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沈清伝 しんせいでん

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

沈清伝(しんせいでん)
しんせいでん / シムチョンジョン

朝鮮の古典小説。古くからの説話がパンソリ(『沈睛歌』)としてうたわれているうち、18世紀末ごろ小説化されたものであろう。孝女沈清は盲目の父の目を治そうと、寺に納める供養米の代価に身を売り、渡海商人のため、海神をなだめる人身御供(ひとみごくう)として海へ身を投じる。だが、その孝心を賞(め)でた玉皇上帝によって人間界に送り返され、皇后の位につく。沈清は父会いたさに全国の盲人を集めて宴を催すが、そこで娘の声に驚いた父の目があき、多年の念願がかなう。儒教の孝の倫理と、仏教の因果応報の理とをあわせ説く孝女譚(たん)で、似た話として観音寺(全羅南道)の縁起説話などが指摘されている。しかし、興味深いのは、物語の後半、娘を失った父鶴圭(かくけい)が淫女(いんじょ)ペンドクを妻にして、色香に迷う狂態を演じる場面が続くことである。主テーマとまったく異質なこうしたくだりに、李朝(りちょう)末期の欲望肯定的な庶民文化の浸透ぶりがうかがわれる。[田中 明]
『申在孝著、姜漢永・田中明訳注『沈睛歌』(『パンソリ』所収・平凡社・東洋文庫)』

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