細やか(読み)ササヤカ

デジタル大辞泉 「細やか」の意味・読み・例文・類語

ささ‐やか【細やか】

[形動][文][ナリ]
形や規模があまり大げさでなく、控えめなさま。「細やか商売をはじめる」「細やかに暮らす」
形ばかりで粗末なさま。わずかなさま。多く、謙遜して用いる。「細やかな送別会」「細やかな贈り物」
[派生]ささやかさ[名]
[類語]ほのか幾ばくせいぜいたかが微塵みじん些細ささいまばらほんのあるかなきか一縷いちる一抹いささか少しちょっと心ばかり印ばかり形ばかり少し少ない少少いささかいくらかいくぶんややちとちっとちょっぴりなけなし若干心持ち気持ち多少二三少数少量僅僅きんきんわずか数えるほどたったただたかだか低い手薄少なめ内輪軽少軽微微弱微微微少僅少きんしょう些少さしょう最少微量ちびちび一つまみ一握り一息紙一重すずめの涙鼻の差残り少ないちょこっとちょこんとちょっこりちょびちょびちょびっとちょぼちょぼちょろりちょんびりちょんぼりちらり爪のあか小口寸毫すんごうプチ(時間的に)少時寸時一時いちじ一時いっとき一時ひとときひとしきり暫時片時しばらくちょっくらちょいと

ほそ‐やか【細やか】

[形動ナリ]
ほっそりとしているさま。ほそらか。
「容体―になまめかしう」〈宇津保・楼上下〉
声が小さく弱々しいさま。
「声―にて面やせにたるといふうたを」〈かげろふ・中〉
[類語]ひょろっと長身長躯のっぽ背高八頭身ひょろ長い・立っ端がある・ほっそりひょろひょろひょろり細い痩せる細るせ細るける痩せこける痩せさらばえるやつれる憔悴しょうすいする肉が落ちる痩身痩躯細身やせやせっぽちやせぎすスマートスリムか細い細細ほそぼそ細め極細細作り華奢きゃしゃ細める着やせげっそりすらりすらっとスレンダーソップ形がりがりぎすぎす痩せ枯れる痩せ衰える

こま‐やか【細やか/濃やか】

[形動][文][ナリ]
一まとまりになっているものの一つ一つの要素が微小なさま。
㋐霧などの密度の濃いさま。
「夜は―な霧が市街を包む」〈宮本伸子
㋑色の濃いさま。
緑色―なシャンゼリゼの森の上に」〈横光旅愁
地肌が美しいさま。「きめの―な肌」
すみずみまで行き届いているさま。
㋐情が厚いさま。心がこもっているさま。「―な愛情」「―な心配り
㋑くわしいさま。緻密なさま。
「留守中の有体を―に話したのである」〈紅葉多情多恨
洗練された味わいがある。微妙な趣がある。
春雨の音に東都の春の―なるを忍ぶとき」〈倉田愛と認識との出発
細かくて雑多なさま。
「―なる御調度は、いとしも調ととのへ給はぬを」〈初音
配慮が細部にわたっていてすぐれているさま。精巧なさま。
「まだ―なるにはあらねども、住みつかば、さてもありぬべし」〈松風
[派生]こまやかさ[名]
[類語]暖かい濃い深い濃密濃厚細かい木目きめ細か細心綿密細緻さいち緻密繊細デリケートデリカシー神経質

