檀紙(読み)ダンシ

デジタル大辞泉 「檀紙」の意味・読み・例文・類語

だん‐し【×檀紙】

和紙の一。こうぞ原料とし、縮緬ちりめん状のしわがある上質の和紙。大きさによって大高・中高・小高に分けられ、文書表具包装などに用いられる。平安時代には陸奥から良質のものが産出されたので陸奥紙みちのくがみともいった。さらに古くは、まゆみを原料としたので、真弓まゆみ紙とも書かれた。

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精選版 日本国語大辞典 「檀紙」の意味・読み・例文・類語

だん‐し【檀紙・壇紙】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「たんじ」「だんじ」とも ) 和紙の一種。檀紙の名は正倉院文書にすでに見られ、真弓紙とも書かれた。平安末期にはこうぞを原料とした陸奥(みちのく)紙が作られ、中世以後も同じ原料で備中の厚手の上質の紙が作られた。江戸末期より縮緬皺(ちりめんじわ)がつけられた。用途は、幕末まで宮廷や幕府の御用紙として、今は儀式・包装用に使われる。
    1. [初出の実例]「以九月二日上二百張 壇紙」(出典:正倉院文書‐天平一九年(747)一二月二日・写経疏間紙充装潢帳)
    2. 「少納言入道信西を御使にて御歌を内大臣新大納言にたまはせけり。檀紙に書て桜の枝に付られたり」(出典:古今著聞集(1254)五)

檀紙の語誌

( 1 )古来、厚手で白くやわらかく、虫害にあわないのが特色で、産地によって讚岐檀紙・備中檀紙と呼ぶ。
( 2 )平安時代は、おもに懐紙として懐に入れ、漢詩和歌、消息などを書くのに用いられた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「檀紙」の意味・わかりやすい解説

檀紙
だんし

現代では一般に用いられないが、大正時代のころまではもっとも品位が高いとされていた儀礼用の和紙。『正倉院文書』にもこの紙名がみられるように、すでに奈良時代に存在し、平安から鎌倉時代にかけては上流社会で広く愛用され、当時の文学作品にもしばしば出てくる。しかしそれまでの檀紙は真弓の紙(まゆみのかみ)ともよばれ、またときには陸奥紙(みちのくがみ)と同じものをさしていたことが知られており、何を原料とした紙であるかについては研究者の間に異説が多い。おそらくコウゾ(楮)を主原料に、ときにはマユミ(真弓)も混用されたと考えられているが、確証はない。

 中世以降、檀紙の生産ではまず讃岐(さぬき)国(香川県)が名高く、やがて備中(びっちゅう)国(岡山県)産のものが現れて江戸時代末期まで宮中や幕府に上納したが、のちには越前(えちぜん)国(福井県)が広く一般の需要に応じた。中世以降の檀紙は明らかにコウゾを原料としており、厚手でしかも繭のような光沢をもつ点が奉書(ほうしょ)と相違する。1777年(安永6)刊の木村青竹(せいちく)編『新撰紙鑑(しんせんかみかがみ)』は、前記の産地のほかに阿波(あわ)国(徳島県)、丹後(たんご)国(京都府)などもあげており、さらに大鷹(おおたか)、中鷹、小鷹などの種類と、それぞれの寸法も示している。しかし、1877年(明治10)刊の尾崎富五郎編『諸国紙名録』では、その分類は大高、中高、小高となっている。寸法は時代や産地によって多少の相違があり、ほかに染色された五色檀紙もあるが、いずれの場合も中世以降の檀紙には表面に縮緬(ちりめん)様のしわがあるのが特徴である。このしわは、まず紙床(しと)に重ねた湿紙を数枚ずつ重ねて板に張り、水を打ってから手加減によって引きはがすことによりつくられる。宮城県白石(しろいし)市と福井県越前市に、この伝統的な技法が守り続けられている。

[町田誠之]

『前川新一著『檀紙の研究――歴史・種類・製法』(1978・紙の博物館)』『上島有編『室町時代の武家文書』(1987・吉川弘文館)』

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改訂新版 世界大百科事典 「檀紙」の意味・わかりやすい解説

檀紙 (だんし)

和紙の一種。和紙の創始期から現在に至るまで存在している,最も長い歴史をもつ紙名である。奈良時代の《正倉院文書》に檀紙の名称が出てくるが,それが平安時代に盛んにすかれた楮紙(こうぞがみ)の檀紙と同じ材質のものか,あるいはニシキギ科のマユミ(檀)を原料としたものかは不明である。平安時代には手紙はもとより,漢詩や和歌などを記す懐紙などにも用いられた高級な紙であった。男子は檀紙と記していたが,《源氏物語》などの女流文学にみられるように,女子は陸奥紙(みちのくがみ)とよんでいた。このため檀紙の産地を陸奥とみなす説がゆきわたっているが,一説には,これは修辞学的な表現にすぎず,実際は広く各地から産出したものという。その後,中世・近世と盛んにすきつづけられ,産地も広がった。とくに江戸時代に宮中や将軍家へ檀紙を納めていた備中(岡山県高梁市)の柳井家は名高い。元禄時代ころから,檀紙に皺(しぼ)を入れたものが現れ,しだいに檀紙には皺が入っているものという常識が一般化するようになった。柔軟さが微妙に違う湿紙(すき上げてから圧搾して,水分を取った紙)を数枚重ねてめくると,張力の違いから皺が生じるものである。このほか篦(へら)で押すなどして,各種の装飾的な皺文様をつくる。皺入り檀紙は現在,福井県越前市の旧今立町と愛媛県西条市の旧東予市で生産され,儀式や包装に用いられている。
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百科事典マイペディア 「檀紙」の意味・わかりやすい解説

檀紙【だんし】

和紙の創始期から現在まで存在する,最も長い歴史をもつ紙名。平安時代コウゾを原料とし,米粉を加えて作った手すき和紙。その後米粉に代え,白土を使用。紙質は白く,厚く,抄紙(しょうし)のとき紙面にしわを付けてある。用途は慶弔用,目録用,装飾的包み紙など。現在でも高級品はコウゾを原料とするが,普通品は化学パルプを使用。福井県産が有名。

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旺文社日本史事典 三訂版 「檀紙」の解説

檀紙
だんし

和紙の一つ。厚手白色で縮緬 (ちりめん) のようなしわがある
檀 (まゆみ) の樹皮でつくる。包紙や目録・免許状のような文書に用い,しわや紙形により大高 (おおたか) ・小高の別がある。平安時代,陸奥国の産で陸奥紙 (みちのくがみ) と呼ばれ,現在のような形質になったのは室町時代からである。公家・武家に用いられ,備中(岡山県)・越前(福井県)産が有名。

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