留山(読み)トメヤマ

デジタル大辞泉 「留山」の意味・読み・例文・類語

とめ‐やま【留山】

江戸時代山林保護のため狩りや伐木を禁じた山。立て山。→明山あきやま

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精選版 日本国語大辞典 「留山」の意味・読み・例文・類語

とめ‐やま【留山】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 近世、住民の狩猟樹木伐採が禁じられた山林。立山(たてやま)留林。留野。⇔明山(あきやま)
    1. [初出の実例]「是者神木と申、留山にて候間」(出典:上井覚兼日記‐天正一三年(1585)一一月一六日)
  3. 江戸時代、係争が解決するまでの期間、原告・被告双方の立入りを禁止した山林。
    1. [初出の実例]「右場所山論仕、御取上、御留山被仰付候」(出典:山論に付御取上之場所書上帳‐享保一二年(1727))

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改訂新版 世界大百科事典 「留山」の意味・わかりやすい解説

留山 (とめやま)

(1)近世の領主直轄林(御林(おはやし))のうち,とくに林相のすぐれた山林の範囲を限り,住民の立入りを禁制した保護林。留林,建山(たてやま),禁林ともいう。尾張藩が自領木曾山林において1665年(寛文5)に制定したヒノキの留山(木曾山),同期に弘前藩がヒバの美林津軽ヒバ)を囲いこんだ留山などがよく知られている。広葉樹等の伐採は許可されるが特定の針葉樹は伐採を禁じているような場合は留木(とめぎ)という。留山・留木は藩の資源保護制度とみてよい。盛岡藩では御用材のほかは伐採しないのを通則とし,仙台藩では他領との境界に近い御林を御留山(おとめやま)とし,軍事用材の調達予備地として禁伐とした。御留山のうちでも,付近の村民に保護を委託し,代償として,落枝,落葉の採取を認めているのもあり(土佐藩),いっさいの雑木,小柴の採取を禁止している場合もある(盛岡藩)。留山制を解除した山を明山(あけやま)という。

(2)一時的に利用者の立入りを禁止する山林。近世では山林争論山論)の提訴から裁決に至るまでの期間,現状維持のため,訴答(原告,被告)双方の入山を差し止める山林をいう。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「留山」の意味・わかりやすい解説

留山
とめやま

御林(おはやし)などと呼ばれた近世の領主林のうち、入山・伐採を厳格に禁止された山林のこと。近世初期の大建設時代、幕藩領主の囲い込んだ優良森林資源は、搬出可能な地域から大量に伐採され、寛文・延宝期(1661~1681)には資源桔渇状況に陥った。また、この時期は山野を対象とした耕地開発も進み、山野の水土保全機能が低下して、本田畑への災害を招くようになった。以後、享保期(1716~1736)頃までに、領主はこうした状況を解消するため、領主林については広く伐採禁止林(留山)を設定して優良森林資源を保護・育成するとともに、水土保全機能の向上に務めた。その結果、領主林からの伐採量は急減し、山元の村々では百姓の稼ぎの場が縮小した。森林資源は徐々に回復するが、伐採規制だけでは不十分であったため、領主林に百姓や地方給人(じかたきゅうにん)・陪臣(ばいしん)などが植林し、その収益を領主と植林者とが一定割合で分ける部分林(ぶわけばやし)制度の導入で、より積極的な資源育成に着手する藩が多かった。

[加藤衛拡]

『農林省山林局編『徳川時代に於ける林野制度の大要』(1954・林野共済会)』『所三男著『近世林業史の研究』(1980・吉川弘文館)』

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「留山」の解説

留山
とめやま

江戸時代,領主が優良材の確保,財政赤字補填などを目的に農民による利用を排除し,面的に取りこみ,支配下においた直轄林。名古屋藩高知藩和歌山藩などで用いられた呼称で,御林(おはやし)と称した幕府などでも用いられることがあった。山奉行などの役職がおかれ,地元の村方からも御林守が取りたてられた。優良林の枯渇化が進む寛文~享保期に多く設定された。御林・立山・直山(じきやま)などということもある。なお山境や山利用に関する争論がおきた際,裁決までその利用が停止されるが,これも留山という。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「留山」の意味・わかりやすい解説

留山
とめやま

一般の利用を禁じた山林。樹木や森林の福利作用を保全する目的から一定の山林の樹木の伐採を禁じることは,奈良時代に始っている。江戸時代には用材確保のための美林はもとより保安林,狩猟地,入会権で係争中の山林などが藩主によって留山とされた。また,入会山の利用の一形式として,権利者集団としての共同体が直轄して支配し,個々の権利者の利用が認められない山林も留山といわれる。 (→留木 )

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