福田恆存(読み)フクダツネアリ

デジタル大辞泉 「福田恆存」の意味・読み・例文・類語

ふくだ‐つねあり【福田恆存】

[1912~1994]評論家劇作家・演出家。東京の生まれ。恆存は「こうそん」とも。芸術院会員。保守派論客として平和論・憲法問題・国語問題などに評論活動を展開。演劇人としては現代演劇協会創立劇団主宰。「シェイクスピア全集」の翻訳で岸田演劇賞。評論に「人間・この劇的なるもの」、戯曲に「キティ颱風たいふう」「総統いまだ死せず」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「福田恆存」の意味・わかりやすい解説

福田恆存
ふくだつねあり
(1912―1994)

評論家、劇作家、演出家。東京生まれ。東京帝国大学英文科卒業。第二次世界大戦後、日本近代文学への批判を込めた評論集『作家の態度』『近代の宿命』(ともに1947)により注目された。左翼思想や進歩的文化人への批判から、のち平和問題、国語国字問題でも保守的立場にたち論争を巻き起こした。衰弱した現代人への風刺喜劇『キティ颱風(たいふう)』(1950)、『竜を撫(な)でた男』(1952)、詩劇明暗』(1956)、歴史劇『明智光秀(みつひで)』(1957)、『有馬皇子(ありまのみこ)』(1961)などの戯曲を発表上演した。1963年(昭和38)、それまで所属していた文学座を脱退して現代演劇協会(付属劇団雲・欅(けやき))を結成(のち分裂して劇団昴(すばる))、東京・駒込(こまごめ)に三百人劇場を建設。ほかに戯曲『解(わか)ってたまるか!』(1968)、『総統いまだ死せず』(1970)、評論『人間・この劇的なるもの』(1956)が代表作。『シェイクスピア全集』の訳業により岸田演劇賞(1955)、『私の国語教室』などで読売文学賞(1960)、多年の評論活動により菊池寛賞・芸術院賞(1980)を受賞。81年芸術院会員

[藤木宏幸]

『『福田恆存著作集』全八巻(1957~58・新潮社)』『『福田恆存評論集』全七巻(1966・新潮社)』

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百科事典マイペディア 「福田恆存」の意味・わかりやすい解説

福田恆存【ふくだつねあり】

評論家,劇作家。東京生れ。東大英文科卒。《作家精神》同人となり,横光利一嘉村礒多などを論じ,ロレンスの《アポカリプス論》を訳した。戦後,《作家の態度》《近代の宿命》《人間・この劇的なるもの》《私の国語教室》などで旺盛な評論活動を展開し,日本の擬似的〈近代〉,進歩的知識人の偽善性などを痛烈に批判した。劇作家としても活躍,《キティ台風》や詩劇《明暗》などがあり,また《シェークスピア全集》の翻訳も名高い。ロレンス《恋する女たち》などの翻訳もある。
→関連項目杉浦直樹政治と文学論争

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「福田恆存」の意味・わかりやすい解説

福田恆存
ふくだつねあり

[生]1912.8.25. 東京
[没]1994.11.20. 神奈川,大磯
評論家,劇作家,演出家。東京大学英文科卒業。 1936年から同人誌『作家精神』に,横光利一,芥川龍之介に関する評論を発表。第2次世界大戦後すぐに文芸評論家として活動を始め,やがて批評対象を文化・社会分野全般へと広げた。劇作は 48年の『最後の切札』に次いで 50年『キティ颱風』を発表,文学座で初演され,以後文芸部に籍をおいた。 52年『竜を撫でた男』で読売文学賞受賞。 63年芥川比呂志らと文学座を脱退,現代演劇協会,劇団雲を結成して指導者となる。 70年『総統いまだ死せず』で日本文学大賞受賞。シェークスピアの翻訳・演出でも知られ,個人全訳『シェイクスピア全集』 (15巻,1959~67,補4巻,71~86) がある。著書はほかに『人間・この劇的なるもの』 (55~56) など。 81年日本芸術院会員。

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世界大百科事典(旧版)内の福田恆存の言及

【シェークスピア】より

…第2次大戦後の新劇復興とともにシェークスピアの戯曲はレパートリーの中に確実な位置を占めたが,まだ教養主義的な外面的摂取の域を越えることがなかった。 その点,1955年の福田恆存訳・演出による《ハムレット》(文学座)上演は画期的な事件であった。近代心理主義からの絶縁を宣した福田は,シェークスピア劇に内在する行動のリズムを的確に把握し,〈人生を激しく演戯している〉演技者としてのハムレット像を造形してみせた。…

※「福田恆存」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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