磁力計(読み)ジリョクケイ(その他表記)magnetometer

翻訳|magnetometer

デジタル大辞泉 「磁力計」の意味・読み・例文・類語

じりょく‐けい【磁力計】

磁界の強さを測定する装置。小さい磁石を細い線でつり、それにつけた鏡で磁針回転角を測る。

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精選版 日本国語大辞典 「磁力計」の意味・読み・例文・類語

じりょく‐けい【磁力計】

  1. 〘 名詞 〙 磁性体が磁界によって受ける力を測定して、磁気に関する諸量を測定する器械。磁気天秤、磁気振り子、トルク磁力計などがある。〔電気訳語集(1893)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「磁力計」の意味・わかりやすい解説

磁力計
じりょくけい
magnetometer

物質の磁気の強さ(=磁化)を測る磁化測定装置と、磁場を測る磁場測定装置の総称。

(1)磁化測定装置 測定原理により2種に大別される。第一は、ファラデー電磁誘導の法則を応用するもの。1対のサーチコイルの中央に置かれた試料を動かすとコイルに起電力を発生する。この起電力は、コイル内の磁束の時間変化に比例するので、試料を動かす速さを同じにして、標準試料の場合の起電力と比較することによって、試料の全磁気モーメント(μ)(したがって、単位体積当りの磁気モーメント=磁化M)を知ることができる。試料を機械的に振動させる方式が試料振動型磁力計で、広く使用されている(図A)。第二の原理は、磁性体が不均一な磁場から受ける力を利用するもの。電磁石の向かい合うN、S磁極間中心より(磁場に垂直方向に)少し離れた位置に、試料を置く。常磁性体または強磁性体は磁極中心(最大磁場の位置)に向かう吸引力を受ける(反磁性体では逆向きの力になる)。この力は試料の全磁気モーメント(μ)に比例するので、力の大きさと向きを測れば、μを求められる。力の測定には高感度の天秤(てんびん)を使うことが多い。この場合には、試料の位置は磁極中心から鉛直上方へずらせる。この方式を磁気天秤という(図B)。力を利用する方法は、ピエール・キュリー(マリー・キュリーの夫)の時代(19世紀末)から1960~1970年代ころまで磁化測定の主流をなしていたが、1970年代後半ころから試料振動型の磁力計が主流になってきた。

(2)磁場測定装置 種々の測定原理のものがあり、目的に応じて使い分ける。前述の電磁誘導の法則を応用するものがもっとも基本的で、磁場内に置かれたサーチコイルに発生する起電力を測定する。静磁場の場合はコイルを動かし、時間変化する磁場の場合は静止コイルを用いる。この方式は、ごく微弱な磁場を除いてはすべての磁場に応用できる。そのほかに、半導体のホール効果を利用したものが多く使われ、中程度の磁場測定には便利である。やや特殊なものとして、(H2O内水素の陽子の)核磁気共鳴超伝導体ジョセフソン効果、光のファラデー効果磁気抵抗などを応用したものもある。核磁気共鳴の方法は磁場の精密測定に、ジョセフソン効果の方法は微小磁場の測定に適する。

[宮台朝直]


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改訂新版 世界大百科事典 「磁力計」の意味・わかりやすい解説

磁力計 (じりょくけい)
magnetometer

磁場や磁化の方向や大きさを測定する装置の総称。おもに地球科学と磁性体物理学の分野で使われ,前者では地磁気や岩石の自然残留磁気などの微小な磁場や磁化の測定に使用する。磁力計には原理の違いで,(1)磁石が磁場中で受ける力を測定するもの,(2)電磁誘導の法則を利用するもの,(3)ある種の磁性体の磁化特性を利用するもの,(4)磁気共鳴を利用するもの,(5)液体ヘリウム温度(-269℃)での超伝導効果を利用するものなどがある。(1)には,つるした磁石の動きを鏡で拡大する地磁気変化計があり,地磁気の日変化や磁気あらしの観測に使われる。1950-60年代に活躍した岩石の自然残留磁化測定用の無定位磁力計(アスタティック・マグネトメーター)や,磁性体の飽和磁化や磁化率を測定する磁気てんびんは(1)の原理を利用している。(2)には,コイルを地磁気中で回転させて生じる起電力を利用する磁気感応儀や,これに望遠鏡を組み合わせた地理院型磁力計があり,後者は地磁気3成分の測定に利用する。(3)は二重にコイルを巻いたパーマロイ合金の一次コイルに交流電流を通すときの二次コイルに発生する磁場に比例した電圧を測るもので,フラックスゲート磁力計という。この磁力計は,地磁気変化の詳細な観測や,岩石の自然残留磁気測定用のスピナー磁力計のセンサー部として,地球科学ではおおいに活躍した。人工衛星による観測や海底磁力計としても使用されている。(4)は水素の原子核の磁気共鳴を利用し,プロトン磁力計という。精度が良く,小型なため,地磁気観測に広く使用されている。(5)はSQUID(スキド)磁力計として知られ,液体ヘリウムを使用し,感度がきわめて良く,地磁気の精密測定や堆積岩などの微弱な磁化の測定に応用されている。これらの磁力計の地球科学で果たした成果は大きく,縞状磁気異常や地磁気反転の発見からプレートテクトニクスへと発展したことはよく知られる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「磁力計」の意味・わかりやすい解説

磁力計
じりょくけい
magnetometer

磁場の大きさを測定する装置。地磁気や電磁石のつくる磁場などの測定のほか,磁性体の磁化の強さの測定にも用いられる。磁場の大きさは磁束密度SI単位テスラ (T) で表わすことが多いので,磁束計と同じ意味で取扱われることが多い。最近では半導体のホール効果を利用したホール素子磁力計がよく用いられる。これは 10-2cc 程度の微小な領域でも測定可能で,磁場の強さの測定範囲も広い。また,プロトン核磁気共鳴を応用したプロトン磁力計は絶対測定 (→測定の方法 ) も可能で,強磁場の測定に盛んに用いられる。そのほか,原子のゼーマン効果光ポンピング法とを用いた光ポンピング磁力計は微小磁場の連続測定,絶対測定ができ,感度は 10-11T 程度にもなっている。古典的な例として,磁場による磁針のふれを光てこにより拡大して測定するものとか,サーチコイルを磁場から出したときに生じる誘導起電力を検流計で測定するものなどがある。

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百科事典マイペディア 「磁力計」の意味・わかりやすい解説

磁力計【じりょくけい】

地磁気の強さを測定する器械。広義には物体の磁化の強さを測る装置一般をいう。前者は,地球磁力の方向と大きさの絶対値を測定する絶対磁力計,地磁気の場所による相対的変化を測り磁気探査にも利用される磁気偏差計,地球磁力の時間的変化を測定または記録する地磁気変化計の3種に分類される。実際の装置の原理は数種あるが,近年では水中の陽子(プロトン)の核磁気モーメントを利用して絶対測定を行うプロトン磁力計(海上,空中でも使用可能)や,ルビジウムやセシウムのゼーマン効果を利用して弱磁場の高感度測定を行う光ポンピング磁力計(人工衛星にのせ宇宙空間の磁場を測定する)などが開発されている。一般用の磁力計にも各種のものがあるが,岩石の磁性を調べるときなどには外部磁場をパーマロイなどで遮蔽(しゃへい)したスピナー磁力計や超伝導磁力計がよく用いられる。また,船上の地磁気三成分測定では,打消し磁場を変化させ絶対測定を行っている。

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