ロシアの作家チェーホフの4幕戯曲。1903年作。チェーホフの短編によく登場する領地競売の主題,つまり落ちぶれた地主貴族の抵当に入った土地が売りに出されるという話が,この戯曲の構想の源にある。昔の夢だけを追い求めている斜陽の女地主ラネーフスカヤは,同棲していた男と別れてパリから先祖代々の〈桜の園〉に戻って来るが,競売寸前の土地を救うには別荘地として切売りするしかないという元農奴の富裕な商人ロパーヒンのすすめを理解せず,〈桜の園〉は競売されてしまう。結局ロパーヒンが買い取り,ラネーフスカヤはまたパリへ戻る。滅びゆく貴族階級の哀感をたたえた作品として理解されることが多いが,抒情性と並んで喜劇性も豊かで,作者もこの作品を〈喜劇〉と命名している。一つの価値体系が崩壊し,言葉が意味を失った状況がみごとに描き出されている点から,いわゆるノンセンス劇の先駆的作品として最近注目されるようになった。1904年1月17日(チェーホフの最後の誕生日)にモスクワ芸術座で初演。日本では18年7月近代劇協会が帝劇で初演している。
執筆者:川端 香男里
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ロシアの劇作家チェーホフの四幕戯曲。1903年に書かれ、翌年モスクワ芸術座初演。斜陽貴族のラネーフスカヤ夫人は、パリで同棲(どうせい)していた男に愛想をつかし、先祖代々の領地である桜の園に戻ってくる。しかしいまや夫人は莫大(ばくだい)な借金を抱え、桜の園を手放さざるをえない。かつて農奴でいまや裕福な商人になったロパーヒンは、別荘地として売り出すように勧めるが、夫人も兄も時代の流れを理解できないため、なんの対策も考えようとしない。やがて競売が行われ、桜の園はロパーヒンが買い取る。夫人は悲しく領地に別れを告げ、ふたたびパリに戻って行く。だが夫人の末娘アーニャは、桜の園によって象徴される旧世界との決別をむしろ喜び、革命家ともとれる万年大学生トロフィーモフと手を取り合って、新しい世界へと飛び出して行く。日本では1915年(大正4)7月、近代劇協会が帝劇で初演している。
[原 卓也]
『『桜の園』(湯浅芳子訳・岩波文庫/中村白葉訳・新潮文庫/米川正夫訳・角川文庫)』
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