珍敷塚古墳(読み)めずらしづかこふん

精選版 日本国語大辞典 「珍敷塚古墳」の意味・読み・例文・類語

めずらしづか‐こふんめづらしづか‥【珍敷塚古墳】

  1. 福岡県うきは市吉井町富永に所在する六世紀後半の古墳石室の奥壁に赤・藍の顔料を用いて、小舟に乗る人物・鳥や太陽蟾蜍(せんじょ)ヒキガエル)などを描いた壁画がある。昭和二八年(一九五三国史跡指定。同六一年、屋形古墳群に名称変更。

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日本歴史地名大系 「珍敷塚古墳」の解説

珍敷塚古墳
めずらしづかこふん

[現在地名]吉井町富永

耳納みのう山地北麓にある装飾古墳群の一つ。昭和二五年(一九五〇)土取工事で墳丘が削られ、石室に壁画が発見された。石室は玄室が長さ約四メートル・幅約二メートルの長方形プラン横穴式石室であるが、複室か単室かは不明。装飾が施された個所は奥壁が主体で、右側壁の奥壁側にも一部みられる。奥壁の中心には三個の靫が並び、左側の靫上に大きな蕨手文がある。画面左側には船とそれを漕ぐ人物が描かれ、船の舳先には黒い鳥がとまる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「珍敷塚古墳」の意味・わかりやすい解説

珍敷塚古墳
めずらしづかこふん

福岡県うきは市吉井町富永(よしいまちとみなが)にある装飾古墳。石室は奥壁と右壁基部の一部を除き破壊されているが、もと長さ4メートル、幅2メートルほどの横穴式石室であったとみられる。奥壁は高さ約1メートル、幅約2メートルの花崗(かこう)岩の一枚石で、表の全面に雄大な彩色画が描かれている。中央に大きく三基の靭(ゆき)と蕨手文(わらびてもん)を配して構図の主構成とし、その左右には繊細な図像が描かれている。左側は中心を赤く彩った太陽を表す同心円文であり、その下に舳先(へさき)に鳥が止まり、櫂(かい)を漕(こ)ぐ人物の乗った船、右側には蟾蜍(ひきがえる)などが描かれている。画(え)の全体は赤色の太い輪郭線を主調として整え、背後下地青色で埋められているが、器物、人物など要所は色を塗り残し、黄色い花崗岩の素地を巧みに生かして全体を際だたせている。蟾蜍は中国では月の象徴であり、同心円文の日輪とあわせて、大陸の葬送思想を表した装飾古墳として興味深い。1953年(昭和28)国の史跡に指定された(86年屋形古墳群に名称変更)。

[三輪嘉六]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「珍敷塚古墳」の意味・わかりやすい解説

珍敷塚古墳
めずらしづかこふん

福岡県うきは市富永にある装飾古墳。墳形は破壊され不明である。石室も破壊されているが横穴式石室の奥壁に赤,藍などの彩色画がある。図文には太陽,鳥や人物を乗せた小舟,月のような円文とヒキガエルなどが描かれている。そのほか中央に3個の靫と双頭の蕨手文がある。ヒキガエルは古来中国では月の中にいるといわれているもので,この画材は中国系のものと思われ,高句麗古墳群の壁画にもみられる。

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国指定史跡ガイド 「珍敷塚古墳」の解説

めずらしづかこふん【珍敷塚古墳】


⇒屋形古墳群(やかたこふんぐん)

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世界大百科事典(旧版)内の珍敷塚古墳の言及

【装飾古墳】より

… 九州地方の装飾古墳のうち,横穴式石室に彩画を描いたもののなかには,明らかに大陸文化の影響をうけたと考えてよいものがある。福岡県珍敷塚(めずらしづか)古墳の壁画に,中国で月の表現として用いる蟾蜍(せんじよ)(ひきがえる)の図があることや,福岡県竹原(たけはら)古墳の壁画に,日本人の作品とは信じがたいほどの,力強い人馬の描法を見いだすことは,だれもが指摘するその実例である。そうして,日本に影響をあたえたものは,墓室の壁画に風俗画を用いる高句麗の風習であろうというのも,多くの学者の一致した見解である。…

※「珍敷塚古墳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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