北狄(読み)ほくてき

精選版 日本国語大辞典 「北狄」の意味・読み・例文・類語

ほく‐てき【北狄】

[1] 古代中国で、匈奴(きょうど)韃靼(だったん)突厥(とっけつ)鮮卑(せんぴ)回紇(ウイグル)などの北方の未開遊牧民族を卑しめて呼んだ語。日本では、北方の賊、また、広く、野蛮人や朝敵をもいう。
経国集(827)二〇・白猪広成対策文「北狄章身、蹈雲以梯山」 〔書経‐仲虺之誥〕
[2] 江戸時代、遊所としての新吉原異称。江戸の北方にあったところから、品川南蛮深川東夷、新宿の西戎に対していう。

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デジタル大辞泉 「北狄」の意味・読み・例文・類語

ほく‐てき【北×狄】

古代中国人が、匈奴きょうど鮮卑せんぴ韃靼だったんなど北方の異民族を卑しんで呼んだ語。→西戎せいじゅう東夷とうい南蛮なんばん

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「北狄」の解説

北狄(ほくてき)

中国北方の異民族の総称春秋時代にはの北方の,今日の陝西(せんせい)省,山西省河北省北部に居住する異民族をさしたが,戦国時代から漢民族の北方への進出につれて北狄はしだいに漢民族に同化された。漢代以降は長城以北の匈奴(きょうど)鮮卑(せんぴ)柔然(じゅうぜん)室韋(しつい)契丹(きったん)靺鞨(まっかつ)突厥(とっけつ)回紇(かいこつ)などモンゴル系,トルコ系,トゥングース系の諸民族を呼ぶ総称となった。

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改訂新版 世界大百科事典 「北狄」の意味・わかりやすい解説

北狄 (ほくてき)
Běi dí

中国,古代,漢民族が北方の異民族を総称した語。狄翟(てきてき)ともいう。春秋時代,今の陝西省渭水流域から山西省南部に遊牧し,晋,邢,衛,鄭などの国と争った。赤狄・白狄・長狄の3種10部族の名が伝わる。農耕を営み城壁の中に住むのが漢民族で,狄は戎(じゆう)と同様〈野の民〉であり,都市国家時代の中国には生業習俗の異なる両者が混在したが,戦国時代になり領域国家が成長するとしだいに姿を消した。
夷狄
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「北狄」の意味・わかりやすい解説

北狄
ほくてき

中国の古代北方異民族の蔑称(べっしょう)。北翟とも書く。狄は夷狄(いてき)とか戎狄(じゅうてき)とよばれ、異民族をさす語であったが、のち北狄として北方民族の専称となった。その起源は殷(いん)・周時代に活躍した鬼方(きほう)であるとか、あるいはトルコ種の部族だとかいわれる。春秋時代には陝西(せんせい)、山西方面で活躍し、赤狄、白狄、長狄などの諸部族に分かれて中原(ちゅうげん)にも進出した。春秋前期、衛が狄のため滅ぼされ、斉(せい)の桓公(かんこう)がこれを復興した話は名高い。また春秋戦国時代に河北に進出した鮮虞(せんぐ)や中山(ちゅうざん)国は狄のたてた国家といわれる。

[宇都木章]

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普及版 字通 「北狄」の読み・字形・画数・意味

【北狄】ほくてき

北方の異民族の総称。

字通「北」の項目を見る

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旺文社世界史事典 三訂版 「北狄」の解説

北狄
ほくてき

古来中国人が北方の異民族を呼んだ蔑称
春秋時代には,現在の山西・河北の北部にいた民族をさした。

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