(読み)コ(その他表記)paste

翻訳|paste

デジタル大辞泉 「糊」の意味・読み・例文・類語

こ【糊】[漢字項目]

人名用漢字] [音]コ(漢) [訓]のり
のり。「糊着
かゆを食べる。生活する。「糊口
うわべをなする。ごまかす。ぼんやりする。「糊塗含糊模糊

のり【×糊】

米・麦などの澱粉質の物を煮て、粘りけを出させたもの。紙をはりつけたり、布地に張りをもたせたりするのに用いる。「のきいたシーツ
一般に、接着剤のこと。「合成

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「糊」の意味・読み・例文・類語

のり【糊】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 米・麦など澱粉質の物に水を加え、熱してできるねばりけのあるもの。物を接着させたり繊維物を整えこわばらせたりすることなどに用いる。
    1. [初出の実例]「又下白米弐升、右、合白土能理汁料」(出典:正倉院文書‐天平宝字六年(762)七月一日・造石山寺所食物用帳)
    2. 「紙細工をするには粘(のり)といふものを以てしたつれども」(出典:随筆・独寝(1724頃)上)
  3. 一般に、接着剤のこと。澱粉糊アラビアゴム・合成糊などがある。
  4. のり(血)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「糊」の読み・字形・画数・意味


人名用漢字 15画

(異体字)
17画

[字音]
[字訓] かゆ・のり

[字形] 形声
声符は胡(こ)。胡にゆるみ、ふくらむものの意がある。米などをやわらかく炊いたもの。粗末な食事にもいう。孔子の祖の正考父(せいこうほ)の鼎の銘と伝えるものに「是(ここ)に(せん)(かゆ)し是に鬻(ゐく)し、以て余(わ)が口を糊す」という語があり、辛うじて生活することを糊口という。

[訓義]
1. のり、かゆ、ねばる。
2. かゆをすする、貧しくくらす。
3. ねやす、こねる。

[古辞書の訓]
立〕糊 ネヤス 〔字鏡集〕糊 ネヤス・モラス・カユ・ヒサグ・アサリハミ・ウヱル

[熟語]
糊眼・糊口・糊紙・糊牆・糊塗・糊斗・糊突・糊・糊縫・糊名・糊弄・糊話
[下接語]
含糊・漫糊・模糊

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「糊」の意味・わかりやすい解説

糊 (のり)
paste

広い意味では接着剤。古くからのりといわれてきたものの代表にデンプンのりがある。これは,米や小麦,いも類などの穀物類のデンプンを水で煮て,熱と水の作用でデンプンの結晶(βデンプン)を破壊してできるαデンプンの,複雑な組成をもつ粘着性の溶液である。塗布後は水分が蒸発あるいは吸収されることにより固化し,αデンプンはβデンプンの結晶に戻っていく。こののりは紙などの事務用接着剤として用いられる以外に布の形を整え汚れを防ぐためにも用いられる。飯粒をへらでつぶして練ったものを続飯(そくい)といった。江戸時代にはこれに防腐剤を加えることが考案され,万年のりと称して用いられた。

 デンプン以外の天然物を原料とするのり状物質も多く,アカシア属の樹液で水に可溶性のアラビアゴム,動物の骨,皮,腱(けん)を水で煮て得られるゼラチンを主成分とするにかわ(膠),フノリツノマタなどの海藻からとれるアルギン酸のナトリウム塩などの海藻のりがあり,合成高分子物質ではポリビニルアルコールの水溶液やポリ酢酸ビニルエマルジョンなどがあり,接着剤として用いられ,あるいは食品の成形用や添加物として用いられる。

 繊維工業で用いられるのりには次のような種類がある。(1)たてのり 製織準備工程で経(たて)糸の製織性を高めるために用いられ,繊維間を接着して,製品に硬直性を与え耐摩耗性を強化する。水溶性デンプン,CMCカルボキシメチルセルロースの略。セルロースの水酸基の一部をカルボキシル基に変えたセルロースエーテル),ポリビニルアルコール,アルギン酸ナトリウムポリアクリル酸ナトリウムなどがある。(2)仕上げのり 形状を保ち,重量感,強度,光沢を与えるために用いる。デキストリン,植物ゴム,ゼラチンなどがあり,耐水性を必要とするときはポリ酢酸ビニル,尿素樹脂が用いられる。(3)捺染(なつせん)のり 染料や顔料を織物によく固着させ,水洗いによって完全に除去されるもので,フノリ,デンプン,デキストリンなどがある。
接着
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「糊」の意味・わかりやすい解説


のり

接着剤の一種。主として紙を貼(は)り付ける場合や、洗濯物の仕上げに用いるものを糊とよんでいる。古くは米などのデンプン質からつくったが、現在では化学的に合成したものが多い。事務用の糊には固型と液体があるが、原料によって次の3種に分けられる。(1)デンプン糊 もっとも古くからある糊で、デンプン質を水に溶いて煮たもの。平安時代から使われ、明治の中ごろまで姫糊とよばれて親しまれていたが、これは安価だが腐敗しやすいというのが難点で、最近は事務用に用いられることが少なくなってきた。(2)ゴム糊 アラビアゴムノキの分泌物を加工してつくるところから、アラビア糊ともよばれる。これは、空気に触れると固型化するという性質を利用している。(3)合成樹脂糊 ポリ酢酸ビニルやポリビニルアルコールなどの合成樹脂系の接着力を利用したもので、接着力が強く、腐敗しないので、一般事務用として広く普及している。固型のスティックタイプや、容器が使いやすいようにくふうされた液体状のものまで、手を汚さずに簡便に扱えるいろいろなタイプのものが市販されている。

 また洗濯糊には、ふのりなどの海藻糊が絹布などの仕上げや洗い張りに従来より用いられてきたが、最近ではどの繊維にも使えてしかも腐敗しないポリビニルアルコールなどの合成糊が、多く使われるようになった。

[野沢松男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「糊」の意味・わかりやすい解説

糊【のり】

物をはり合わせたり,織物の仕上げなどに用いられる接着剤。布地の仕上げ用としては,米粉,小麦粉,コーンスターチなどを水で煮たデンプン糊(白〜淡色の木綿,麻などの洗濯仕上げ用),フノリ,アルギン酸ソーダなどの海藻糊(絹の洗張りに適する)のほか,CMCやポリビニルアルコールなどの腐敗しない合成糊(各種繊維製品の仕上げ用)などが用いられる。糊付けすることにより,繊維製品は形状をよく保ち,表面が平滑になり光沢を増し,よごれのつきも少なくなる。文房具用糊としては,デンプン糊に香料(樟脳(しょうのう)など)および防腐剤(ホルマリンなど)を加えたもの,アラビアゴム糊,酢酸ビニル樹脂などの合成樹脂系のものなどがある。→接着剤

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

栄養・生化学辞典 「糊」の解説

 接着剤をいうが,狭義にはデンプンを水とともに加熱してアルファ化したものをいう.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【ペースト】より

…魚肉,レバー,トマトなどをすりつぶして柔らかく滑らかにした食品。例えばレバーペーストは,牛や鶏,豚のレバー(肝臓)をゆでて裏ごしし,バター,香辛料,調味料などを加えて練る。パンに塗って,そのまま食べたり,オードブルのカナッペなどに使う。トマトペーストは,トマトを煮て裏ごしして皮や種を除き,さらに煮詰めて水分を少なくしたもので,西洋料理の煮込みやソースなどの調味料として用いる。このほか,アンチョビーペースト,アーモンドペーストなどがある。…

※「糊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android