竹西寛子(読み)タケニシヒロコ

デジタル大辞泉 「竹西寛子」の意味・読み・例文・類語

たけにし‐ひろこ【竹西寛子】

[1929~ ]文芸評論家小説家広島の生まれ。出版社勤務ののち執筆生活に入る。小説兵隊宿」で川端康成文学賞、「管絃祭」で女流文学賞受賞。他に、評論往還の記」、評伝山川登美子」など。芸術院会員。平成24年(2012)文化功労者

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「竹西寛子」の意味・わかりやすい解説

竹西寛子
たけにしひろこ
(1929― )

評論家、小説家。広島市生まれ。早稲田(わせだ)大学国文科卒業。編集者生活を送り、かたわら同人誌『現代叢書(そうしょ)』に参加。1964年(昭和39)、古典と現代を「行き還(かえ)り」の手法で論じたユニークな古典論往還(おうかん)の記』を発表して田村俊子(としこ)賞を受賞。ほぼ同時期発表の、自己の広島体験に基づく『儀式』(1963)が女流文学賞候補になり小説家としても認められた。『源氏物語論』(1967)、『式子(しょくし)内親王・永福門院』(1972。平林たい子賞)、短編集『鶴(つる)』(1975。芸術選奨)、『兵隊宿(やど)』(1980。川端康成(やすなり)文学賞)、『春』(1982)、原爆悲惨と傷跡をテーマとした長編『管絃祭(かんげんさい)』(1978。女流文学賞)、エッセイ集『道づれのない旅』(1970)、『ものに逢(あ)える日』(1974)、『青葉の時へ』(1977)、『ひとつとや』(1981)、古典と現代を結ぶ26編の随想『庭の恵み――古人とともに』(1997)、8月6日の広島を裡(うち)に秘めながら未来への時を紡ぐ連作エッセイ『山河と日々』(1998)、歴史を超えた文学の愉楽を語る『文学私記』(2000)、『哀愁音色』(2001)、評伝『山川登美子(とみこ)』(1985。毎日芸術賞)、『日本の文学論』(1995)など多数の著作がある。古典論と「広島」が主要テーマであり、古典文学現代文学の問題として考える視点は一貫している。作家・評論家としての業績により、日本芸術院賞受賞(1994)。

[橋詰静子]

『『源氏物語論』(1967・筑摩書房)』『『青葉の時へ』(1977・新潮社)』『『筑摩現代文学大系97 竹西寛子他集』(1978・筑摩書房)』『『ものに逢える日』『道づれのない旅』(1985・彩古書房)』『『竹西寛子著作集』全5巻・別冊1(1996・新潮社)』『『庭の恵み――古人とともに』(1997・河出書房新社)』『河野多恵子ほか監修『女性作家シリーズ14 竹西寛子他集』(1998・角川書店)』『『山河と日々』(1998・新潮社)』『『文学私記』(2000・青土社)』『『哀愁の音色』(2001・青土社)』『『往還の記』『儀式』『鶴』(中公文庫)』『『ひとつとや』『続ひとつとや』(福武文庫)』『『式子内親王・永福門院』『管絃祭』『兵隊宿』『春・花の下』『山川登美子――「明星」の歌人』『日本の文学論』(講談社文芸文庫)』『渡辺実・竹西寛子対談「女の文章・日記――蜻蛉と更級」(『国文学』1981.1所収・学燈社)』『伊藤和也著『水について――竹西寛子幻想』(1998・砂子屋書房)』

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「竹西寛子」の解説

竹西寛子 たけにし-ひろこ

1929- 昭和後期-平成時代の評論家,小説家。
昭和4年4月11日生まれ。河出書房,筑摩書房勤務をへて文筆活動にはいる。昭和39年古典評論「往還の記」で田村俊子賞,53年小説「管絃祭」で女流文学賞,55年小説「兵隊宿」で川端康成文学賞。61年評伝「山川登美子」で毎日芸術賞。平成6年芸術院賞,同年芸術院会員。15年「贈答のうた」で野間文芸賞。24年文化功労者。広島県出身。早大卒。

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世界大百科事典(旧版)内の竹西寛子の言及

【原爆文学】より

…いつおそいくるかもしれぬ原爆症への不安と,壊れものとしての肉体へのいとしさと,死者への深い鎮魂の思いがみずからの人生と重ねられ,核時代の人間の祈りの声となっているのが特徴である。作品に林京子《祭りの場》(1975),《ギヤマンビードロ》(1978),《無きが如き》,竹西寛子《儀式》(1963),《管絃祭》,渡辺広士《終末伝説》(1978)などがある。第3は,原爆がもたらした悲劇を庶民の日常生活をとおして書き,文学史に残る傑作と称される井伏鱒二の《黒い雨》(1965‐66)のように,被爆者ではないが,広島,長崎と出会った良心的な文学者たちによって,さまざまな視点から広島,長崎,原水爆,核時代がもたらす諸問題と人間とのかかわりを主題とする作品が書かれた。…

※「竹西寛子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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