翻訳|magnetometer
物質の磁気の強さ(=磁化)を測る磁化測定装置と、磁場を測る磁場測定装置の総称。
(1)磁化測定装置 測定原理により2種に大別される。第一は、ファラデーの電磁誘導の法則を応用するもの。1対のサーチコイルの中央に置かれた試料を動かすとコイルに起電力を発生する。この起電力は、コイル内の磁束の時間変化に比例するので、試料を動かす速さを同じにして、標準試料の場合の起電力と比較することによって、試料の全磁気モーメント(μ)(したがって、単位体積当りの磁気モーメント=磁化M)を知ることができる。試料を機械的に振動させる方式が試料振動型磁力計で、広く使用されている( )。第二の原理は、磁性体が不均一な磁場から受ける力を利用するもの。電磁石の向かい合うN、S磁極間中心より(磁場に垂直方向に)少し離れた位置に、試料を置く。常磁性体または強磁性体は磁極中心(最大磁場の位置)に向かう吸引力を受ける(反磁性体では逆向きの力になる)。この力は試料の全磁気モーメント(μ)に比例するので、力の大きさと向きを測れば、μを求められる。力の測定には高感度の天秤(てんびん)を使うことが多い。この場合には、試料の位置は磁極中心から鉛直上方へずらせる。この方式を磁気天秤という( )。力を利用する方法は、ピエール・キュリー(マリー・キュリーの夫)の時代(19世紀末)から1960~1970年代ころまで磁化測定の主流をなしていたが、1970年代後半ころから試料振動型の磁力計が主流になってきた。
(2)磁場測定装置 種々の測定原理のものがあり、目的に応じて使い分ける。前述の電磁誘導の法則を応用するものがもっとも基本的で、磁場内に置かれたサーチコイルに発生する起電力を測定する。静磁場の場合はコイルを動かし、時間変化する磁場の場合は静止コイルを用いる。この方式は、ごく微弱な磁場を除いてはすべての磁場に応用できる。そのほかに、半導体のホール効果を利用したものが多く使われ、中程度の磁場測定には便利である。やや特殊なものとして、(H2O内水素の陽子の)核磁気共鳴、超伝導体のジョセフソン効果、光のファラデー効果、磁気抵抗などを応用したものもある。核磁気共鳴の方法は磁場の精密測定に、ジョセフソン効果の方法は微小磁場の測定に適する。
[宮台朝直]
磁場や磁化の方向や大きさを測定する装置の総称。おもに地球科学と磁性体物理学の分野で使われ,前者では地磁気や岩石の自然残留磁気などの微小な磁場や磁化の測定に使用する。磁力計には原理の違いで,(1)磁石が磁場中で受ける力を測定するもの,(2)電磁誘導の法則を利用するもの,(3)ある種の磁性体の磁化特性を利用するもの,(4)磁気共鳴を利用するもの,(5)液体ヘリウム温度(-269℃)での超伝導効果を利用するものなどがある。(1)には,つるした磁石の動きを鏡で拡大する地磁気変化計があり,地磁気の日変化や磁気あらしの観測に使われる。1950-60年代に活躍した岩石の自然残留磁化測定用の無定位磁力計(アスタティック・マグネトメーター)や,磁性体の飽和磁化や磁化率を測定する磁気てんびんは(1)の原理を利用している。(2)には,コイルを地磁気中で回転させて生じる起電力を利用する磁気感応儀や,これに望遠鏡を組み合わせた地理院型磁力計があり,後者は地磁気3成分の測定に利用する。(3)は二重にコイルを巻いたパーマロイ合金の一次コイルに交流電流を通すときの二次コイルに発生する磁場に比例した電圧を測るもので,フラックスゲート磁力計という。この磁力計は,地磁気変化の詳細な観測や,岩石の自然残留磁気測定用のスピナー磁力計のセンサー部として,地球科学ではおおいに活躍した。人工衛星による観測や海底磁力計としても使用されている。(4)は水素の原子核の磁気共鳴を利用し,プロトン磁力計という。精度が良く,小型なため,地磁気観測に広く使用されている。(5)はSQUID(スキド)磁力計として知られ,液体ヘリウムを使用し,感度がきわめて良く,地磁気の精密測定や堆積岩などの微弱な磁化の測定に応用されている。これらの磁力計の地球科学で果たした成果は大きく,縞状磁気異常や地磁気反転の発見からプレートテクトニクスへと発展したことはよく知られる。
執筆者:田中 秀文
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