平安後期の儀式書。正月四方拝にはじまる宮廷の年中行事,神事・仏事・践祚などの臨時の公事,改元・陣定などの政務,また大饗その他臣下の儀にいたるまでを載せている。《本朝書籍目録》には〈江次第廿一巻 中納言匡房卿撰〉とあり,もと21巻であったが,現在は巻16,21を欠く19巻。撰者大江匡房(まさふさ)はこの時期の代表的文人で,和漢の学を兼ね,朝儀典礼にも精通していたから,後世本書は儀式に関する最良の参考書として高い評価を与えられ,しばしば講書も行われた。関白藤原師通の委嘱を受けて匡房が本書を撰述したと伝えられており,撰述年代は11世紀末から12世紀初頭のころと考えられる。書名は匡房の姓にもとづくが,彼の官名によって《江中納言次第》《江帥次第》などともいう。尊経閣文庫に室町時代の古写本が2種存在する。1653年(承応2)には版本が刊行されたが,これには誤謬が多い。《新訂増補故実叢書》所収。
→江次第抄
執筆者:吉岡 真之
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平安後期の儀式書。大江匡房(まさふさ)撰。本来は21巻あったが,巻16・21は散逸し,現存するのは19巻。最も形式が整備された儀式書といえる。「中外抄」「古事談」によると,匡房が関白藤原師通(もろみち)の依頼によってまとめたとされる。本文・割注は後人の改定がほとんどなく,匡房の撰んだ原文が残されている。内容は,朝廷における年中行事,臨時の仏事・神事,即位,政務のほか,摂関家などの行事も含む一方,朝賀の記述を欠くなど,院政期における儀式の変化を示している。後世,朝儀の手本とされ,注釈書に一条兼良(かねよし)の「江次第鈔」がある。古写本は比較的少ない。「新訂増補故実叢書」所収。
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大江匡房(まさふさ)著。21巻(ただし巻16、21の両巻は現存せず)。恒例・臨時の朝儀と関白四方拝などの私礼を解説した有職故実(ゆうそくこじつ)の書。『江帥次第』『江次第』『匡房抄』『江抄』などともいう。後二条関白師通(もろみち)の依頼による著作という。院政時代に入り、『北山抄(ほくざんしょう)』などが古礼となったための著作か。『西宮記』、『北山抄』とともに重んじられ、のちに一条兼良(いちじょうかねら)の『江次第抄』などの解説書を生んだ。活版本に『故実叢書(そうしょ)』所収本や古典全集所収本がある。
[今江廣道]
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…平安時代になって朝廷の儀式典礼が盛大に行われるようになると,それに関する正確な知識が要求され,有職故実の学が発達し,有職書が編纂される。源高明《西宮記》,藤原公任《北山抄》,大江匡房《江家次第》はその代表的なもので,このなかには文書の作成発布に関する儀礼や慣習なども述べられている。これらは,この時代新たに成立した令外様文書に関する解説書といえる。…
… 御神楽の起源は,天岩戸の前での天鈿女(あめのうずめ)命の舞であると伝えられるが,これに儀式としての作法が定まり,神楽譜が選定されるのは平安時代に入ってからである。現行御神楽の原形である〈内侍所(ないしどころ)の御神楽〉は,《江家次第》《公事根源》等によれば,一条天皇の時代(986‐1011)に始まり,最初は隔年,白河天皇の承保年間(1074‐77)からは毎年行われるようになったという。これより古くから宮中で行われていた鎮魂祭,大嘗祭(だいじようさい)の清暑堂神宴,賀茂臨時祭の還立(かえりだち)の御神楽,平安遷都以前から皇居の地にあった神を祭る園韓神祭(そのからかみさい)等の先行儀礼が融合・整理されて,採物(とりもの),韓神,前張(さいばり),朝倉,其駒(そのこま)という〈内侍所の御神楽〉の基本形式が定まり,以来人長(にんぢよう)作法,神楽歌の曲目の増減等,時代による変遷はあったものの,皇室祭儀の最も重要なものとして,よく古式を伝えて今日にいたっている。…
※「江家次第」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
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