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「細やか」の意味・読み・例文・類語

こま‐やか【細やか・濃やか】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙 ( 「やか」は接尾語 )
  2. こまごまとしているさま。
    1. (イ) 細かいさま。小さいさま。微小なさま。
      1. [初出の実例]「七の物を用るといふは、薪ときよき水と〈略〉こまやかなる灰と楊枝と帷(かたびら)となり」(出典:観智院本三宝絵(984)下)
      2. 「夕餐を済まして外へ出た。春雨が細やかに降ってゐた」(出典:泥人形(1911)〈正宗白鳥〉七)
    2. (ロ) 地肌や地質のきめが細かなさま。
      1. [初出の実例]「高麗縁(かうらいばし)の、筵青うこまやかに厚きが」(出典:枕草子(10C終)二七七)
      2. 「肌こまやかにやはらかなれば」(出典:人情本・春色恵の花(1836)初)
    3. (ハ) (髪などが)繊細で美しいさま。
      1. [初出の実例]「世尊の首の髪は香潔にして細(コマヤカニ)軟かに潤ひ沢ひて」(出典:彌勒上生経賛平安初期点(850頃))
  3. 思いやりや感情をこめたさま。
    1. (イ) 思いやりの気持や親愛の気持がすみずみまで行き届いているさま。ねんごろなさま。親密なさま。
      1. [初出の実例]「山ごえにものしたりければ、異腹(ことはら)にてこまやかになどしもあらぬ人の、ふりはへたるを、あやしがる」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
      2. 「かやうに心をつけ、こまやかに思ふとき、いかでか人のあしからんや」(出典:仮名草子・好色袖鑑(1682)上)
    2. (ロ) 感情をこめたさま。
      1. [初出の実例]「兵部卿の宮の、程なくいられがましきわびごとどもを、書き集め給へる御文を、御覧じつけて、こまやかに笑ひ給ふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)胡蝶)
  4. こまごまと詳しいさま。緻密なさま。綿密なさま。
    1. [初出の実例]「聖教のこまやかなる理(ことわり)、いと弁(わきま)へずもやと思ひしに」(出典:徒然草(1331頃)一四一)
    2. 「舅に見付けられた迄の留守中の有躰(ありてい)を精細(コマヤカ)に話した」(出典:多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉後)
  5. 細かな所までよく手が届いてすぐれているさま。精巧なさま。精細なさま。
    1. [初出の実例]「作り添へたる廊など、ゆゑあるさまに、水の流れも、をかしうしなしたり。まだこまやかなるにはあらねども、住みつかば、さてもありぬべし」(出典:源氏物語(1001‐14頃)松風)
  6. 繊細で上品なさま。洗練されているさま。
    1. [初出の実例]「贈り給へるものの、こまやかにことなるを、日くらして対(たい)の君に見す」(出典:夜の寝覚(1045‐68頃)二)
    2. 「節廻しの細(コマ)やかに味ひあるは」(出典:社会百面相(1902)〈内田魯庵天下太平なる哉)
  7. 色の濃いさま。
    1. [初出の実例]「鈍色(にびいろ)のこまやかなるが、うちなえたるどもを着て」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若紫)
  8. 濃密なさま。
    1. [初出の実例]「一室の嬌しい人香に蒸れた濃(コマヤ)かな空気は、窓々を流込む夜風と絶えず入変って」(出典:青春(1905‐06)〈小栗風葉〉夏)
  9. 草木や毛髪などが密生しているさま。〔書陵部本名義抄(1081頃)〕
  10. 土壌がよく肥えているさま。
    1. [初出の実例]「瞻部洲の縦広七千踰繕那の地を皆沃ひ壌(コマヤかに)あらしめむ」(出典:西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)八)

細やかの派生語

こまやか‐さ
  1. 〘 名詞 〙

ささ‐やか【細やか】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙 ( 近世は「さざやか」とも )
  2. 形がいかにも小さく好ましく見えるさま。小さくまとまってこぢんまりとしているさま。細かなさま。
    1. [初出の実例]「中納言殿は、いとささやかになれたる人のらうらうじきなり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲上)
    2. 「秋の草は〈略〉いづれもいと高からず、ささやかなる墻(かき)に、繁からぬ、よし」(出典:徒然草(1331頃)一三九)
  3. きめが細かいさま。繊細なさま。
    1. [初出の実例]「ゆるされありつる足も〈略〉いとあてはかに、かうばしう、手あたりもいといみじうささやかに」(出典:浜松中納言物語(11C中)二)
  4. おおげさでないさま。わずかなさま。形ばかりのさま。つつましいさま。
    1. [初出の実例]「短冊を取り寄せたり、互に歌をよみかはしたりするやうな、ささやかな席が開けた」(出典:夜明け前(1932‐35)〈島崎藤村〉第二部)
    2. 「息子にも、ささやかながら、味わわせたいとおもったのであらう」(出典:鳥獣戯話(1960‐62)〈花田清輝〉一)

ほそ‐やか【細やか】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙 ( 「やか」は接尾語 )
  2. 物のかたち、人の肢体などがいかにもほっそりしているさま。
    1. [初出の実例]「世尊の指の爪は狭(ホソヤカニ)長かに」(出典:彌勒上生経賛平安初期点(850頃))
  3. 量、勢いの小さいさま。声が小さく弱々しいさま。
    1. [初出の実例]「わかきをのこども、こゑほそやかにて、面やせにたる、といふうたをうたひ出たるをきくにも」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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