教育家、宗教家。柏崎(かしわざき)県刈羽(かりわ)郡(現、新潟県柏崎市)に渡辺長松の長男として誕生。1877年(明治10)に牧口家の養子となる。1893年北海道尋常師範学校を卒業。以後40年間初等教育に携わり、上京後も白金小学校などの校長を務めた。創造性開発の教育を標榜(ひょうぼう)し、環境と人との相互交渉の理解がその基礎であると自ら『人生地理学』(1903)、『郷土科研究』(1912)、その他を著す。後年、経験科学としての教育学の樹立を目ざし『創価教育学体系』(1930~1934)4巻を発刊。万人共通の社会的利の実現が最高善であり個人の幸福、と説く価値論を展開し、それを実現する人格の形成を日蓮(にちれん)の法華(ほけ)経信仰にみいだし、1928年(昭和3)日蓮正宗(しょうしゅう)に入信する。1930年弟子の戸田城聖(とだじょうせい)と「創価教育学会」(創価学会の前身、正式な発会式は1937年)を設立し、教育・宗教革命を目ざしたが、1943年国家神道(しんとう)否定と治安維持法違反の理由で検挙され、巣鴨(すがも)拘置所で獄死した。
[中野 毅 2018年6月19日]
『『牧口常三郎全集』全10巻(1981~1996・第三文明社)』▽『美坂房洋編『牧口常三郎』(1972・聖教新聞社)』▽『斎藤正二著『若き牧口常三郎 上』(1981・第三文明社)』
宗教家,教育家。創価学会初代会長。新潟県刈羽郡荒浜村に生まれた。幼名長七。旧姓渡辺,3歳のときに養家の牧口姓となった。小学校卒業後に小樽で警察署給仕となり,苦学して北海道尋常師範を卒業。1901年に上京,志賀重昂の門をたたき,その紹介で《人生地理学》(1901)を刊行。近代地理学の精神を摂取し,教育学を基礎とした独自の見解で,半年で4版を重ねた。また,柳田国男の〈郷土会〉に参加,その影響で書き上げた《教授の統合中心としての郷土科研究》(1912)も名著の一つといわれる。小学校長を歴任したが,28年日蓮正宗に入信,その独自な価値観にもとづく創価教育学説の啓蒙・実践を正宗の布教として展開するため,30年に創価教育学会(創価学会の前身)を戸田城聖の協力で設立,《創価教育学体系》を刊行した。37年創価教育学会発会式を行い,機関紙《価値創造》を発行。各地で折伏(しやくぶく)座談会を開催した。他宗,なかでも神社神道批判のために42年5月機関紙は廃刊,43年不敬罪・治安維持法違反で投獄され,巣鴨拘置所で獄死した。
執筆者:大濱 徹也+辻田 右左男
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明治〜昭和期の宗教家,教育思想家,地理学者 創価学会創設者。
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1871.6.6~1944.11.18
昭和前期の宗教家・教育家。創価学会の創立者の1人で初代会長。旧姓渡辺。新潟県出身。北海道に移住。1901年(明治34)上京して「人生地理学」を出版するが,学者の道をあきらめ小学校の訓導となる。日蓮宗に入信,30年(昭和5)弟子の戸田城聖(じょうせい)と初等教育の実践研究団体として創価教育学会を創立。43年の同学会弾圧で検挙され,巣鴨拘置所で病死。
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…当時,日本では一般には関心の浅かったヨーロッパ民俗学に注目した柳田は,日本における常民文化の実態とその意義を解明し,独自の民俗学を大成したし,マイツェンの古集落や農地の形態分析に示唆を得た新渡戸は,〈地方(じかた)学〉としての農学の樹立を企てた。またペスタロッチなどの影響をうけた地理学の牧口常三郎は郷土の学習をもとに小学教育の組織化をはかり,《教授の中心としての郷土科研究》(1912)を出版し,理想的な教育論を主唱した。郷土会に参加した学者の中には,そのほかにも小野武夫,尾佐竹猛,小田内通敏,今和次郎,那須皓など,それぞれの専門領域において郷土研究の成果を生かした学者も少なくない。…
…東京都新宿区信濃町に本部をおく日蓮正宗の在家信者によって構成される宗教団体。1930年11月に牧口常三郎が戸田城聖とともに創立した創価教育学会を母体に,46年戸田が創価学会として再建した。1937年に発会式をあげて布教活動を本格化した創価教育学会は,法華経を唯一として他宗を排撃,大麻(神宮神礼)奉斎を拒否したため43年弾圧され,戸田,牧口らは投獄された。…
※「牧口常三郎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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