フロイトが人間の心を支配する二つの原則として提唱したものの一つ。人間の言動は快感(緊張を解放して緊張をできるだけ低く保つこと)を求めるものであり、衝動の満足を求めているものと考えられるが(快感原則)、これと対照的に、現実の要請や現実認識に従い衝動の満足を一時的に延期し、不快に耐えることを現実原則に従うという。一見、現実原則は快感原則に対立した原則のようにみなされやすいが、これは快感原則を否定するものではない。快感追求を放棄するものではなく、ただ一時的に満足を先延ばしするだけで、終極的には満足を求めるのであるから、現実原則は快感原則の変形とみなされる。急がば回れというときの回り道のことをいっている。快感原則は無意識的一次過程を支配しているのに対し、現実原則は前意識と、意識すなわち二次過程を支配している原則である。
[外林大作・川幡政道]
『フロイト著、井村恒郎訳「精神現象の二原則に関する定式」(『フロイト著作集6』所収・1970・人文書院)』
S.フロイトの用語。フロイトによれば,精神活動は,〈快楽原則〉と〈現実原則〉という二つの原則によって支配されている。前者は,本能欲求の高まりを現実の充足か幻覚的な充足によって低減させる活動であり,後者は,本能の満足を現実に適応するように馴致させていく過程である。すなわち,それは本能の満足を断念させたり延期させたり,迂回させたりする。現実原則は快楽原則に対置されるけれども,対立するものではない。それは快楽原則の直接的な発動に基づく現実を無視した危険からわれわれを保護しながら,終局には快楽原則に奉仕するものとなる。フロイトは人間の発達上,現実原則の支配を重要視し,現実原理の確立こそ人間の自我発達の第一の推進力であるとみなしている。現実原則が支配する二次過程が確立していることが,成人の健康人の条件であり,快楽原則の支配する一次過程の遺残や再燃は,神経症や精神病の状態を意味する。
→快楽原則
執筆者:下坂 幸三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…精神分析の用語。〈快感原則〉ともいい,〈現実原則〉と並んで心的機能を支配する基本原則の一つ。S.フロイトの用語に〈恒常原則principle of constancy〉という概念がある。…
※「現実原則」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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