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解放後の中国で,知識人の文学,芸術,科学活動を含む学術・思想面における積極性を引き出すために,毛沢東が1956年5月の最高国務会議で提起した文化政策のスローガン。百家争鳴は,もともと古代の戦国時代,諸子百家による思想・学術活動の活況を表す言葉であった。たとえば,18世紀清代のすぐれた史学理論家として知られる章学誠は,〈諸子争鳴,みな先王の一端を得〉(《文史通義》)といい,清代の一大叢書《四庫全書》の目録解題である《四庫全書総目》は雑家類を評して〈衰周の季,百氏争鳴す。説を立て書を著し,おのおの流品をなす〉といって,戦国時代の思想・学術の活発さを表現している。こうして〈百家争鳴〉の語は,戦国の思想状況を現代に照応させるスローガンとしてよみがえり,毛沢東の提起をうけた中国共産党宣伝部長陸定一は,科学文化工作会議の講演で〈百花斉放・百家争鳴〉の具体的方針を提示した。百花斉放は主として文学・芸術面における多様な対象とその研究に関する方法論を開花させることをいった。
このスローガンの背景となったのは,建国後の《紅楼夢研究》批判,胡適思想批判,胡風批判などの激しいブルジョア観念論批判によってもたらされた学術・思想界,文芸界の萎縮した状況を是正し,積極的な社会主義建設を遂行するためには知識人の結集を必要とするという党中央の意志があった。しかし予期に反した党に対する批判が激発した結果,1957年,反右派闘争が開始され,〈百家争鳴〉は鳴りやみ,〈百花斉放〉はしぼんでしまった。社会主義建設における党の指導性を否定する恐れを党中央がいだいたがためであった。いわゆる〈自由化〉とは性格を異にする文化政策であったのである。今日,〈百花斉放・百家争鳴〉は,〈双百〉と簡称されて,現代化政策の完遂をめざす現指導部により,国家建設の諸分野でさかんに提唱されている。
執筆者:山村 均
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