秋夜長物語(読み)アキノヨノナガモノガタリ

デジタル大辞泉 「秋夜長物語」の意味・読み・例文・類語

あきのよのながものがたり【秋夜長物語】

室町初期の物語作者未詳。1巻。瞻西上人せんさいしょうにんが、石山観音変化へんげ梅若を愛することにより成道したという稚児ちご物語御伽草子おとぎぞうし先駆

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精選版 日本国語大辞典 「秋夜長物語」の意味・読み・例文・類語

あきのよのながものがたり【秋夜長物語】

  1. 南北朝時代の男色稚児(ちご)物語。一巻。作者未詳。比叡山の僧桂海と、三井寺の稚児梅若との悲恋と、それをめぐって起きた三井寺と比叡山の争いを描く。桂海は後に東山雲居寺を建立して膽西(せんさい)上人と仰がれる。

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百科事典マイペディア 「秋夜長物語」の意味・わかりやすい解説

秋夜長物語【あきのよのながものがたり】

南北朝時代成立の代表的な〈稚児物語(ちごものがたり)〉。作者不詳だが,《太平記》作者の一人とされ,漢詩文に長じた天台密教の僧玄恵〔?-1350〕との関係が想定される。三井寺(みいでら)の稚児で花園左大臣の子息の梅若丸と比叡山の律師桂海との愛と,それに関連して起こる両寺の争いを描く。梅若丸は入水し,それをはかなんだ桂海は離山,東山に籠り,瞻西(せんさい)上人と称した。梅若丸は実は石山観音の化身であったという。瞻西〔?-1127〕は平安後期の実在の能説の説教僧,歌僧で,洛東の地に雲居寺(うんごじ)を開いた。物語は,瞻西の《新古今和歌集》所収歌を取り入れるなどして,事実譚化を図っている。梅若丸の名は謡曲隅田川》にひきつがれ,また木母寺(もくぼじ)の縁起の形でも伝えられて,近松門左衛門の《双生隅田川(ふたごすみだがわ)》など浄瑠璃・歌舞伎のいわゆる〈隅田川物〉を形作った。
→関連項目御伽草子

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旺文社日本史事典 三訂版 「秋夜長物語」の解説

秋夜長物語
あきのよのながものがたり

室町初期の絵物語御伽 (おとぎ) 草子の先駆
14世紀後半の成立。作者不詳。僧侶と稚児 (ちご) との同性愛テーマとする稚児物語の系統に属する。『太平記』の影響が認められ,構想の妙と簡潔な文章で,この系統の作品中の傑作といわれる。

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