深い(読み)フカイ

デジタル大辞泉 「深い」の意味・読み・例文・類語

ふか・い【深い】

[形][文]ふか・し[ク]
表面から底まで、また入り口から奥までの距離が長い。「―・い川」「―・い茶碗」「椅子に―・く腰掛ける」「山―・く分け入る」「彫りの―・い顔」⇔浅い
物事の程度や分量、また、かかわりなどが多い。「―・い感銘を覚える」「あまり―・く考えないほうがいい」「もとから関心が―・かった」「欲が―・い」「―・い仲」⇔浅い
色合いが濃い。「空の青さはどこまでも―・い」「山の緑が日増しに―・くなる」⇔浅い
密度が濃い。また、密生している。「霧が―・い」「―・い草むら」
かなり時がたっている。また、盛りの時期にある。たけなわである。「夜が―・い」「秋も―・くなる」
多く「…ぶかい」の形で、名詞、またはそれに準じる語に付いて接尾語的に用いる。
㋐表面や外から底や奥までの距離がある意を表す。「奥―・い」「根―・い」
㋑程度のはなはだしいさまを表す。「情け―・い」「疑り―・い」
[下接語](ぶかい)意義深い疑い深いうたぐり深い遠慮深い奥深い感慨深い考え深い興味深い草深い毛深い深い嫉妬しっと深い慈悲深い執念深い思慮深い慎み深い罪深い泥深い情け深い根深い用心深い欲深い
[類語](1)(2奥深い奥が深い根深い深さ深め深み深遠深奥深層玄奥深部/(4稠密ちゅうみつ密集過密ぎゅうぎゅうぎしぎしぎちぎちきちきちぎっしりびっしりすし詰め目白押し濃いこまやか濃密濃厚濃度色濃い

ぶか・い【深い】

ふか(深)い6」に同じ。「奥―・い」「執念―・い」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「深い」の意味・読み・例文・類語

ふか・い【深】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]ふか・し 〘 形容詞ク活用 〙
  2. 空間的に表面・外面から底や奥までの距離が長い。
    1. (イ) 海、川、淵などの水面や、谷、竪穴などのへりや、箱形・筒形の物の上部から底までのへだたりが大きい。浅くない。
      1. [初出の実例]「大き海の水底布可久(フカク)思ひつつ裳引きならしし菅原の里」(出典万葉集(8C後)二〇・四四九一)
    2. (ロ) 家、山、野などの入口から内への奥行が遠い。奥まっている。
      1. [初出の実例]「ただ一所ふかき山へ入給ひぬ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    3. (ハ) ( 転じて ) 思想やことばに表わされる内容の窮極、詳細など、深遠微妙でいたりつくことが困難であるさまをいう。義が奥ふかい。
      1. [初出の実例]「是の談(ものかたりこと)、蓋(けた)し、幽深(フカキ)(むね)(あ)らし」(出典:日本書紀(720)神代上(兼方本訓))
  3. ( 心に深く感じる意で )
    1. (イ) 感情・思慮・思索・情欲などの程度が並み並みでない。
      1. [初出の実例]「山萵苣(やまぢさ)の白露おもみうらぶれて心に深(ふかく)吾が恋止まず」(出典:万葉集(8C後)一一・二四六九)
      2. 「とうとう京都にやってきたという実感を深うした」(出典:彼の歩んだ道(1965)〈末川博〉四)
    2. (ロ) 情趣、情緒、風流心や美意識の到達度が十分であるさまをいう。情趣豊かである。
      1. [初出の実例]「ことのはの深きなさけは軒端もる月の桂の色に見えにき」(出典:東関紀行(1242頃)赤坂より橋本)
  4. 物事と関係し合う程度が並み並みでない。かかわり合い方が強い。
    1. (イ) 縁、恩、交際などの人間関係が並み以上であるさまをいう。親しくなじみ合っている。
      1. [初出の実例]「ふかきちぎりある人は、よしある折を過さぬぞよき」(出典:宇津保物語(970‐999頃)祭の使)
    2. (ロ) 罪や過失や障害、危難の度合などが大きい。きびしい。
      1. [初出の実例]「それだに人の上にては罪ふかうゆゆしきを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)葵)
    3. (ハ) 学問、知識、経験、技巧などが十分である。習熟している。練達している。
      1. [初出の実例]「爾に御調の大使、名は金波鎮漢紀武と云ふ、此の人深(ふか)く薬方を知れり」(出典:古事記(712)下)
    4. (ニ) 一般に、行為動作の程度がはなはだしいさまをいう。
      1. [初出の実例]「三蔵の玄文五明の至理頗る亦沈(フカク)(〈別訓〉さとれり)研(はげ)むで其の趣を得」(出典:大唐西域記長寛元年点(1163)三)
    5. (ホ) 物事のかかわり合い方が強い。
      1. [初出の実例]「『兵隊の位』としてなじみの深い大将以下二等兵に至る名称は」(出典:憲法講話(1967)〈宮沢俊義〉一〇)
  5. 色、香や自然物の広がりが濃密であるさまをいう。
    1. (イ) 色が濃い。濃密な色合である。
      1. [初出の実例]「色夫可久(ブカク)背なが衣は染めましを御坂たばらばま清(さや)かに見む」(出典:万葉集(8C後)二〇・四四二四)
    2. (ロ) かおりがたかい。匂いが強くしみるさまをいう。
      1. [初出の実例]「例の壺どもに唐のたき物心ことにかほりふかくたてまつり給へり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)行幸)
    3. (ハ) 霞、霧、もやなどが濃い。
      1. [初出の実例]「霧のふかければさやかに見ゆべくもあらず」(出典:源氏物語(1001‐14頃)橋姫)
    4. (ニ) 草や木や毛が密生している。
      1. [初出の実例]「かくふかきよもぎの住処を」(出典:宇津保物語(970‐999頃)吹上上)
  6. 事の始まりから時がかなりたっているさまをいう。
    1. (イ) 年が大分たっているさまをいう。年寄っている。老齢だ。
      1. [初出の実例]「磯の上のつままを見れば根を延へて年深有之(ふかからし)神さびにけり」(出典:万葉集(8C後)一九・四一五九)
    2. (ロ) その季節になってからかなり時がたっているさまをいう。いまやたけなわである。
      1. [初出の実例]「春深き色にもある哉住の江の底も緑に見ゆる浜松〈よみ人しらず〉」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)春下・一一一)
    3. (ハ) 夜になってからかなり時がたっているさまをいう。また、夜が明けるにはまだかなり間があるさまをいう。
      1. [初出の実例]「夏のはじめ、ふかき夜のほととぎすの声」(出典:宇津保物語(970‐999頃)楼上上)
  7. (出演の順番が)おそい。寄席芸人の間でいう。「出番がふかい」
    1. [初出の実例]「踊の筋も悪くないのと、その親許(おやもと)が金持なのとで、師匠はこんな小さい子供の番組を最初に置かずに、わざわざ深かいところへ廻した」(出典:半七捕物帳(1923)〈岡本綺堂〉少年少女の死)

深いの派生語

ふか‐が・る
  1. 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙

深いの派生語

ふか‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

深いの派生語

ふか‐さ
  1. 〘 名詞 〙

深いの派生語

ふか‐み
  1. 〘 名詞 〙

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