猥褻罪(読み)ワイセツザイ

デジタル大辞泉 「猥褻罪」の意味・読み・例文・類語

わいせつ‐ざい【××褻罪】

猥褻行為をする罪の総称公然猥褻罪猥褻物頒布等罪強制猥褻罪など。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「猥褻罪」の意味・読み・例文・類語

わいせつ‐ざい【猥褻罪】

  1. 〘 名詞 〙 公然と猥褻の行為をする罪、猥褻な文書図画などを頒布販売し、または公然とこれを陳列する罪、販売の目的でこれを所持する罪、強制猥褻罪などの総称。〔新しき用語の泉(1921)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「猥褻罪」の意味・わかりやすい解説

わいせつ罪 (わいせつざい)

猥褻(わいせつ)〉に関わる犯罪の総称で,犯罪学上性犯罪といわれる一群の犯罪にほぼ相当する。それは,以下のように大別できる(なお,1995年刑法の表記現代化にともない,従来の〈猥褻罪〉を〈わいせつ罪〉と改めた)。(1)公然わいせつ罪 公然とわいせつな行為を行う罪で,刑は6ヵ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料(刑法174条)。(2)わいせつ物頒布罪等 わいせつな文書,図画その他の物を頒布,販売,公然陳列または販売目的で所持する罪で,刑は2年以下の懲役または250万円以下の罰金もしくは科料(175条)。(3)強制わいせつ罪および強姦罪 前者は強制してわいせつな行為を行う罪であり(176条。くわしくは〈強制わいせつ罪〉の項参照),後者は強制的に姦淫する罪である(177条。くわしくは〈強姦〉の項参照)。両者とも親告罪である。(4)そのほか,各種の法律(風俗営業法,売春防止法,軽犯罪法など)や条例(青少年保護条例,屋外広告物条例,めいわく防止条例など)でも罰則が設けられている。

 強制わいせつと強姦の罪は個人の性的自由と尊厳を保護することを目的とし,間接に社会の性的秩序の保護を図っているのに対して,公然わいせつとわいせつ物頒布等の罪は,社会の性的道徳秩序の維持を直接の目的とするから,ときには,関係者の意思に反した規制を強いることとなり,逆に,これらの罪が犯された場合には関係者は自分の意思でこれに加わっており,被害感情を持った個人がとくにいないという意味で,被害者なき犯罪とも呼ばれる。

 社会の性的な道義観念を維持する法律には,単なる刑罰威嚇だけでなく,検閲や,各種の禁止などの行政処分を定めたものも少なくない。とくに戦前の日本では,わいせつ物等に対する取締りは行政警察権限の行使が主であって,刑事罰はそれの背景となっていた。第2次大戦後には,検閲が禁止され,警察組織が分解され,行政警察から司法警察への転換が計画されたので,刑事罰が前面に出ている。また,戦前の各種の個別的な刑罰法規も数多く廃止されたので,刑法が適用される事例が多い。最高裁判所は《チャタレー夫人の恋人》事件判決中で,特別法である旧出版法,新聞紙法が廃止されたので,その部分は一般法である刑法175条を適用すると述べて,適用領域の拡大を支持した。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「猥褻罪」の意味・わかりやすい解説

猥褻罪【わいせつざい】

猥褻とは,いたずらに性欲を興奮・刺激させ,正常な性的羞恥(しゅうち)心を害し,善良の性的道義観念に反するものとされ(判例),猥褻罪には3種の態様がある(刑法174条以下)。(1)公然と猥褻の行為をした者は6月以下の懲役または30万円以下の罰金等(公然猥褻罪)。(2)猥褻の文書,図画(とが)その他の物を頒布・販売・公然陳列し,または販売の目的でこれを所持する者は,2年以下の懲役または250万円以下の罰金等(猥褻文書等頒布罪)。映画の映写も陳列に当たるとされる。(3)強制猥褻罪および準強制猥褻罪。
→関連項目親告罪

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「猥褻罪」の意味・わかりやすい解説

猥褻罪
わいせつざい

公然猥褻罪,猥褻文書等頒布罪,強制猥褻罪,強姦罪など (刑法 174~182) を総称して呼ぶこともあるが,狭義には前2者をさす。猥褻とは,いたずらに性欲を興奮または刺激させ,かつ普通の人の正常な性的羞恥心を害し,善良な性的道義観念に反する行為または物の属性をいうとするのが判例である。公然猥褻罪とは公然と猥褻な態度をとることによって成立する罪であり,猥褻文書等頒布罪は,猥褻の文書,図画その他の物を頒布,販売し,公然と陳列することによって成立する。本罪の適用については,学術・芸術作品,特に文芸作品について芸術性との関係をめぐって問題となることが多く,有名な裁判として,1957年判決が出されたチャタレー事件,69年の悪徳の栄え事件,80年の四畳半襖の下張り事件などがある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android