桜の園(読み)サクラノソノ(その他表記)Vishnyovyi sad

デジタル大辞泉 「桜の園」の意味・読み・例文・類語

さくらのその【桜の園】

原題、〈ロシアVishnovïy sadチェーホフ戯曲。4幕。1903年作、翌年初演。新興商人に桜の咲く荘園を売り渡す貴族ラネーフスカヤ家の没落を通して、新旧の社会勢力交替を叙情的に描く。

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精選版 日本国語大辞典 「桜の園」の意味・読み・例文・類語

さくらのその【桜の園】

  1. ( 原題[ロシア語] Višnjovyj Sad ) 戯曲。四幕。チェーホフ、一九〇三年作。翌年モスクワ芸術座で初演。零落したラネーフスカヤ家の競売されようとしている領地「桜の園」をめぐる新旧三世代の心の動きと、哀感を描く。日本では大正四年(一九一五)初演。

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改訂新版 世界大百科事典 「桜の園」の意味・わかりやすい解説

桜の園 (さくらのその)
Vishnyovyi sad

ロシアの作家チェーホフの4幕戯曲。1903年作。チェーホフの短編によく登場する領地競売の主題,つまり落ちぶれた地主貴族の抵当に入った土地が売りに出されるという話が,この戯曲の構想の源にある。昔の夢だけを追い求めている斜陽の女地主ラネーフスカヤは,同棲していた男と別れてパリから先祖代々の〈桜の園〉に戻って来るが,競売寸前の土地を救うには別荘地として切売りするしかないという元農奴の富裕な商人ロパーヒンのすすめを理解せず,〈桜の園〉は競売されてしまう。結局ロパーヒンが買い取り,ラネーフスカヤはまたパリへ戻る。滅びゆく貴族階級の哀感をたたえた作品として理解されることが多いが,抒情性と並んで喜劇性も豊かで,作者もこの作品を〈喜劇〉と命名している。一つの価値体系崩壊し,言葉が意味を失った状況がみごとに描き出されている点から,いわゆるノンセンス劇の先駆的作品として最近注目されるようになった。1904年1月17日(チェーホフの最後の誕生日)にモスクワ芸術座で初演。日本では18年7月近代劇協会が帝劇で初演している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「桜の園」の意味・わかりやすい解説

桜の園
さくらのその
Вишнёвый сад/Vishnyovïy sad

ロシアの劇作家チェーホフの四幕戯曲。1903年に書かれ、翌年モスクワ芸術座初演。斜陽貴族のラネーフスカヤ夫人は、パリで同棲(どうせい)していた男に愛想をつかし、先祖代々の領地である桜の園に戻ってくる。しかしいまや夫人は莫大(ばくだい)な借金を抱え、桜の園を手放さざるをえない。かつて農奴でいまや裕福な商人になったロパーヒンは、別荘地として売り出すように勧めるが、夫人も兄も時代の流れを理解できないため、なんの対策も考えようとしない。やがて競売が行われ、桜の園はロパーヒンが買い取る。夫人は悲しく領地に別れを告げ、ふたたびパリに戻って行く。だが夫人の末娘アーニャは、桜の園によって象徴される旧世界との決別をむしろ喜び、革命家ともとれる万年大学生トロフィーモフと手を取り合って、新しい世界へと飛び出して行く。日本では1915年(大正4)7月、近代劇協会が帝劇で初演している。

[原 卓也]

『『桜の園』(湯浅芳子訳・岩波文庫/中村白葉訳・新潮文庫/米川正夫訳・角川文庫)』

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百科事典マイペディア 「桜の園」の意味・わかりやすい解説

桜の園【さくらのその】

チェーホフの戯曲。《Vishnyovyi sad》。4幕。1904年モスクワ芸術座初演。美しい〈桜の園〉まで手放さねばならなくなった落ちぶれた地主のラネーフスカヤ夫人の運命に古きものの没落を描きながら,古い家や生活を捨てて新しい生活にとびこんでいく娘アーニャの生き方に作者の未来への確信を託した作品。一つの価値体系の崩壊を見事に描きつつ,喜劇性も豊かで,チェーホフはこの作品を〈喜劇〉と命名している。近代劇の代表的傑作の一つ。
→関連項目東山千栄子

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「桜の園」の意味・わかりやすい解説

桜の園
さくらのその
Vishnëvyi sad

ロシアの作家 A.チェーホフの戯曲。4幕。 1903年執筆,04年モスクワ芸術座初演。作者の四大戯曲の一つ。はなやかな昔の夢におぼれ,現実をみつめようとしない,崩壊する貴族階級の女地主ラネーフスカヤ夫人一家と,彼らの領地「桜の園」を買取る農奴上がりの新興成金ロパーヒンの姿に,交代する新旧2つの勢力を描き,古い家,生活を捨て,大学生トロフィーモフと手をたずさえ,新しい生活に飛込んでいく夫人の娘アーニャに未来を託している。日本では 15年初演。

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