部・朝鮮・日本などの民族をさした。
      1. [初出の実例]「日本は九夷の其一なるべし。異国には此国をば東夷とす」(出典:神皇正統記(1339‐43)上)
      2. [その他の文献]〔書経‐周官〕
    2. ( 日本の東部に住んでいるところから ) 蝦夷(えみし)の異称。あずまえびす。
      1. [初出の実例]「東夷成敗事。於関東其沙汰〈東夷者蝦子(えぞ)事也〉」(出典:沙汰未練書(14C初))
    3. 東国地方の武士。関東地方のあらあらしい武者。京都の人があざけりの気持をこめて用いたことば。あずまえびす。あらえびす。
      1. [初出の実例]「国母官女は東夷(とうイ)西戎の手にしたがひ、臣下卿相は数万の軍旅にとらはれて、旧里にかへり給ひしに」(出典:高野本平家(13C前)一一)
  2. [ 2 ] ( 江戸の東南隅にあったところから ) 江戸深川の遊里。吉原の北狄、新宿の西戎、品川の南蛮に対する称。
    1. [初出の実例]「東夷南蛮西戎は岡場所」(出典:雑俳・川傍柳(1780‐83)二)

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改訂新版 世界大百科事典 「東夷」の意味・わかりやすい解説

東夷 (とうい)
Dōng yí

中国古代,今の河南省中心文明を開いた漢民族が,東方の異民族に与えた蔑称。〈夷〉は音韻のうえで低や弟と同系のことばで,背丈の低い人々を意味した。漢民族の発展につれてその内容は変化し,初めはいまの山東省江蘇省に居住して殷や周と争った徐夷,奄夷,淮夷(わいい)などを指した。孟子も山東省出身の聖王,舜を東夷の人とよんでいる。これら諸民族が漢民族に融合した秦・漢期以降になると,もっぱら中国東北地方,朝鮮半島,日本列島を東夷の地とするようになった。正史に初めて〈東夷伝〉を立てた3世紀の人,陳寿の《三国志》は,夫余,高句麗,東沃沮,挹婁,濊,韓,倭などを挙げている。これら諸民族は,秦・漢両帝国の政治・文化の影響や軍事的圧力,また気候の寒冷化による生活環境の悪化などの諸条件に刺激されて民族的自覚をたかめ,中国諸王朝から封爵・官号を受けて政治的結びつきを緊密化する一方,中国沿岸部や河川流域の越族系・夷系の漢民族を含めて海洋・河川の便を利して相互に活発に交流し,環東シナ海文化圏を形成した。 
夷狄(いてき)
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「東夷」の意味・わかりやすい解説

東夷
とうい
Dong-yi; Tung-i

中国古代の民族名。中国の中原にいた漢民族が,異文化をもつ周辺の諸民族を「東夷,西戎,南蛮,北狄」と蔑称したが,東夷の住地は,ほぼ山東省から江蘇安徽2省にかけてであった。すでに代に,これに対する大規模な討伐が行われたことが甲骨文にみえ,また,西周期にもこの討伐が大きな問題であったことをうかがわせる金文がある。春秋時代には斉,魯の周辺にいくつかの夷族の国があった。のち東方の異民族 (東北,朝鮮,日本など) をさすようになった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「東夷」の意味・わかりやすい解説

東夷
とうい

中国の東部および東南部の異民族に対する蔑称(べっしょう)。夷(い)民族は殷(いん)には人方とよばれる有力な部族国家を形成した。あるいは殷族と近い関係にあった民族ではないかともいわれる。殷および周からしばしば討伐を受けたが、その活動はのちのちまで続いた。莱夷(らいい)、徐夷、淮夷(わいい)などいくつもの部族に分かれており、春秋時代には呉(ご)、越(えつ)など、浙江(せっこう)、安徽(あんき)、江西方面の部族も九夷などとよばれた。その後も中国人は東方の異民族をすべて東夷と称したので、日本、朝鮮など極東民族もそのなかに含まれるようになった。

[宇都木章]

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百科事典マイペディア 「東夷」の意味・わかりやすい解説

東夷【とうい】

中国古代,今の河南省を中心に文明を築いた漢民族が東方の異民族を呼んだ蔑称。満州,朝鮮,日本などの各種の民族がこの名で呼ばれた。正史では3世紀末の《三国志》が初めて〈東夷伝〉を立て,夫余,高句麗,東沃沮(よくそ),【わい】,韓,倭などを挙げている。→魏志倭人伝

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旺文社世界史事典 三訂版 「東夷」の解説

東夷
とうい

古代中国人が東方の異民族を卑しんで呼んだ名称
古く山東から江蘇北部の海岸地方にいた民族をさしたが,のち満州・朝鮮・日本などの各種民族の総称となり,『後漢書』『三国志』などの東夷伝に詳述されている。

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普及版 字通 「東夷」の読み・字形・画数・意味

【東夷】とうい

東方のえびす。

字通「東」の項目を見る

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