正作(読み)しょうさく

改訂新版 世界大百科事典 「正作」の意味・わかりやすい解説

正作 (しょうさく)

通説では,中世の荘園における領主の直営田である(つくだ)に対して,荘官・地頭らの手作り田を指すとされている。嘉禎4年(1238)10月19日の六波羅下知状に見える丹波国雀部荘の地頭大宅光信の例では〈地頭正作百姓を雇作する事,当庄一所の例に非ず,諸国傍例なり。召仕うの日,食物を下行(げぎよう)する事,もちろんなり〉とあって,正作は食料給付による労働(雇仕,雇作)によって経営される地頭手作り地のことと解される。しかし,当初から正作がこのような意味だったか否かは疑問で,12世紀初めの伊勢国大国荘では,専当の解(げ)に〈本家御正作田〉,また流失田畠注進状に〈御正作田一町苅頴稲伍百束,雖納御倉湿朽如藁〉とあることから,ここでは本所・領家などの領主の直営地のことだったと考えられる。また言葉の上でも,本来は正税正倉などの系譜に連なる,国衙に納める田租と関連した語ではなかったかと推測される。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「正作」の意味・わかりやすい解説

正作
しょうさく

中世,荘園・公領における領主,荘官,地頭などの直営田の一形態。 (つくだ) と正作の区別は明瞭ではないが,『庭訓往来』も「佃御正作」と併称しており,正作は広義の佃のうちに含まれる。上田に設定され,手作りを原則としたが,のちには農民請作,小作させるものが多い。用作ともいい,また「郷司正作」などの用例もある。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「正作」の解説

正作
しょうさく

荘園内の荘官や地頭の直営田。12世紀初めには荘園領主の直営地をさし,用作・佃(つくだ)ともよばれた。経営は多くが下人・所従など家内奴隷を使役して行われた。「庭訓(ていきん)往来」や1238年(嘉禎4)10月19日の六波羅下知状によると,小百姓に食料(じきりょう)を与えて使役する雇作も行われていた。

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