清閑寺(読み)せいかんじ

精選版 日本国語大辞典 「清閑寺」の意味・読み・例文・類語

せいかん‐じ【清閑寺】

(「せいがんじ」とも) 京都市東山区清閑寺山ノ内町にある真言宗智山派の寺。山号は歌中山。延暦二一年(八〇二)紹継の創建と伝えられる。長徳二年(九九六一条天皇勅願寺となった。六条天皇陵高倉天皇陵、小督局の墓がある。歌の中山。

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デジタル大辞泉 「清閑寺」の意味・読み・例文・類語

せいかん‐じ【清閑寺】

京都市東山区にある真言宗智山派の寺。山号は歌中山。延暦21年(802)紹継の創建で、佐伯公行の中興という。初め天台宗だったが、慶長年間(1596~1615)に性盛が復興、真言宗に改めた。境内に六条高倉両天皇の陵がある。

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日本歴史地名大系 「清閑寺」の解説

清閑寺
せいかんじ

[現在地名]東山区清閑寺山ノ内町

渋谷しぶたに街道の北東清水音羽きよみずおとわ山中腹に西面して位置する。「菟芸泥赴」に「清水の滝の方より南へ六七町、山路をゆきて渋谷の道より一町ばかり北」と記す。もと天台宗で現在は真言宗智山派。かつては因幡いなば平等びようどう(現京都市下京区)が兼帯(花洛名勝図会)本尊千手観音(立像、三尺)

〈京都・山城寺院神社大事典〉

〔創建〕

伊呂波字類抄」に「伊予守正四位下佐伯朝臣公行、往年上奏、奉為鎮護国家、下所以利益衆生、王城東、清水南、結構一院、勤修法花三昧、号清閑寺、去長徳二年寄進於御願寺」と記され、「拾芥抄」も「佐伯公行建立」とする。右によれば一条天皇在位中(九八六―一〇一一)に佐伯公行が建立、長徳二年(九九六)に勅願所となっている。なお後代の記録「後法興院記」は桓武天皇の建立とし、「山州名跡志」も延暦二一年(八〇二)に紹継法師の草創で、佐伯公行の再興とするが根拠に乏しい。

〔清閑寺陵・後清閑寺陵〕

大治四年(一一二九)一〇月四日焼亡(百錬抄)、再建後の安元二年(一一七六)六条天皇を、治承五年(一一八一)高倉天皇を寺内に葬った。高倉院死去の様子は「明月記」同年正月一四日条に「未明巷説云、新院已崩御、依庭訓不快、日来不出仕、今聞此事、心肝如摧、文王已没、嗟乎悲矣、倩思之、世運之尽歟、(中略)今夜渡御邦綱卿清閑寺小堂、抑是六条院御墓所堂」と記される。

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改訂新版 世界大百科事典 「清閑寺」の意味・わかりやすい解説

清閑寺 (せいかんじ)

京都市東山区清閑寺山ノ内町にある真言宗智山派の寺。もと天台宗に属し,平安時代中期の10世紀末に,伊予守であった佐伯公行が建立した。996年(長徳2)勅願寺とされ,それから鎌倉時代にかけてが全盛期だった。盛時の寺域は東西5町,南北6町と伝え,法華三昧堂や宝塔などを擁し,1176年(安元2)六条天皇,81年(養和1)には高倉天皇が寺内に葬られた。だが,応仁の乱で荒廃し,近世初頭,慶長年間(1596-1615)に根来(ねごろ)寺の性盛が復興して,真言宗に転じた。現在の堂宇は本堂,観音堂,庫裏(くり)などわずかであるが,境内は清楚で雅趣に富み,江戸時代から東山の紅葉の名所として名高い。菅原道真が梅樹で造ったという本尊の千手観音像と,小鍛冶宗近の念持仏と伝えられる不動明王の霊験は,江戸時代から世に聞こえている。なお,当寺から清水寺に至る山道を俗に〈歌の中山〉といい,転じて〈歌の中山清閑寺〉と対で呼ばれることが多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「清閑寺」の意味・わかりやすい解説

清閑寺
せいかんじ

京都市東山区清閑寺山ノ内町にある真言(しんごん)宗智山(ちさん)派の寺。本尊は十一面千手観世音菩薩(せんじゅかんぜおんぼさつ)。「歌の中山(なかやま)」の名で知られている。802年(延暦21)紹継(じょうけい)が天台宗寺院として創建。のち荒廃したが、一条(いちじょう)天皇のとき佐伯公行が再建した。のち応仁(おうにん)の乱で焼失したが慶長(けいちょう)年間(1596~1615)に紀州(和歌山)根来(ねごろ)寺の性盛が復興・修営し、このとき真言宗に改宗した。歌の中山とは当寺から清水(きよみず)寺へ至る間の山路の称で、古来、花と紅葉の名所として歌に詠まれた地である。『都名所図会』によると、昔、真燕僧都(しんえんそうず)が夕暮れ門前を行く美女に心を動かされて清水へ行く道を尋ねると、女人は「見るにだに迷う心のはかなくて誠の道をいかで知るべき」とたしなめて姿が見えなくなったとあり、「歌の中山」の名の由来とされている。境内には六条(ろくじょう)天皇陵、高倉(たかくら)天皇陵、高倉天皇の寵姫(ちょうき)小督局(こごうのつぼね)の墓がある。

[祖父江章子]

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