破産法(読み)はさんほう

精選版 日本国語大辞典 「破産法」の意味・読み・例文・類語

はさん‐ほう ‥ハフ【破産法】

〘名〙 破産に関して定めた法律。破産財団破産債権財団債権否認権などの実体規定、破産宣告破産管財人監査委員債権者集会などの手続規定、免責および復権、罰則の四編から成る。大正一一年(一九二二)制定。

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デジタル大辞泉 「破産法」の意味・読み・例文・類語

はさん‐ほう〔‐ハフ〕【破産法】

裁判上破産手続きを規定している法律。平成16年(2004)に現行の破産法が制定されたのにともない、大正11年(1922)に公布された旧破産法は廃止された。現行法では、破産手続きと免責手続きが一体化されるなど手続きが簡素化され、財産の分配をより迅速・公正に行うため破産債権査定決定や役員責任査定などの制度が導入された。また、破産した個人の再起が容易になり、会社が破産した場合に労働者の債権の保護もより一層図られている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「破産法」の意味・わかりやすい解説

破産法
はさんほう

形式的意義においては、破産法典をさし、実質的意義においては、破産法のほかに民法その他の法典中の破産に関する規定をも含めた意味に用いられる。日本の破産法は、旧破産法が1922年(大正11)に、ドイツ・オーストリア破産法を範として制定され、翌1923年1月1日より施行された(大正11年法律第71号)。この旧破産法の前身としては、江戸時代の「身代(しんだい)限り」や「分散」の慣習がみられ、さらに1872年(明治5)には華士族平民身代限規則が定められているが、これらはその後の破産法とは直接の関連はない。また1890年にフランス商法における破産制度に倣い商人破産主義をとった旧商法第3編破産編および非商人につき家資分散法が制定されている。しかしその後、ドイツ法の影響を受けた民法・商法が施行された関係で、旧商法破産編および家資分散法は廃止され、上記の旧破産法が制定された。旧破産法は、1922年の制定から長い年月を経て、社会の実状に合わなくなった点が多くなり、全面的に見直しを迫られ、1996年(平成8)10月より、当時の破産法、和議法会社更生法、商法上の整理(2005年改正前の商法381条以下)および特別清算(同商法431条以下)などの倒産処理手続に関する法制度(一般に倒産法と称する)改正の検討が進められた。1999年12月には、日本経済の状況にかんがみ、倒産法のなかでも、とくに中小企業の再建を目的とする民事再生法が制定され、2000年4月に施行された。その後、旧破産法を全面的に改正した現行の破産法(平成16年法律第75号)が2004年に制定され、翌年3月に施行された。

 現行法は、第1章「総則」、第2章「破産手続の開始」、第3章「破産手続の機関」、第4章「破産債権」、第5章「財団債権」、第6章「破産財団の管理」、第7章「破産財団の換価」、第8章「配当」、第9章「破産手続の終了」、第10章「相続財産の破産等に関する特則」、第10章の2「信託財産の破産に関する特則」、第11章「外国倒産処理手続がある場合の特則」、第12章「免責手続及び復権」、第13章「雑則」、第14章「罰則」から構成され、計277か条の規定を置いている。

[内田武吉・加藤哲夫]

『加藤哲夫著『法律学講義シリーズ 破産法』(2009・弘文堂)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「破産法」の意味・わかりやすい解説

破産法
はさんほう

大正 11年法律 71号。 1923年1月1日より施行。破産法の前身は,明治 23年法律 32号商法第3編であったが,同編は K.ロエスレルの起草にかかるものであり,商人破産主義をとり,非商人については明治 23年法律 69号家資分散法が適用されていた。その後,新民法,商法の制定とともにその改正の必要に迫られ,これに代わるものとして制定された。実体規定,手続規定,免責および復権,罰則の4編からなり,大体において制定当時のドイツ法を範としている。その後,数次の部分的改正があったが,昭和 27年法律 173号によって英米破産法に固有の制度である免責主義を採用した。 (→家資分散 )  

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「破産法」の解説

破産法

倒産した会社を処理するために規定されている法律のひとつ。会社が倒産した場合、裁判所は破産法、会社更生法、民事再生法のいずれかの法律を適用する。破産法は会社を解散させ、債権者が残された資産を分配する規定である。会社の再建の可能性が少なく、破産法を適用したほうが債権者にとってもプラスになると裁判所が判断した場合に適用される。逆に、他の2つは、会社の存続が前提となっている法律である。会社の再建の可能性が高く、存続したほうが債権者にとってもプラスになると判断された場合に適用される。

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会計用語キーワード辞典 「破産法」の解説

破産法

経営不振に陥った企業を解体して、債務をその財産を売却した範囲で弁済する法律制度で、終結型倒産手続きのひとつとなっています。

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M&A用語集 「破産法」の解説

破産法

終結型倒産手続きのひとつ。経営不振に陥った企業を解体し、その財産を売却した範囲で債務を弁済する法律制度。

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世界大百科事典(旧版)内の破産法の言及

【倒産】より

… 倒産手続の理念は,公明,公正(債権者平等の実現),適正(債務者の保護)かつ迅速な倒産処理にあるが,その方法には,倒産に(ひん)した経済活動を清算して終わらせてしまうもの(清算型)と,これを維持しつつ再建を図ろうとするもの(再建型)に分かれる。日本には前者にあたるものとして破産法による破産と商法による特別清算(〈清算〉の項参照)があり,後者にあたるものとして,破産法による強制和議,和議法による和議,商法による会社整理,および会社更生法による会社更生がある。なお,このほかこのような裁判的手続によらないで,利害関係人の話合いで倒産処理をすることもでき,これを私的整理(内整理,任意整理ともいう)と称する。…

※「破産法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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