此奴(読み)コイツ

デジタル大辞泉 「此奴」の意味・読み・例文・類語

こ‐いつ【×奴】

[代]《「こやつ」の音変化》
三人称人代名詞話題になっている人を軽んじ、ののしったり親しみをこめたりしていう。「だって此奴が先にやったんだもん」
近称指示代名詞。「これ」のぞんざいな言い方。「此奴はひどい、食えやしない」
(感動詞的に用いて)憎しみの気持ちを込めて、相手に呼びかける語。「此奴、やりやがったな」
[類語]こやつこの方彼氏彼女其奴そやつそいつ彼奴かやつきゃつあいつやつやっこさんこの人その方その人あの方彼方あちらあの人

こ‐やつ【×奴】

[代]三人称の人代名詞。「こいつ」よりもやや古い言い方で、話し手近くの人をののしったり、ぞんざいにいったりする場合に用いる。
[類語]こいつこの方彼氏彼女其奴そやつそいつ彼奴かやつきゃつあいつやつやっこさんこの人その方その人あの方彼方あちらあの人

く‐やつ【×奴】

[代]《「こやつ」の音変化》二人称の人代名詞。人を卑しめていう。きゃつ。
年比としごろ―にあはむと思ふに」〈落窪・二〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「此奴」の意味・読み・例文・類語

こ‐やつ【此奴】

〘代名〙 =こいつ(此奴)
(イ) 人をさす場合。
寒川入道筆記(1613頃)愚痴文盲者口状之事「此やつめ、宿に居たひと申、いとまをこい候程に」
(ロ) 物をさす場合。
滑稽本浮世風呂(1809‐13)前「此前後に紐(ひぼども)付たは、此奴(コヤツ)ども天窓(てへん)さ打被る時、此紐(ひぼ)ども、腮(おとがい)のあたりへからみ付(つく)る事か」

こ‐いつ【此奴】

〘代名〙 (「こやつ」の変化した語) 他称。話し手側の人、事物などをさし示す(近称)。「これ」に対して話題の人物をののしったり遠慮なくいう場合、または乱暴な話し方で事物をさす場合に用いる。
(イ) 人をさす場合。〔日葡辞書(1603‐04)〕
浄瑠璃・用明天皇職人鑑(1705)三「イヤこいつただ者ならず」
(ロ) 物や事柄をさす場合。
洒落本・娼妃地理記(1777)「日本にては人をなじりてこいつは流行ませうといふ事有」
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前「こいつアおもしれへおもしれへ」

く‐やつ【此奴】

〘代名〙 (「こやつ(此奴)」の変化した語) 対称。人をいやしめて呼ぶ語。きゃつ。こいつ。
※宇津保(970‐999頃)藤原の君「おほかたは、女のなどかくは申す。くやつ、今また縛りかけよ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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