結納(読み)ユイノウ

デジタル大辞泉 「結納」の意味・読み・例文・類語

ゆい‐のう〔ゆひナフ〕【結納】

婚約成立のしるしに、両当事者かその親が金銭または品物を取り交わすこと。また、その儀式や金品
[補説]「言い入れ」を「ゆいいれ」となまり、それに当てた「結納」を湯桶ゆとう読みしたもの。

ゆい‐いれ〔ゆひ‐〕【結納】

《「言い入れ」を「ゆいいれ」となまり、「結納」を当てたもの》「ゆいのう」に同じ。
「婚礼の―に」〈艶道通鑑〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「結納」の意味・読み・例文・類語

けつ‐のう‥ナフ【結納】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 気心を通じあって力をあわせること。
    1. [初出の実例]「凡有才芸可観者。必傾心結納其人」(出典随筆山中人饒舌(1813)下)
    2. [その他の文献]〔後漢書‐馮異伝〕
  3. 婚約のあかしとして男女双方から品物をとりかわすこと。また、その品物。ゆいのう。
    1. [初出の実例]「か程事極り結納(ケツナウ)まで相済変改は以て離別同事」(出典:談義本・医者談義(1759)三)

ゆい‐のうゆひナフ【結納】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「いいいれ(言入)」の変化した「ゆいいれ」にあてた「結納」の湯桶読み ) 婚約が成立したしるしに、婿嫁両家が互いに金銭・品物を取りかわすこと。また、その金品。たのみ。納幣納采(のうさい)。ゆいいれ。ゆいれ。
    1. [初出の実例]「今川殿結納(ユヒノフ)の印として」(出典:浄瑠璃・歌枕棣棠花合戦(1746)一)

ゆいれゆひれ【結納】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「ゆいいれ(結入)」の変化した語 ) =ゆいのう(結納)
    1. [初出の実例]「井戸隣歌のゆいれは親不知」(出典:雑俳・江戸すずめ(1704))

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「結納」の意味・わかりやすい解説

結納
ゆいのう

婚姻に先だって、通例、男家から女家に(婿養子の場合はその逆)贈られる金品、およびその儀礼。受け取った側で約半分の金品を返すことがあり、結納返しという。近来では、一般に結納をもって婚約の成立としており、またその際の金品を将来婚姻生活の資とすべく、多額かつ豪華にしようとする傾向がみられる。しかし各地で酒入れ、樽(たる)入れ、茶のものといった名称が聞かれるように、結納に金銭を伴わず、品物も飲食の料とするのが古習である。つまり、仲人(なこうど)が酒と肴(さかな)を持参して女家を訪れ、縁談承諾を得れば、その場で酒を酌み交わして婚約を認めあうという風であった。そのとき婿自身も嫁側に行くことがあり、結納婿入り、婿一見(いちげん)などとよばれるように初婿入りの意味をもつものであった。このような共同飲食を通じて、両家は新たに共同労働たるユイの関係を結ぶ姻戚(いんせき)になるわけで、結納ということばもそのユイに基づくとの説がある。一方、結納をユイレ、イイレというのは言入れの訛(なま)りで、縁談の申し入れをさしたとする説もある。嫁入り婚が普及・発達するにつれ、酒入れやユイレは第一次の婚姻予約にすぎぬとされ、その後改めて金品を届け、婚約の確定を図るようになり、元来一つのものが二つの儀礼に分化した。しかも、後者の結納が重々しく考えられ、その作法小笠原(おがさわら)流などを範として整えられていった。近来、結納を期して正式の仲人をたてたり、祝言(しゅうげん)の日取りを決めたりする風も広く行われている。

竹田 旦]

結納の法律関係

結納は、婚約の成立を確認するために、当事者の一方から他方に、または双方がする贈与である。法律上は、婚姻が成立しなかった場合には、結納を受領した者は返還すべき義務を負う。婚約の破棄があった場合はもちろん、合意で婚約を解消した場合でも、返還義務がある。事実上のまたは法律上の婚姻が成立すれば、その後に離婚となっても、結納は目的を達したので、返還請求の問題は生じない。もっとも、事実上の婚姻が成立しても、同棲(どうせい)期間が短く、実質的にみて夫婦の共同生活が存在しなかったとみられうる場合には返還義務がある。また、自らの責任ある事由で婚約を破棄した結納の授与者からの返還請求を認めない裁判例が少なくない。

