水深200メートル以浅の沿岸域にすみ、ここで繁殖する魚。沿岸は地形や海水の流れが複雑であるうえ、河川から栄養分が運び込まれるので、餌(えさ)となるプランクトンや藻類、小形動物が繁殖して魚類の生育に恵まれている。したがって、海水魚の進化の中心は沿岸域にあり、現在、深海や外洋にいる魚の祖先も沿岸魚から分かれたものと考えられている。沿岸魚は種類が多く、その数は9100種を超え、現生の海水魚種の約70%を占めている。陸地にもっとも近い磯(いそ)や浜辺、内湾などにはボラ類、コノシロ、ヒイラギ類、キビナゴ、ベラ類、スズメダイ類、チョウチョウウオ類、ハタ類などが生息する。これらは磯魚といい、とくにサンゴ礁域にすむものをコーラルフィッシュcoral fishとよぶ。低い塩分に対する抵抗性が強く、色彩の豊かなものが多い。季節的に多少の移動をするが、その範囲は一般に大きくない。
岸辺より沖合いの底層には、アナゴ類、エソ類、タイ類、ニベ類、ヒラメ・カレイ類などの底魚が生息している。これらの魚類は大きな運動力はないが、産卵期や高温期には、かなり離れた浅所または高緯度域へ、また冬期には深所や低緯度域へ回遊する。一方、沿岸の表層で群れをつくり、産卵、越冬、索餌(さくじ)のため、定まった季節に一定のコースをたどって移動する魚類がある。これらを表層回遊魚といい、イワシ類、アジ類、サバ類、ブリ類などがその代表である。
日本の周辺海域は、暖流や寒流の本流または支流に接するため、沿岸魚の種類が海域によって著しく異なる。太平洋側の中・南部や九州西岸などは黒潮の影響を受けて900種以上の魚類が生息する海域があり、その半数は熱帯種で占められている。これに比べて日本海では400種余りで、そのうち寒帯種が100種ほど入り込んでいる。北海道の沿岸は、カレイ類、タラ類、ホッケ類、ソイ・メヌケ類、カジカ類など北方起源の種類が多い。なお、沿岸魚は水産資源として重要であり、世界的にみてその漁獲量は全漁獲量の80%余りに達している。沿岸魚の生息環境の悪化に伴い漁獲量が減少していることから、沿岸漁業の回復を目的として、魚礁、藻場(もば)の造成などの事業が日本各地で行われている。
[落合 明・尼岡邦夫 2015年3月19日]
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