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東歌 あずまうた

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

東歌
あずまうた

古代東国の歌。『万葉集』巻十四全体,および『古今和歌集』巻二十の一部に収められる。『万葉集』の東歌は,国名の明らかなもの 90首と不明のもの 140首から成り,前者は遠江 (とおとうみ) ,信濃以東陸奥 (みちのく) にいたる各国 (甲斐,安房を除く) の歌を収めるが,北限は現在の福島県にとどまる。歌はすべて短歌形式で,作者名を記さない。中は民謡,歌謡で,都からの旅人の歌,東国知識階級の歌なども含まれているが,これらも歌謡化の過程を経て採録されたと考えられる。文学上の特色は地方性,民謡性に求められ,粗野で大胆な表現,生活的な素材,豊富な方言使用などにより独自の世界をなしている。『古今集』の東歌 14首 (うち1首は東遊歌) は,陸奥の歌が半数をこえ,北限も宮城,山形県にいたり,ほかに相模,常陸,甲斐,伊勢の歌がある。すべて短歌形式で,作者名を記さないが,地方性,民謡性は希薄である。

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デジタル大辞泉の解説

あずま‐うた〔あづま‐〕【東歌】

上代、東国地方で作られた民謡風の短歌。万葉集巻14と古今集巻20の一部に収められる。

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百科事典マイペディアの解説

東歌【あずまうた】

東国歌謡。特に《万葉集》巻14所収の230首をいう。すべて短歌で,作者は不明。国名明記のものは90首。民衆の生活と感情が東国方言を交えて詠みあげられており,本来は古代東国に口誦されていた在地歌謡だったと考えられる。
→関連項目防人歌

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世界大百科事典 第2版の解説

あずまうた【東歌】

〈あずま〉とは古代日本の辺境としての東国をさし,そこで行われた地方歌謡をいう。東歌の名は《万葉集》巻十四にみえ,その巻全体が230首の東歌で占められている。また《古今集》巻二十も13首の東歌を収めるが,東国歌謡の特色を顕著に示すのは《万葉集》の方である。《万葉集》東歌の範囲は,遠江より東の駿河,伊豆,信濃,相模,武蔵,上総,下総,上野,下野,常陸,陸奥の12ヵ国に及び,なお国名不明の140首を数える。

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大辞林 第三版の解説

あずまうた【東歌】

万葉集(巻一四)や古今集(巻二〇)などに載っている、東国地方でよまれた和歌。万葉集のものは、東国方言を多く含む。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

東歌
あずまうた

東国地方の歌の意で、『万葉集』巻14と『古今集』巻20の、「東歌」という標題のもとに収められた和歌の総称。万葉集東歌、古今集東歌と、単独ででもいう。[遠藤 宏]

万葉集東歌

全部で230首(異伝歌のうち一首全体を記すものを加えると238首)あり、遠江(とおとうみ)国、信濃(しなの)国以東の駿河(するが)、伊豆、相模(さがみ)、武蔵(むさし)、上総(かずさ)、下総(しもうさ)、常陸(ひたち)、上野(こうずけ)、下野(しもつけ)、陸奥(むつ)、計12か国の90首と、国の不明な140首とに分けて並べられている。これらのなかには東国に下った都の貴族の作とおぼしき歌も少数混入しているが、多くは労働や儀礼などの場で歌われた民謡や酒宴の席で歌われた歌など、東国の人々に共有されていた歌謡と思われる。したがってすべて作者不明。またすべて整った短歌形式だが、もとは整わない形のものも多かったと考えられる。このような万葉集東歌のおもな特徴を以下にあげる。
(1)労働などの一場面や身近な動植物その他の自然を生きた目でとらえた、いわば生活に密着した素材が取り上げられていること
(2)一首の前半から後半への意外な転換
(3)その結果として生じる笑いの世界
(4)抑制の少ないあらわな感情の表出
(5)(恋の苦しさを歌ってさえ)健康的で明るいこと
(6)方言、俗語など自分たちのことばを使っていること
 このような特徴は多く民謡の特徴でもあるのだが、全体として、素朴で生き生きとした歌いぶり、土の匂(にお)いに地方の民衆の息吹が感じられ、国語資料としても貴重な方言とともに、『万葉集』のなかでも異色の歌群として注目される。
「多摩川にさらす手作(てづく)りさらさらに何(なに)そこの児(こ)のここだ愛(かな)しき」[遠藤 宏]

古今集東歌

伊勢(いせ)国以東の甲斐(かい)、相模、常陸、陸奥、計5か国の13首。宮中の大歌所(おおうたどころ)で管理され、神事その他の儀式の際に音楽とともに歌われたものと考えられる。万葉集東歌との間に類似の発想や語句を有し、元来は民謡あるいはそれに類する歌であったと思われる。万葉集東歌よりはよほど洗練された歌風だが『古今集』のなかでは異色の歌である。
「陸奥(みちのく)はいづくはあれど塩釜(しほがま)の浦こぐ舟の綱手悲しも」[遠藤 宏]
『田辺幸雄著『万葉集東歌』(1963・塙書房) ▽大久保正著『万葉集東歌論攷』(1982・塙書房)』

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世界大百科事典内の東歌の言及

【万葉集】より

…それぞれの歌数は,相聞がもっとも多く全体の半数近くを占め,雑歌,挽歌がこれについでいる。以上とは別に羈旅歌(きりよか)(旅中の作),譬喩歌(ひゆか),問答,東歌(あずまうた)(東国の歌)などの称もみられるが,いずれも歌数はやや少ない。歌の形態は5・7・5・7・7の5句からなる短歌(約4200首),5音・7音の句を基本としつつ句数が7句から百数十句に及ぶ長歌(265首)を中心としており,他に5・7・7・5・7・7の6句よりなる旋頭歌(せどうか)(61首)およびごく少数ながら,5・7・5・7・7・7の6句をもつ仏足石歌(ぶつそくせきか)がある。…

※「東歌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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