症候性てんかん(読み)しょうこうせいてんかん(英語表記)Symptomatic epilepsy

六訂版 家庭医学大全科 「症候性てんかん」の解説

症候性てんかん
しょうこうせいてんかん
Symptomatic epilepsy
(脳・神経・筋の病気)

どんな病気か

 症候性てんかんは、その原因となる基礎疾患が脳にあり、そのために脳内の特定部位に電気的な異常・過剰放電が起こる病気です。症候性てんかんには部分てんかんに属するものと、全般てんかんに属するものがありますが、ほとんどは部分てんかんに属するもので、その発作は脳の部分的な病変による部分的な電気的異常から起こると考えられます。

原因は何か

 小児期に発症する症候性てんかんの原因としては、先天性奇形(せんてんせいきけい)、出産時およびその前後の異常による脳損傷(のうそんしょう)新生児乳児期頭部外傷や脳の感染症(髄膜炎(ずいまくえん)脳炎)、遺伝性代謝異常症(いでんせいたいしゃいじょうしょう)があります。

 成人になってみられる症候性てんかんの原因としては、脳血管障害脳腫瘍(のうしゅよう)、頭部外傷やアルツハイマー病のような神経変性疾患があります。

症状の現れ方

 脳の限られた部位に生じる異常な電気的放電は、脳のどの部位にでも起こる可能性があります。そのため異常な電気放電が始まる部位により、前頭葉(ぜんとうよう)側頭葉(そくとうよう)頭頂葉(とうちょうよう)後頭葉(こうとうよう)てんかんの4つに分けられます。

 頻度が高いのは前頭葉の運動を司る部位から始まる運動発作、頭頂葉の感覚を司る部位から始まる感覚発作、それに感情・行動のはたらきが集まっている側頭葉内側底面から始まる自律神経発作と精神発作です。これらにはしばしば意識障害が合併します。

 とくに精神発作では意識混濁、夢遊状態、認知障害、恐怖・驚愕(きょうがく)を示す感情障害が発作中にみられることがあり、これらの発作は複雑部分発作と呼ばれます。この発作は治療に反応しにくく、難治性てんかんの大部分を占める発作型です。

 これらの部分発作でもあまりに過剰な異常放電が脳中心部に到達すると、そこから大脳の全般に電気変化が広がり、二次的に全身のけいれんを起こすこともしばしばあります。

検査と診断

 診断は、詳しい神経学的診察で脳異常が脳の特定部位に限られることを診断し、さらに脳波を記録してその電気的異常の発生する場所を確認します。場所がわかれば、そこを目標にしてCTMRIなどの画像診断を行い、病変の部位だけでなく、その性質(脳の傷か腫瘍奇形かなど)をも診断して正しい治療を行います。症候性てんかんの画像診断にはMRIのほうがCTに比べ優れていることを示す証拠があります。

 ほかの疾患と区別するには脳波検査が不可欠で、特異な脳波変化があることにより、一過性脳虚血発作(いっかせいのうきょけつほっさ)失神と簡単に区別されます。

治療の方法

 腫瘍などの脳病変を除去すべき場合には、外科的に腫瘍の摘除を行いますが、それ以外は一般に薬物治療を行います。

 発作の開始が左右いずれかに限られた部分発作からなる症候性てんかんには、カルバマゼピン(テグレトール)が第一選択薬としてすすめられ、もし副作用で服用できない時には、第二選択薬としてフェニトイン(アレビアチン)が、さらにそれも服用できないときにはバルプロ酸ナトリウム(デパケン)が使われます。

 難治のてんかんでは、外科的治療を考える前に、新規の抗てんかん薬であるトピラマート(トピナ)やラモトリジン(ラミクタール)、さらにゾニサミドやクロバザムといった薬を試みるべきですが、これらの薬を十分量用いて5年以上治療してもなお、てんかん発作が週1回以上起こる難治性てんかん(側頭葉てんかん)には、薬物療法より外科的治療が推奨されるので、てんかん専門医に相談してみてください。

病気に気づいたらどうする

 てんかん発作に気づいた場合にはできるだけ早く専門医の診察を受けます。症候性てんかんの場合には、その原因となる疾患についても検査をしてもらい、病気の予後に関して十分に医師から聞いたうえで、最も適切な治療を受けてください。

廣瀨 源二郎

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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