男舞(読み)オトコマイ

デジタル大辞泉 「男舞」の意味・読み・例文・類語

おとこ‐まい〔をとこまひ〕【男舞】

中世白拍子しらびょうしが、白い水干すいかん立烏帽子たてえぼし白鞘巻しろさやまき太刀という男装で舞ったという舞。
で、直面ひためんの男が舞う勇壮な舞。また、そのときの囃子はやし
歌舞伎舞踊で、白拍子の男舞の手を取り入れた踊り。

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精選版 日本国語大辞典 「男舞」の意味・読み・例文・類語

おとこ‐まいをとこまひ【男舞】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 中世、女が男装して舞った舞。鳥羽天皇の時、白拍子(しらびょうし)が始めたという。舞童の舞。
    1. [初出の実例]「先舞左右各三、其後童舞、其後又男舞云々」(出典:玉葉和歌集‐承安元年(1171)四月一二日)
  3. 能楽直面(ひためん)の男の舞う舞。力強くテンポの速い舞。「安宅(あたか)」「七騎落(しちきおち)」など、もっぱら四番目現在物に用いる。また、この時のはやし。笛を主とし、大、小の鼓によって演奏される。勢いよく力強いもの。〔日葡辞書(1603‐04)〕
  4. 歌舞伎舞踊に取り入れたもの。長唄が多い。
    1. [初出の実例]「三味線入り男舞になり、本行の舞になり、よろしくあって」(出典:歌舞伎・勧進帳(日本古典全書所収)(1840))

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改訂新版 世界大百科事典 「男舞」の意味・わかりやすい解説

男舞 (おとこまい)

(1)平安時代末期から鎌倉時代にかけて流行した白拍子(しらびようし)舞の別名。水干に立烏帽子,白鞘巻の太刀という男装束で主に高級遊女が舞った。(2)歌舞伎舞踊の一種。白拍子姿を模す拍子舞。若衆歌舞伎で型がつくられ人気があった。大小の舞もその一つで,金の立烏帽子振袖,水干を羽織り太刀をはき背に大御幣をさす姿が特徴。のち変化舞踊などの一曲として舞われた。(3)能の舞事の一種。直面(ひためん)の男のテンポの速い勇壮な舞。笛を地に大小鼓があしらう。《木曾》《小袖曾我》《安宅》など現在物のシテが多く舞う。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「男舞」の意味・わかりやすい解説

男舞
おとこまい

(1) 能の舞事の名称。直面 (ひためん) の男,主として武士が舞う舞。笛,大鼓,小鼓が囃すテンポの速い壮快な舞である。破掛り,達拝 (たっぱい) 掛り,山伏掛りの3種がある。 (2) 白拍子の舞の名称。中世の白拍子は白の水干 (すいかん) ,烏帽子に太刀を帯びた男姿であったためにこの称がある。 (3) 近世初期歌舞伎において白拍子姿の流れをくみ,金烏帽子に派手な小袖の片肌を脱ぎ,背に御幣を差して舞った舞をいい,のちの歌舞伎に受継がれ,長唄『三幅対和歌姿絵 (さんぷくついうたのすがたえ) 』『倣三升四季俳優 (まねてみますしきのわざおぎ) 』のうち『男舞の神楽歌』 (常磐津) が今日に残る。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「男舞」の解説

男舞
おとこまい

歌舞伎・浄瑠璃外題
初演
明治25.12(大阪・角座)

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世界大百科事典(旧版)内の男舞の言及

【舞事】より

…能の舞事には,笛(能管)・小鼓・大鼓で奏する〈大小物(だいしようもの)〉と太鼓の入る〈太鼓物〉とがあるが,その両者を含めて,笛の基本の楽句である(じ)の種類によって分類されることが多い。すなわち,呂中干(りよちゆうかん)の地といわれる共用の地を用いる〈序ノ舞〉〈真(しん)ノ序ノ舞〉〈中ノ舞(ちゆうのまい)〉〈早舞(はやまい)〉〈男舞(おとこまい)〉〈神舞(かみまい)〉〈急ノ舞〉〈破ノ舞(はのまい)〉などと,それぞれが固有の地を用いる〈楽(がく)〉〈神楽(かぐら)〉〈羯鼓(かつこ)〉〈鷺乱(さぎみだれ)(《鷺》)〉〈猩々乱(《猩々》)〉〈獅子(《石橋(しやつきよう)》)〉〈乱拍子(《道成寺》)〉などの2種がある。〈序ノ舞〉は女体,老体などの役が物静かに舞うもので,《井筒》《江口》《定家》などの大小物と《小塩(おしお)》《羽衣》などの太鼓物がある。…

※「男舞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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