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臨界状態 りんかいじょうたいcritical state

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

臨界状態
りんかいじょうたい
critical state

(1) 一般に物質や現象の性質が質的に変化する限界状態。たとえば,粗い面上に置かれた物体に働く力を次第に大きくしていって静止摩擦力が最大となった状態をいう。作用する力がこれ以上大きくなると物体は動きはじめて運動摩擦力が働くことになる。他に,光学的に密な媒質から粗な媒質との境界面に光を入射させ,入射角を徐々に大きくしていくとき,全反射が始る入射角最大の状態も臨界状態で,このときの入射角を臨界角という。また化学反応や核反応において,反応のポテンシャルエネルギーの鞍点で与えられる状態を臨界状態または遷移状態という。 (2) 単に臨界状態というときには,純粋物質の状態図において臨界点で与えられる状態をさすことが多い。この状態は液体が存在できる臨界の状態で,この状態の温度より高温では,気体を圧縮しても液体にはならない。 (→三重点 )

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百科事典マイペディアの解説

臨界状態【りんかいじょうたい】

(1)一定温度のもとで蒸気を圧縮するとき,圧力体積を縦・横軸にとってグラフをかくと,ある温度以下では,圧力が飽和蒸気圧に達すると液化が始まって全部が液化し終わる点まで,曲線は横軸に平行な直線になる。
→関連項目臨界圧力臨界温度臨界前核実験

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岩石学辞典の解説

臨界状態

蒸気を等温的に圧縮すると圧力が次第に増加し,飽和蒸気圧に達すると液化し始める.圧力─体積の変化を考えると,液化し始めてから液化が全部終わるまでは圧力は変化しない.さらに高温でこの過程を行い,圧力─体積曲線である温度に達すると液化の始まる点の体積と終わる点の体積が一致する.この点を臨界点(criticl point)とよび,その点に相当する物質の状態を臨界状態という.この時の圧力が臨界圧(critical pressure),温度が臨界温度(critical temperature)である.臨界点では一成分系で液相気相の区別がつかなくなる.H2Oの臨界点は375℃,20MPa(≒200気圧).

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世界大百科事典 第2版の解説

りんかいじょうたい【臨界状態 critical state】

一定量の気体を温度一定に保って圧縮すると,気体の体積は小さくなり,圧力が増す。圧縮を続けると,ある圧力のところで液化が始まる。しかし,ある温度より上では,どんなに圧縮しても気体は液化しない。圧力を加えることによって液化が起こる限界の温度を臨界温度critical temperature,臨界温度で液化の起こり始める圧力を臨界圧力critical pressureという。臨界温度,臨界圧力は,各気体に特有なものであり,気体の量にはよらない。

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大辞林 第三版の解説

りんかいじょうたい【臨界状態】

なんらかの状態の限界。
液体とその蒸気とが共存できる限界の状態。これは、その物質が液相・気相のどちらに属するともいえない状態で、液体として存在しうる限界を示す。
原子炉において、核分裂連鎖反応が一定の割合で継続している状態。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

臨界状態
りんかいじょうたい
critical state

(1)原子力用語 原子炉などで、核分裂の連鎖反応が一定の割合で継続する状態をいう。
(2)熱力学用語 温度、圧力、体積をいろいろ変えて状態図をつくり、気体の液化や液体の気化などの変化をみるとき、ある点からそれがおこらなくなる。この状態を臨界状態という。純粋物質の平衡状態は温度と圧力によって定まり、一般には図Aのように固体、液体、気体の各相の存在範囲が示される。各相の存在範囲の境界を示す曲線は、二つの相が平衡に共存できる温度と圧力の組合せを表している。たとえば圧力一定のもとに固体を加熱していくと、直線DEを横切る温度になったとき融解現象が始まって固体と液体が共存した状態になる。このとき融解させている熱の供給を止めると、固体と液体はそのまま共存し続ける。さらに熱を供給していくと液体の割合が増えていくが、全体が液体になるまでは温度は上がらずに一定のままとなっている。これは、固体と液体との間にはっきりした物理的境界が存在し、固体から液体へ転移するためには潜熱を必要とするためである。このような転移は物質の性質(たとえば密度)を不連続的に変化させるものであり、一次相転移(一次相変態ともいう)と名づけられている。昇華および蒸気(気化)の場合も同様であり、その境界はそれぞれ曲線CD、DPによって表される。しかし曲線DPはP点で終わっている。これは、P点以上の温度と圧力になると液体‐気体転移がもはや不連続でなく、気体と液体の共存状態もなくなり、沸点も潜熱もなくなってしまうためである。このような転移では温度や圧力を変えても物質の状態は連続的に、均一に、もとの状態から最終の状態へと変化し、気体と液体が共存することは不可能となる。このような転移を高次相転移とよぶことがあるが、転移というよりも一つの状態の性質変化とみなしたほうがよい。この場合、物質は臨界状態にあるといい、図AのP点を臨界点、これに対応する温度と圧力をそれぞれ臨界温度、臨界圧力とよぶ。固体‐液体転移にも臨界点があるかどうかについては確証が得られていない。しかし固体‐液体転移でははっきりした原子配列の変化がおこるので、高圧にしても不連続な転移がおこり、臨界点が存在する可能性は少ないと考えられる。液体‐気体転移における臨界点の存在はファン・デル・ワールスの状態方程式からも予測される。図Bはファン・デル・ワールス式の等温線を描いたものであるが、ある温度Tc以下では等温線に極小Aと極大Bが現れる。しかし、ABの部分は、体積が増加すると圧力も増加するという不安定な状態であって実現不可能である。実際の圧力と体積の関係は、面積XAYとYBZとが等しくなるように横軸に平行に引かれた直線XYZによって与えられる。たとえば等温線L―GにおいてはLXが液体、XZが液体と気体の共存、ZGが気体の状態に対応する。温度を上げると極小Aと極大Bがしだいに接近し、臨界温度Tcにおいて両者が一致する。すなわち、この温度以上では気体はいくら圧縮しても液体にならなくなる。Tcおよび点Cに対応する体積Vcおよび圧力Pcすなわち臨界体積、臨界圧力はファン・デル・ワールスの式により
  Tc=8a/27bR
  Pca/27b2
  Vc=3b
と与えられる。水の臨界点では
  Tc=374℃
  Pc=218気圧
  Vc=3.1cm3/g
である。[平野賢一・飯島嘉明]

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