出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
福岡県うきは市吉井町富永(よしいまちとみなが)にある装飾古墳。石室は奥壁と右壁基部の一部を除き破壊されているが、もと長さ4メートル、幅2メートルほどの横穴式石室であったとみられる。奥壁は高さ約1メートル、幅約2メートルの花崗(かこう)岩の一枚石で、表の全面に雄大な彩色画が描かれている。中央に大きく三基の靭(ゆき)と蕨手文(わらびてもん)を配して構図の主構成とし、その左右には繊細な図像が描かれている。左側は中心を赤く彩った太陽を表す同心円文であり、その下に舳先(へさき)に鳥が止まり、櫂(かい)を漕(こ)ぐ人物の乗った船、右側には蟾蜍(ひきがえる)などが描かれている。画(え)の全体は赤色の太い輪郭線を主調として整え、背後の下地は青色で埋められているが、器物、人物など要所は色を塗り残し、黄色い花崗岩の素地を巧みに生かして全体を際だたせている。蟾蜍は中国では月の象徴であり、同心円文の日輪とあわせて、大陸の葬送思想を表した装飾古墳として興味深い。1953年(昭和28)国の史跡に指定された(86年屋形古墳群に名称変更)。
[三輪嘉六]
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… 九州地方の装飾古墳のうち,横穴式石室に彩画を描いたもののなかには,明らかに大陸文化の影響をうけたと考えてよいものがある。福岡県珍敷塚(めずらしづか)古墳の壁画に,中国で月の表現として用いる蟾蜍(せんじよ)(ひきがえる)の図があることや,福岡県竹原(たけはら)古墳の壁画に,日本人の作品とは信じがたいほどの,力強い人馬の描法を見いだすことは,だれもが指摘するその実例である。そうして,日本に影響をあたえたものは,墓室の壁画に風俗画を用いる高句麗の風習であろうというのも,多くの学者の一致した見解である。…
※「珍敷塚古墳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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