朝日日本歴史人物事典 「神田伯山」の解説
神田伯山(初代)
生年:生年不詳
幕末明治期の講釈師。武州川崎の生まれで,本名斎藤定吉。神田派の祖・初代伯竜の門人で,兄弟子に2代目伯竜,初代伯円がいた。最初のんびりダラダラ演じ,後半一気呵成に転ずるという独自の演出で評判となった。「宮本武蔵」「天一坊」「大坂軍記」などが有名で,なかでも「天一坊」は歌舞伎の世界にもとり入れられ,影響を与えた。師没後は事実上神田派の宗家。常に帯刀し高座の刀架けに脇差をのせてから話し始めたという。この愛刀は2代目に伝えられたが,のちに古武具類を納める靖国神社遊就館(東京九段)に献納された。明治初年に引退,盗賊のため殺された。<参考文献>関根黙庵『講談落語今昔譚』(改題復刻『講談落語考』,1960)
(吉沢英明)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報