経覚私要鈔(読み)きようがくしようしよう

日本歴史地名大系 「経覚私要鈔」の解説

経覚私要鈔
きようがくしようしよう

八二冊

別称 鏡鈔・雑記・寺務方記・私要鈔・続要鈔・他寺探題日記・要記・要鈔・陋巷浮雲記・安位寺殿御自記・後五大院殿記

原本 内閣文庫

解説 興福寺大乗院院主経覚の日記で、応永二二年から文明四年に及ぶ。室町期の興福寺を中心として政治経済宗教芸能など各面にわたる信憑性の高い史料

活字本 「史料纂集」(昭和四六年より刊行中)

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「経覚私要鈔」の意味・わかりやすい解説

経覚私要鈔
きょうがくしようしょう

興福寺大乗院第18世門跡経覚の日記。『安位寺殿御自記(あんいじどのごじき)』ともいう。日次記(ひなみき)65冊と、別記(べっき)16冊の自筆本が国立公文書館に所蔵されている。日次記は欠失部分もあるが、1415年(応永22)から72年(文明4)にわたっている。別記には維摩会勅使引付(ゆいまえちょくしひきつけ)、他寺探題日記、能登岩井(のといわい)両河用水記、興福寺僧綱補任(そうごうぶにん)、細呂宜郷下方(ほそろぎごうしもかた)引付、大僧正一座宣事(だいそうじょういちざせんじ)、維摩会記、室町殿南都御下向事などがある。経覚は四度にわたり興福寺別当に就任した。その記述は、興福寺内の寺務、寺領支配をはじめとして、大和(やまと)国人の動向京都の政治情勢にまで及び、応仁(おうにん)の乱に至る激動期の政治、経済、社会研究の重要史料である。

小泉宜右]

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改訂新版 世界大百科事典 「経覚私要鈔」の意味・わかりやすい解説

経覚私要鈔 (きょうがくしようしょう)

興福寺大乗院第18世門跡経覚の日記。日次記65冊と別記16冊の自筆本が内閣文庫に所蔵されている。異称は《安位寺殿御自記》。日次記は応永22年(1415)から文明4年(1472)にわたるが欠失部分もある。記事は興福寺内の寺務,寺領支配をはじめ,大和国人の動向や京都の政治情勢にまでおよび,激動期の政治・社会・経済研究の重要史料である。《史料纂集》所収
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百科事典マイペディア 「経覚私要鈔」の意味・わかりやすい解説

経覚私要鈔【きょうがくしようしょう】

奈良興福寺大乗(だいじょう)院の18世門跡(もんぜき)である経覚の日記。《安位寺殿御自記(あんいじどのごじき)》ともいう。記事は1415年から1472年に及ぶが,失われた部分もある。室町期の興福寺の寺務や寺領支配,大和国の国人(こくじん)の動向,および京都の政治情勢などについても言及しており,当時の政治や社会などを知るうえで貴重とされている。
→関連項目府中

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「経覚私要鈔」の意味・わかりやすい解説

経覚私要鈔
きょうがくしようしょう

興福寺別当,大乗院 18世門跡経覚 (1395~1473) の日記。別名『安位寺殿御自記』『後五大院殿記』ともいう。現存するものは 82冊で,応永 22 (1415) ~文安1 (1444) 年はその一部,文安4 (1447) ~文明4 (1472) 年は大部分がある。室町時代を知る好史料。原本は国立公文書館蔵。 (→大乗院寺社雑事記 )

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「経覚私要鈔」の解説

経覚私要鈔
きょうがくしようしょう

「安位寺殿御自記」とも。室町時代の奈良興福寺大乗院門跡経覚の日記の総称。日次記(ひなみき)は65冊。1415~72年(応永22~文明4)を収めるが,欠失も多い。別記は16冊。一部重複するが,尋尊(じんそん)の「大乗院寺社雑事記」より早い時期を伝え,興福寺・南都研究の重要史料であり,京都の動静も記す。原本は内閣文庫蔵。「史料纂集」所収。

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世界大百科事典(旧版)内の経覚私要鈔の言及

【風流踊】より

…その後応仁の乱(1467‐77)で荒廃した京都を避けて,奈良で発展をみた盆の風流には,大がかりな作り物や囃子物に加えて,そろいの衣装や被り物で身を飾った踊り衆の姿が登場する。《経覚私要鈔》には,初めは〈ヲドリ念仏〉として出るが,文明1年(1469)7月17日条には,〈駒舞〉〈神輿振り〉などの風流の趣向にまじえて,紙で作った桶を頭にいただいた者20人ほどが踊ったとある。 16世紀に入るころには奈良の盆の風流は踊りが中心になり,踊り堂を建てた記事も見える。…

※「経覚私要鈔」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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