奈良時代、神仏への奉納物に添えた内容目録・趣意書。756年(天平勝宝8歳)5月2日の聖武(しょうむ)太上天皇の没後、光明(こうみょう)皇太后・孝謙(こうけん)天皇がその遺品の珍宝等を、東大寺および他の一七大寺に献納したときのものが著名である。(1)天平勝宝(てんぴょうしょうほう)八歳六月二十一日国家珍宝帳、(2)同日種々薬帳、(3)天平勝宝八歳七月二十六日屏風花氈(びょうぶかせん)等帳、(4)天平宝字(ほうじ)二年(758)六月一日大小王真蹟(しんせき)帳、(5)天平宝字二年十月一日藤原公(不比等(ふひと))真蹟屏風帳、(6)天平勝宝八歳七月八日法隆寺献物帳の6通が現存する。(1)~(5)は正倉院伝来。(6)は法隆寺伝来で東京国立博物館所蔵。献物帳所載の宝物等には、草壁(くさかべ)皇子佩用(はいよう)の黒作懸佩刀(くろづくりかけはきのたち)、天武(てんむ)天皇以来伝世の赤漆文欟木厨子(せきしつぶんかんぼくのずし)(現存)などもあり、またそのほかにも正倉院に現存しているものが多数ある。
[石上英一]
『正倉院事務所編『正倉院の書蹟』(1964・日本経済新聞社)』▽『後藤四郎編「正倉院の歴史」(『日本の美術』第140号所収・1978・至文堂)』▽『関根真隆「献物帳」(『日本古文書学講座2』所収・1978・雄山閣出版)』
神仏に物などを供えて祈願し,あるいは所願成就してお礼の奉納を行うとき,その品目を列挙し,願文を添えて奉る文書。一般には寄進状,施入状,あるいは奉納状などと呼んでいるが,奈良時代にはとくに献物帳と呼ばれる一連の文書がある。756年(天平勝宝8)聖武太上天皇没後,遺愛の品などが光明皇太后や孝謙天皇によって東大寺やその他の諸寺に献納されたときに添えられた献納目録がそれであり,現在《東大寺献物帳》5巻と《法隆寺献物帳》1巻(この1巻は現在は桐の板に貼ってあるが,もとは軸装)の原本が伝えられており,前者は正倉院に,後者は法隆寺献納宝物の一つとして東京国立博物館に所蔵されている。これらの献物帳の目録のはじめには〈献盧舎那仏〉〈奉盧舎那仏〉〈献東大寺〉〈献法隆寺〉等の文字が記されており,また文字の書かれた部分の全面に〈天皇御璽〉の内印が捺されている。
→東大寺献物帳
執筆者:後藤 四郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新