狂言綺語【きょうげんきご】
〈きょうげんきぎょ〉ともよむ。誤ったたわ言,むやみに飾り立てた言葉のことだが,和歌や物語などを卑しめていうのに用いる表現。狂言綺語をもてあそぶことは,妄語戒を破り,仏の教えに背くこととされていたが,一方《白氏文集》に〈狂言綺語の過ちを転じて……讃仏の因となさん〉(香山寺白氏洛中集記)とあったことから,平安時代以降,和歌や物語が逆に仏教の修行に繋がり,これを助けるとする考えが成立した。後白河天皇や藤原俊成などにこの考え方が顕著で,安居院流などの唱導などもこの立場に立っている。
→関連項目源氏供養|紫式部|和歌陀羅尼
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きょうげん‐きご キャウゲン‥【狂言綺語】
〘名〙
道理に合わない言葉と巧みに飾った言葉。とくに仏教や
儒教の立場から、いつわり飾った小説、物語の類をいやしめていう。また、転じて、すさび事、戯れ事、
管弦などの遊びにもいう。きょうげんきぎょ。
※談義本・根無草(1763‐69)後「狂言綺語
(ケウゲンキゴ)も法の声と。空海師の
蒼海よりひろき真言秘密のをしへ」 〔
白居易‐香山寺白氏洛中集記〕
[語誌]「綺語」の
字音については、中世ごろまでは
漢音の「キギョ」が普通のようであるが、江戸時代の後半からは
呉音で「キゴ」と読まれる例も多くなる。
きょうげん‐きぎょ キャウゲン‥【狂言綺語】
※米沢本
沙石集(1283)五本「恵心の僧都は
修学の外他事なく、道心者にて、狂言

語
(キャウケンキキョ)の
徒(ともがら)事をにくまれけり」
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狂言綺語
道理に合わない言葉と巧みに表面だけを飾った言葉。
[使用例] 幾歳になっても浦里や三千歳の浄瑠璃をば単に作者の綴った狂言綺語だといい捨ててしまう気にはなれない[永井荷風*腕くらべ|1916~17]
[解説] 特に仏教や儒教の立場から、小説、物語の類をいつわり飾った文章としていやしめていいました。
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きょうげん‐きご〔キヤウゲン‐〕【狂言×綺語】
道理に合わない言葉と巧みに飾った言葉。仏教・儒教などの立場から、小説・物語の類をいう。きょうげんきぎょ。
きょうげん‐きぎょ〔キヤウゲン‐〕【狂言×綺▽語】
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きょうげんきご【狂言綺語】
〈綺語〉は〈きぎょ〉とも読む。道理にそむいた言葉と飾り立てた言葉の意味だが,詩歌,物語,管弦,音曲などをいうのに用いる。《法華経》安楽行品に〈世俗の文筆,讃詠(うた)の外書〉をつくる者と交際するなといわれているように,狂言綺語をもてあそぶことは,妄語戒を破り,仏の教えに背く行為と考えられた。しかし,一方では《涅槃経》に〈麁言(あらあらしい言葉)及び軟語(柔和な言葉),皆第一義に帰す〉ともあって,狂言綺語も真実を示す方便とも考えられた。
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世界大百科事典内の狂言綺語の言及
【藤原俊成】より
… この間,1178年(治承2)家集《長秋詠藻》を自撰して守覚法親王に献呈,97年(建久8)には歌論書《古来風体抄(こらいふうていしよう)》を献進(1201年改訂),晩年の和歌観を吐露した。俊成はここで天台止観によそえて和歌の変遷を内観し(最初の和歌史観),浮言綺語(ふげんきぎよ)の和歌が仏法悟得の機縁たりうるという新価値観(狂言綺語観)を提示し,さらに《古今集》を歌の本体と仰ぐ伝統観(古典の定立)を述べる。俊成の新風は広義の幽玄体といわれ,幻想的な詩趣と優美な声調の調和の中に,陰翳(いんえい)のふかい耽美的情念を流露させ,抒情の世界に余情の新領域をひらいた。…
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