国立大学法人法に基づいて設置された、大学共同利用機関法人自然科学研究機構傘下の国立の研究所。英語名はNational Institute for Fusion Science、略称はNIFS(ニフス)。1989年(平成1)、前身の名古屋大学プラズマ研究所(1961年(昭和36)発足)を主体に、京都大学ヘリオトロン核融合研究センター(1976年発足)、広島大学核融合理論研究センター(1978年発足)の一部が統合され、愛知県名古屋市に設立された。1997年(平成9)岐阜県土岐(とき)市に移転。2004年(平成16)に法人化され、自然科学研究機構の構成機関となった。
軽い原子核と原子核が融合し、別の重い原子ができるとき、巨大なエネルギーが発生する。これは核融合とよばれる現象で、太陽エネルギーもこの核融合でつくられる。このミニ太陽を地上につくりだすことで、安全でしかも環境にも優しい次世代のエネルギーを確保しようと、核融合科学研究所は発足した。
核融合がもっとも起こりやすいのは、重水素(ジュウテリウム:記号D)と三重水素(トリチウム:記号T)で、将来の核融合炉は、この二つの原子核を燃料とするのが有望である。二つの反応はD-T反応とよばれ、炉の中では重水素、三重水素を1億℃以上の高温のプラズマ状態に閉じ込めて反応させる。プラズマとは、原子が電子とイオンに電離した状態で、とても反応しやすい。高温プラズマ状態でD-T反応を行うため、1997年に核融合科学研究所は、日本独自のアイデアに基づくヘリオトロン磁場を用いた世界最大の超伝導プラズマ閉じ込め実験装置「大型ヘリカル装置」(LHD:Large Helical Device)を完成させ、将来のヘリカル型核融合炉開発のため実証実験を繰り返している。ヘリカル装置は、ドーナツ型の装置でその中に螺旋(らせん)形の超伝導磁石(ヘリカルコイル)が使われている。世界の核融合炉研究は別のトカマク型装置が主流だが、ヘリカル型は製造がトカマク型よりむずかしいものの、連続運転可能など利点も多くトカマク型の次世代炉ともいわれる。
核融合科学研究所は、実験以外にもプラズマを閉じ込める物理機構の解明、試験炉の構築を目ざして、スーパーコンピュータなどを使ったプラズマのシミュレーション研究も行っている。超高温・高密度の核融合プラズマ閉じ込めとその制御は、物理学、電気工学、超伝導工学、材料工学、情報工学など、理論と実験にまたがる幅広い研究が必要となり、各分野の先端研究者が連携しながら取り組んでいる。
核融合炉の燃料となる重水素や三重水素は、水素の一種であり、水が存在する海水や地上には無尽蔵にあるとされている。また、核融合炉の炉心は超高温だが核分裂反応のように暴走の危険はなく、核分裂反応で生成されるような放射性物質が蓄積することも少ない。予算・技術・安全対策の面での課題はあるが、石油や石炭のような化石燃料で問題になっている二酸化炭素を発生しないので、地球の温度を上昇させる温室効果も抑制できるなど多くの長所が指摘されている。国際的には、日本・アメリカ・ヨーロッパなどが参加する国際熱核融合実験炉(ITER(イーター))計画がフランスを拠点に進められている。ただ、実現には30年以上の歳月が必要とされている。核融合科学研究所では中期計画の重点項目としてITER計画の研究支援を取り上げ、日本原子力研究開発機構(JAEA)、核融合エネルギーフォーラム、大学などとの連携協力を推進している。
[馬場錬成・玉村 治 2018年7月20日]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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