六訂版 家庭医学大全科 「皮膚と粘膜のカンジダ症」の解説
皮膚と粘膜のカンジダ症
ひふとねんまくのカンジダしょう
Candida infection on skin and mucosa
(皮膚の病気)
どんな病気か
粘膜の常在菌であるカンジダ、とくにカンジダ・アルビカンスが増殖、形態変化して、皮膚と粘膜に感染して生じます。部位や年齢によりカンジダ性
カンジダ症ができやすい人
カンジダは粘膜の常在菌で、誰でも保菌していますが、基本的に病原性が弱い菌で、発病することはほとんどありません。しかし、特殊な条件が重なると発病します。皮膚や粘膜だけではなく、肺、消化器、その他の内臓に感染することもあります。この内臓カンジダ症は血液疾患などで免疫能が高度に低下した患者さん(
舌を綿棒でこすったあと、培地に塗ってカンジダ・アルビカンスを培養すると、60歳以下の健常者では10%ぐらいしか生えませんが、ステロイド薬を内服していたり、糖尿病、悪性腫瘍、
このような易感染性宿主では簡単な培養方法で菌が検出されることから、全身的に抵抗力が低下している患者さんや高齢者のなかではすでに増殖を始めており、皮膚の病変の感染源になっていて、自己接種のような形で皮膚のカンジダ症を生じると考えられます。したがって、皮膚や粘膜のカンジダ症は一部の病型を除いて、このような人に発症しやすいといえます。
カンシダ症は
そのため、季節的には夏季に起こりやすく、誘因としては、肥満、妊娠、寝たきりによる不十分なスキンケア、外用ステロイド薬の誤用、糖尿病の血糖コントロール不良、皮膚疾患に対する不適切な治療などがあげられます。
症状の現れ方
複数の病型がありますが、カンジダ症の特徴的な臨床所見は境界が不鮮明な
検査と診断
カンジダ症の診断において最も重要な検査は、白癬と同様で直接鏡検(顕微鏡での検査)です。とくにカンジダは粘膜の常在菌であるため、培養陽性だけでは診断の決め手になりません。
直接鏡検は白癬(はくせん)に準じます。病変部から
白癬では採取部位を選択するのが比較的難しいのですが、カンジダ症では概して白癬より菌要素を見つけやすい傾向があります。カンジダは先端や連結部が細い
日常診療におけるカンジダの分離培地として、サブローブドウ糖寒天培地、マイコセル培地、水野・高田培地、クロモアガーなどが用いられます。また簡易キットがあるため、白鮮菌より簡単に菌種を特定できます。
皮膚と粘膜のカンジダ症の原因菌種は、カンジダ・アルビカンスが圧倒的に多く、その他の菌種としてはカンジダ・トロピカーリス、カンジダ・パラプシローシスなどが、少数、分離されます。
治療の方法
治療の基本は、カンジダに抗菌力のある抗真菌薬の外用です。カンジダ性爪囲爪炎(そういそうえん)、口腔カンジダ症などの病型や難治性・広範囲の皮膚カンジダ症では内服薬を用います。
外用薬ではイミダゾール系のものが、抗菌域が広く、カンジダに対しても有効性が高く、第一選択薬といえます。ネチコナゾール(アトラント)、ケトコナゾール(ニゾラール)、ラノコナゾール(アスタット)、ルリコナゾール(ルリコン)などの新しい薬は抗菌力が強化されています。剤形としては、軟膏剤、クリーム剤、液剤、ゲル剤がありますが、皮膚カンジダ症はびらん(ただれ)局面を示すことが多いので、刺激が少ないクリーム剤か軟膏剤が無難です。
内服薬ではトリアゾール系のイトラコナゾール(イトリゾール)が、抗菌域が幅広く、第一選択薬です。副作用は比較的少ないのですが、血液検査を受けたほうがよく、併用に注意する薬剤があります。
同じトリアゾール系のフルコナゾール(ジフルカン)はカンジダ症も含めた内臓真菌症に用いられていますが、残念ながら皮膚カンジダ症には保険適応がありません。テルビナフィン(ラミシール)は白癬菌に対する抗菌力が極めて強く、白癬には最適であるものの、カンジダ症に対する有効性はあまり高くありません。
病気に気づいたらどうする
早期に正しく診断し、適切な治療を行えば、それほど難治性のものではありません。
しかし発病したのには必ず理由があるので、それを見つけるのが重要です。再発を防ぐ鍵にもなりますし、皮膚カンジダ症から内臓の病気が見つかることもあります。
加藤 卓朗
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報