不動産物権,無体財産権,債権,株式のような譲渡しうる財産権は,動産・不動産と同様,質権の目的となしうる(民法362条)。これを権利質という。質権はもともと有体物について発達してきたものであるが,経済・取引の発展とともに上記のような財産権が財貨としての価値を高めるに伴い,これらについても質権の設定が認められるようになった。質権はこの新たな分野においてきわめて重要な社会的作用を営むに至っている。以下,主要な財産権の質権につき解説する。
(1)〈債権質〉については当該項目を参照されたい。
(2)株式の上の質権 (a)無記名株式は無記名債権と同様,動産とみなされる(86条3項参照)結果,その質入れをめぐる法律関係も動産質に準ずるものと解される。(b)記名株式の質入れには商法上,略式質と登録質の2通りの方法が認められている。前者は株券を交付することによって成立し,質権者が継続して占有することが第三者に対する対抗要件とされるものである(商法207条)。また後者は,質権設定者の請求により会社が株主名簿に質権者の住所氏名を記載し,かつその氏名を株券に記載するだけで,質権者は会社に対し,利益もしくは利息の配当,残余財産の分配などを請求しうるとされるものである(209条)。いずれも取引慣行を重視する形で,1938年改正により商法に設けられた規定である。
(3)無体財産権の上の質権 特許権,実用新案権,意匠権,商標権の上の質権は,それぞれの権利につき設けられる帳簿への記載により成立しうるものとされ,また著作権,出版権は契約のみにより質権が成立しうるものと解されている。
→質権
執筆者:東海林 邦彦
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債権・株主権・無体財産権などの財産権を目的とする質権(しちけん)(民法362条~367条)。
[編集部]
…債権の担保として,債権者が債務者または第三者(物上保証人)から受け取った物を留置して債務弁済を間接的に強制するとともに,弁済されない場合にはその物から優先弁済を受けることのできる担保物権(民法342条)。質権はもともと動産について認められた権利(動産質)であるが,のちに不動産についても認められ(不動産質),さらに債権,株式,各種の無体財産権(権利質)などについても認められるようになったものである。日本の民法もこれら3種の質権につき規定するが,質権の本来の特色を最も典型的に示すのは動産質権で,それと比較すると他の二つの質権はかなり特殊な性格をもっている。…
※「権利質」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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