七草の一つ桔梗は、鎌倉期の「八雲御抄‐三」、江戸期の滝沢馬琴「読本・松染情史秋七草」、享保(一七一六‐三六)頃の歌謡「秋の七草」では朝顔である。しかし、今日いう朝顔、古名「牽牛子(けにごし)」は中古に入って輸入されたもので上代にはなかったとする説があり、「万葉集」の朝顔は木槿(むくげ)、旋花(ひるがお)、桔梗などと説かれている。「新撰字鏡」では「桔梗」を「阿佐加保」と訓んでおり、また他の六つが野に咲く草花であることから現在では桔梗が有力とされる。
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ハギ,オバナ(ススキ),クズ,ナデシコ,オミナエシ,フジバカマ,アサガオの7種の草本で,日本の秋の花を代表するものとされる。だれが選定したという記録はないが,《万葉集》に載せられた山上憶良の7種の花の短歌にこの順序で詠まれているものを指すのがふつうである。これらのうち,アサガオは日本の植物ではなく,熱帯アジアの原産で,奈良時代にはすでに日本に移入されており,広く栽培されていたらしいが,憶良の歌にいうアサガオはキキョウのことであるとされている。春の七草が七草がゆの材料の7種であるのに対して,秋はまとめて7種が何かに使われるということはなく,アサガオでもキキョウでもよいということであろう。月見などの秋の行事にはこれらの花が活用され,日本人の生活慣習になじんできた。
執筆者:岩槻 邦男
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観賞を目的として選んだ秋草7種をいう。『万葉集』巻8に収められた山上憶良(やまのうえのおくら)の歌に「萩の花 尾花(をばな)葛花(くずはな) なでしこが花 をみなへし また藤袴(ふぢはかま) 朝顔(あさがほ)が花」と、日本の代表的秋草が詠まれたことに始まる。このなかのアサガオについては、キキョウ説、ムクゲ説、ヒルガオ説、アサガオ説と意見が分かれているが、キキョウ説をとる場合が多い。また江戸時代に好事家(こうずか)が「新秋の七草」を選んでいるが、リンドウ、オシロイバナ、トロロアオイ、ヒオウギ、ゴジカ、ユウガオ、カラスウリと、外来種なども取り入れられている。1935年(昭和10)ごろにも新聞に発表された別の「新七草」があり、それは、ハゲイトウ、ヒガンバナ、ベゴニア、キク、オシロイバナ、イヌタデ、コスモスであった。そのほか、「薬用秋の七草」として、オケラ、クズ、キキョウ、マンジュシャゲ、リンドウ、ヤマトリカブト、ミシマサイコが選ばれたこともある。
[杉山明子]
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…本来はインドからインドシナ,ジャワ,セレベスなどモンスーン地帯の湿地や水田に生育する植物で,日本では野生化しない。江戸時代には秋の七草に数えられることもあったほどよく栽培されたが,近年はほとんどみられなくなった。葉は時に茶として飲料にされる。…
…七種とも書き,春の七草と秋の七草がある。
[春の七草]
〈せり,なずな,ごぎょう,はこべら,ほとけのざ,すずな,すずしろ,これや七草〉とうたわれたように,これらを春の七草と称し,この,ごぎょうはハハコグサ,はこべらはハコベ,ほとけのざはタビラコ,すずなはカブ,すずしろは大根とされる。…
※「秋の七草」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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