狭義においては,裁判官が裁判において準拠しうる基準すなわち法の存在形式と解される。この意味での法源を論ずる実益は,実定法の究極的淵源をたどるのではなく,端的に法がどのような形式で存在するかを確定しそれによって裁判活動をコントロールし法的安定性と予測可能性を高めることにある。裁判官の裁判基準となりうる法としては,制定法,慣習法,判例法,自治的法規などがあげられる。これに対して,広義においては法源はこの意味のほかに,哲学的法源や歴史的法源の意味で用いられる。前者は法の妥当性の淵源とか根拠の意味であり,たとえば分析法学の始祖であるJ.オースティンは法源をこの意味で用いて,法の拘束力の淵源は主権者にあるとした。後者は法の歴史的由来のことであり,法を歴史的に研究するための史料,文書等を指して用いられる。
執筆者:桂木 隆夫
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法や法的決定の根拠となりうる規範をさす。究極的法源として、神意や民族精神があげられることもあるが、通常は裁判や行政的決定の根拠となりうる法形式をいう。
[長尾龍一]
… シャリーアは神の命令の具体的体系的表現として絶対不変であるが,他方ではそれは人間が解釈したものとして歴史的であり,それが古典的な形で成立するまでには2世紀を要した。法解釈の方法論として,コーランを補うものとしてスンナ,イジュマー,キヤース(類推)が法源(ウスール)として確立したが,これらのいずれを重視し,どの範囲まで用いるかによって具体的解釈に違いが生じ,多くの学派が生まれた。今日では,ハナフィー派,マーリク派,シャーフィイー派,ハンバル派の四法学派がいずれもスンナ派の公認学派として残っている。…
…文字で書きあらわされ文書の形をとるものが法の存在形式=法源となるものを成文法という。これに対して不文法は法源のうち成文法以外のものをいう。…
※「法源」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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