[石川 稔・野澤正充]

『太田武男著『結納の研究』(1985・一粒社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「結納」の意味・わかりやすい解説

結納 (ゆいのう)

婚約の意味をもって金品などを男方から女方へ贈る儀礼,あるいはその金品のことをいう。語義からは,ユイノモノすなわち家と家とが姻戚関係を新たにむすぶための共同飲食,またはその酒肴のこととされる。しかし,近世に言入,結入と記される例が多いことから,申込みを意味する〈言入レ〉がなまったものともいわれている。結納の内容は,双方の家の社会的位置の確認と関連し,女方からはその半額くらいを返すことが多い。儀礼への参加は女方の両親,親戚,近所の者と仲人などで,婚姻の社会的承認,女方との関係締結などの意義がみとめられる。婚約儀礼は,タルイレなどと呼ばれる酒肴をたずさえて行われる婚約内諾の儀礼を経て,次に結納の金品を納め婚約確定を行うという2段階をとる場合もある。婿入婚においては,このタルイレが婚姻成立儀礼であることが多く,以後金品を贈ることなく婚姻生活が開始された。結納が重要となったのは,嫁入婚,とくに村外婚が行われるようになってからとされる。結納は婚資bride-wealthの一種であり,その額は他社会と比べ少額の類に入る。
花嫁代償
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「結納」の意味・わかりやすい解説

結納【ゆいのう】

婚約成立のしるしに金銭や品物を贈ること。またはその金品。樽入(たるいれ),納采(のうさい)とも。品物は婿が嫁の家に持参する酒肴(しゅこう)から,次第に嫁の衣装や装身具が主となり,近年では金銭に目録を添える形が多い。嫁を買った代償のなごりとする説もあるが,日本の購買婚慣行は非常にまれである。
→関連項目初婿入り

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「結納」の意味・わかりやすい解説

結納
ゆいのう

婚約の印に婿方から嫁方に礼物を贈ること,またはその礼物。礼物は酒食の料で,衣装,金員を添える例が多く,地方によっては茶の包みを添える。また,結納を受けた嫁方からは,その約半額の返しをする慣行も広くみられる。明治以前には結納が入ると,それを受けた女性は初鉄漿 (はつがね。お歯黒の染料) をつけた地方もあり,婚約中の女性が万一死亡した場合は,婿方の墓地に葬ることもあった。すなわち,結納が婚姻の成立と同義的に考えられたわけであるが,今日ではそのような考え方は存在せず,結納の金品も,婚姻が不成立に終った場合は,その責任の有無とは関係なく,贈与者から贈受者に対し,その返還を請求できるとされている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

普及版 字通 「結納」の読み・字形・画数・意味

【結納】けつのう・ゆいのう

納幣。

字通「結」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内の結納の言及

【婚姻】より

…嫁入婚は現在もっとも標準的な婚姻形態である。 婚約の確定にあたっては結納をとりかわすが,古くは夫方,妻方双方が新たな姻戚関係をむすぶため共同飲食する酒肴のとりかわしだったと考えられるが,現在は金銭が主である。嫁入道具は嫁入婚にともなって重視されるようになったが,婿入婚ではきわめて少なく婚姻締結の要件ではない。…

【目録】より

…礼法では進物の目録を意味することが多い。進物目録は紙を半折した折紙を用い,結納目録の料紙は婿の官禄により大高檀紙など,平士は引合紙を用いた。書式も書札礼(しよさつれい)により決りがあり,〈目録〉の字は書かないのが法であるが,明治以後の結納目録には書いてあるものが多い。…

※「結納」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

スキマバイト

働き手が自分の働きたい時間に合わせて短時間・単発の仕事に就くこと。「スポットワーク」とも呼ばれる。単発の仕事を請け負う働き方「ギグワーク」のうち、雇用契約を結んで働く形態を指す場合が多い。働き手と企...

スキマバイトの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android