宅地,家屋の賃貸借契約にあたって,賃料,敷金のほかに賃借人から賃貸人に支払われる金銭をいう。礼金,みやげ金ともいわれる。ただし,権利金の授受は地代家賃統制令(1986年12月廃止・失効)の適用を受ける土地・家屋については禁じられていた。敷金とはちがって契約終了時に返還されない。権利金は,借地,借家の需給関係のアンバランスを背景にして生まれてきた。限られた供給に対して,需要が多い場合,賃貸人側は,貸す権利の設定そのものに対価を要求し,借りる側も,借りる権利の設定に多少対価を払っても借りたいということになる。権利金は,借家の場合には,家賃の何ヵ月分といった算出方法が一般的であり,そのためさほど多額にはならないが,借地の場合(借地権価格という)には,賃借目的地の価格の5割とか7割,場合によっては9割といった高額のことが多い。これは借地の場合,契約期間が最低でも30年とされ,契約更新が事実上保障されているため賃借権そのものに所有権なみの価格が生まれるのである。このような権利金が法律的にどのような意味をもつのかは,契約でも明確にされることは少ないため明らかではないが,通常次のような性格のものとされている。第1は,地代,家賃の前払的なものであり,第2次大戦中地代,家賃額が統制されたため,これをくぐる目的で前払いされたことから生じたといわれる。第2は,賃借目的物のもつ特殊な利用価値(地の利がよい,顧客が安定しているなど)に対して払われるもので,たとえば暖簾(のれん)代に近いものである。第3に,通常は賃貸人の承諾が必要とされる(民法612条)賃借権の譲渡,転貸を認める対価としての意味をもつものである。
権利金は,返還請求できるか否かが争われるが,これは権利金を上記のいずれと解するかに関連する。まず,期間が満了した場合には,権利金がいかなる性質のものであっても返還されない。期間の途中で,賃借物が滅失したりして賃借利用ができなくなった場合には,権利金が賃料前払的なものとすれば,残存期間に応じて返還されることになるが,そうでなければ返還されない。なお,権利金が交付されたが,結局契約が不成立の場合には,目的不到達で返還されるべきことは判例でも認められている。
執筆者:山田 卓生
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宅地や建物の賃貸借において、賃料、敷金のほかに授受される金銭。礼金、証拠金などとよばれることもある。その法律的形態には次の4通りがあるといわれる。すなわち、第一は、地代・家賃の一部の一括前払いとして授受される場合である。この形態は地代家賃統制令を潜脱するために生じたものであるが、一括して前払い金を受けうる便宜さから、統制外の契約においても授受されることが少なくない。ただし、統制令の適用を受ける借地・借家については、貸し主は、いかなる名義をもってするを問わず、借り主から権利金を受領することは禁ぜられている。ただ、統制違反であることを知って支払った場合には、返還請求できない。第二は、借地権・借家権に譲渡性を与えるため授受される場合である。すなわち、賃借権は、民法(612条)によると、貸し主の承諾なしには譲渡しえないのであり(ただし、貸し主が承諾しない場合には、一定条件のもとに裁判所が承諾にかわる許可の裁判をなしうる。借地法9条ノ2)、そのような承諾を得るために授受される場合である。これには、契約のときにあらかじめ貸し主に対して支払われる場合と、契約終了のとき他への譲渡を承諾してもらうため承諾料として支払われる場合とがある。第三は、借地権・借家権そのものの対価として譲受人から譲渡人に支払われる場合である。これは通常、譲渡人が貸し主に対して承諾料を支払っている場合などに授受されるであろう。第四は、営業権(のれん)の対価として授受される場合である。たとえば、店舗の賃貸借で、地の利がよいとか、安定した顧客がいる場合などに支払われる。なお、権利金などの名義で授受される金銭が、実際に前記のいずれの意味を有するかは、かならずしもはっきりしない場合があり、また、二つ以上の意味を有する場合もある。
[淡路剛久]
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