権利金(読み)ケンリキン

デジタル大辞泉 「権利金」の意味・読み・例文・類語

けんり‐きん【権利金】

借地契約借家契約の際に、慣行として、賃借人の側から地主家主に支払われる賃料敷金以外の金銭。契約が終了しても返還されない。

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精選版 日本国語大辞典 「権利金」の意味・読み・例文・類語

けんり‐きん【権利金】

  1. 〘 名詞 〙 土地や建物を賃貸借する場合に、その利用権取得の対価として、慣行的に借主貸主に支払う金銭。通常、賃貸借期間が終わっても借主に返還されず、謝金、礼金の名称で呼ばれることもある。また、一般に利用権取得の対価として支払われる金銭。
    1. [初出の実例]「借りる家の権利金」(出典:島(1938)〈川口一郎〉一)

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改訂新版 世界大百科事典 「権利金」の意味・わかりやすい解説

権利金 (けんりきん)

宅地家屋賃貸借契約にあたって,賃料,敷金ほかに賃借人から賃貸人に支払われる金銭をいう。礼金,みやげ金ともいわれる。ただし,権利金の授受地代家賃統制令(1986年12月廃止・失効)の適用を受ける土地・家屋については禁じられていた。敷金とはちがって契約終了時に返還されない。権利金は,借地,借家の需給関係のアンバランスを背景にして生まれてきた。限られた供給に対して,需要が多い場合,賃貸人側は,貸す権利の設定そのものに対価を要求し,借りる側も,借りる権利の設定に多少対価を払っても借りたいということになる。権利金は,借家の場合には,家賃の何ヵ月分といった算出方法が一般的であり,そのためさほど多額にはならないが,借地の場合(借地権価格という)には,賃借目的地の価格の5割とか7割,場合によっては9割といった高額のことが多い。これは借地の場合,契約期間が最低でも30年とされ,契約更新が事実上保障されているため賃借権そのものに所有権なみの価格が生まれるのである。このような権利金が法律的にどのような意味をもつのかは,契約でも明確にされることは少ないため明らかではないが,通常次のような性格のものとされている。第1は,地代,家賃の前払的なものであり,第2次大戦中地代,家賃額が統制されたため,これをくぐる目的で前払いされたことから生じたといわれる。第2は,賃借目的物のもつ特殊な利用価値(地の利がよい,顧客が安定しているなど)に対して払われるもので,たとえば暖簾(のれん)代に近いものである。第3に,通常は賃貸人の承諾が必要とされる(民法612条)賃借権の譲渡,転貸を認める対価としての意味をもつものである。

 権利金は,返還請求できるか否かが争われるが,これは権利金を上記のいずれと解するかに関連する。まず,期間が満了した場合には,権利金がいかなる性質のものであっても返還されない。期間の途中で,賃借物が滅失したりして賃借利用ができなくなった場合には,権利金が賃料前払的なものとすれば,残存期間に応じて返還されることになるが,そうでなければ返還されない。なお,権利金が交付されたが,結局契約が不成立の場合には,目的不到達で返還されるべきことは判例でも認められている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「権利金」の意味・わかりやすい解説

権利金
けんりきん

宅地や建物の賃貸借において、賃料、敷金のほかに授受される金銭。礼金、証拠金などとよばれることもある。その法律的形態には次の4通りがあるといわれる。すなわち、第一は、地代・家賃の一部の一括前払いとして授受される場合である。この形態は地代家賃統制令を潜脱するために生じたものであるが、一括して前払い金を受けうる便宜さから、統制外の契約においても授受されることが少なくない。ただし、統制令の適用を受ける借地・借家については、貸し主は、いかなる名義をもってするを問わず、借り主から権利金を受領することは禁ぜられている。ただ、統制違反であることを知って支払った場合には、返還請求できない。第二は、借地権・借家権に譲渡性を与えるため授受される場合である。すなわち、賃借権は、民法(612条)によると、貸し主の承諾なしには譲渡しえないのであり(ただし、貸し主が承諾しない場合には、一定条件のもとに裁判所が承諾にかわる許可の裁判をなしうる。借地法9条ノ2)、そのような承諾を得るために授受される場合である。これには、契約のときにあらかじめ貸し主に対して支払われる場合と、契約終了のとき他への譲渡を承諾してもらうため承諾料として支払われる場合とがある。第三は、借地権・借家権そのものの対価として譲受人から譲渡人に支払われる場合である。これは通常、譲渡人が貸し主に対して承諾料を支払っている場合などに授受されるであろう。第四は、営業権(のれん)の対価として授受される場合である。たとえば、店舗の賃貸借で、地の利がよいとか、安定した顧客がいる場合などに支払われる。なお、権利金などの名義で授受される金銭が、実際に前記のいずれの意味を有するかは、かならずしもはっきりしない場合があり、また、二つ以上の意味を有する場合もある。

[淡路剛久]

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百科事典マイペディア 「権利金」の意味・わかりやすい解説

権利金【けんりきん】

借家契約や借地契約の締結の際に授受される金銭。敷金と異なり,賃貸借終了の時に返還されないのが普通である。礼金などとも呼ばれる。地代・家賃の一括前払の性質をもつものも多い。そのほかにも,営業権(企業権)・老舗権の対価を意味したり,賃借権の譲渡を前もってする承諾の対価の意味をもつこともあり,意味は一様ではない。
→関連項目地代家賃統制令

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「権利金」の意味・わかりやすい解説

権利金
けんりきん

土地,家屋などの不動産の賃貸借契約の締結の際に借主から貸主に対して交付される金銭をいう。このような金銭としては,これ以外にも敷金といわれるものがあるが,権利金はこれとは異なり,契約終了の際借主に返還する必要がない。権利金がどのような意味で交付されるかは事情によって異なるが,最も一般的なのは,賃料の一部前払いであり,場合により,賃借権の譲渡性の承認代金であったり,あるいは営業譲渡に伴う営業上の一切の利益 (たとえば,老舗やその顧客関係など) の対価であったりする。

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