泳・游(読み)およぐ

精選版 日本国語大辞典 「泳・游」の意味・読み・例文・類語

およ・ぐ【泳・游】

〘自ガ五(四)〙 (古くは「およく」ともいったか)
① 人や動物が手足ひれなどを動かして、水中水面を進む。遊泳する。俳句では人の泳ぎについて季語として用いる。《季・夏》
源氏(1001‐14頃)手習「池にをよく魚、山になく鹿をだに」
② 泳ぎに似た行動、動作についていう。
(イ) 前のめりによろめいたり、不安定に揺れ動いたりする。
※相撲講話(1919)〈日本青年教育会〉常陸山、梅ケ谷時代の壮観「右を差さうとする所を、叩いたので、常陸は一寸泳(オヨ)いだが」
(ロ) 日本舞踊で、酔漢が物につまずいたり、立ち回りの場面で敵に打ち込んでかわされたりしたとき、踏みとどまる動作をいう。
(ハ) 登山者などの用語で、這松(はいまつ)地帯や密生した灌木地帯を行くとき、手足で枝を分けながら進むことをいう。漕ぐ。
※二百十日(1906)〈夏目漱石〉四「圭さんは坊主頭を振り立てながら、薄(すすき)の中を泳いでくる」
(ニ) 大勢で盛り場などをふらつき歩くさまや、人がたくさんいる所を押し分けて通って行く時の動作をいう。
星座(1922)〈有島武郎〉「一生懸命に西山さんの方へと人ごみの中を泳いだ」
(ホ) 物が空中や水中などに漂っているさまを形容していう。
※彼と彼の内臓(1927)〈江口渙〉「人間の内臓の夥(おびただ)しい量と種類が、ホルマリン溶液の中で〈略〉泳いでゐる」
③ 巧みに水中を遊泳するように、物事をうまく処理していくことを比喩的にいう。
(イ) 巧みに世渡りをする。ある社会に身を処して過ごしていく。
※雑俳・化粧紙(1826)「扨々むつかしい・およぎおよいだ年の暮」
(ロ) 相場の変動が激しく危険な中を巧みに売買して利益をあげる。
(ハ) 借財を背負った際、借替え、肩替りなどによって巧みにやりくりしていく。
④ 遊里で、遊蕩に深入りする。遊びに夢中になる。→おき(沖)を泳ぐ
浮世草子傾城禁短気(1711)五「遣手(やりて)の種(たね)めが陰口を引裂いてくれふぞと、力瘤を出して、自身陥(は)まって泳ぎ出すものなり」

およぎ【泳・游】

〘名〙 (動詞「およぐ(泳)」の連用形の名詞化)
① 泳ぐこと。泳ぎ方。水泳。《季・夏》 〔享和本新撰字鏡(898‐901頃)〕
※浄瑠璃・平家女護島(1719)二「八百里九百里が游(オヨギ)も水練(すいり)も叶はねば」
② 世渡りすること。特に要領よく世渡りをすること。
③ 語義未詳。能を舞う時、上半身に力がはいりすぎて、身体を泳ぐようにする癖をさすか。
※承応神事能評判(1653)加茂「一、ゆるぎ・およぎ・りきみ、此三つの身のくせは、大成る悪癖(わるくせ)なれば」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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