委付(読み)イフ(その他表記)abandonment

翻訳|abandonment

デジタル大辞泉 「委付」の意味・読み・例文・類語

い‐ふ〔ヰ‐〕【委付】

[名](スル)
ゆだね頼むこと。ゆだね渡すこと。「任務委付する」「権利委付する」
海商法上、船舶所有者などを保護するための制度船主などが負担する損害賠償などの債務について、海産の権利を債権者に移転して責任を免れる免責委付と、船舶が行方不明などのとき、被保険者が船舶のいっさいの権利を保険者に移転して保険金額全部を請求できる保険委付とがある。

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精選版 日本国語大辞典 「委付」の意味・読み・例文・類語

い‐ふヰ‥【委付】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ゆだね頼むこと。ゆだね渡すこと。委託
    1. [初出の実例]「太子亦、本国に還て国位を委付して、国を治る事、父の王の如し也」(出典:今昔物語集(1120頃か)五)
  3. 商法上、特定の物または権利を他人に移転することにより、一定の責任を免れたり、他の権利を取得したりする行為。免責委付と保険委付とがある。
    1. [初出の実例]「船舶の譲渡、委付若くは賃貸を為し」(出典:商法(明治三二年)(1899)五五三条)

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改訂新版 世界大百科事典 「委付」の意味・わかりやすい解説

委付 (いふ)
abandonment

海上保険の被保険者が保険の目的についてもいっさいの権利を保険者に移転し,保険金額の全部を請求する権利を取得することをいう。たとえば船舶が行方不明となったときなど,全損全損・分損)のおそれが多いとき,またはその証明がむずかしい場合に,被保険者は保険の目的である船舶あるいは積荷に関するいっさいの権利を保険者に移転して保険金額全額の請求権を取得することができる。これにより被保険者は保険金の支払を受け,保険の目的に投下した資本回収が容易となる。商法はこのほか,委付できる場合およびその手続を定めているが(833~841条),船舶保険貨物海上保険などの普通保険約款にも委付できる場合を例示している。委付は海上保険特有の制度であり,通常,保険委付と呼ばれている。なお,〈免責委付〉については〈船主〉の項目を参照されたい。
海上保険
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普及版 字通 「委付」の読み・字形・画数・意味

【委付】い(ゐ)ふ

まかせる。〔三国志、呉、諸恪伝〕丞相輔の效を忝(はづかし)めんことを懼(おそ)れ、先委付のを損せんことをる。

字通「委」の項目を見る

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百科事典マイペディア 「委付」の意味・わかりやすい解説

委付【いふ】

船主を保護するための海商法上の制度。海上保険において被保険者たる船主などが保険の目的物が全損しているか否か不明のとき,その目的物を保険会社に引き渡して保険金全部の支払を受けること(商法833条以下)。このような委付は海上保険特有の制度で,通常〈保険委付〉と呼ばれている。
→関連項目有限責任

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「委付」の意味・わかりやすい解説

委付
いふ

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保険基礎用語集 「委付」の解説

委付

海上保険特有の制度で、特定の保険事故が発生した場合に、被保険者が保険の目的に関する一切の権利を保険者に移転することによって、保険金額の全部を請求できる制度を指します。

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