科学の各個別領域を、原理に基づいた一貫した体系として組織しようとする試みで、とくにウィーン学団のそれをさして用いられる。天文学、力学、化学、生物学などの科学のいろいろな分野を統一的に把握することは、古くから哲学者によって考えられてきたが、「統一科学」と固有名詞的にいわれるのは、その問題に対して、1930年代にウィーン学団の論理実証主義者によって試みられた考え方をさす。カルナップ、ノイラートらがその代表者である。論理実証主義者は、言語主義、還元主義、の二つの原理によって統一科学を試みた。
言語主義とは、科学の各分野の統一の問題を考えるにあたり、用いられている言語に注目して、その論理的な関係を分析し、公理的な演繹(えんえき)体系として統一科学を試みたことをいい、還元主義とは、科学の各分野すべてを一領域に還元できるという考え方であり、その領域としては、直接経験を表す感覚所与、あるいは物理学が考えられた。この二つの原理に対しては、論理実証主義の外部からさまざまな批判がなされたが、その内部でも、還元を実行しようとするとさまざまな困難のあることがわかり、当初の試みは挫折(ざせつ)し、統一科学ということばも、しだいに使われなくなっていった。
[横山輝雄]
『エイヤー著、吉田夏彦訳『言語・真理・論理』(1955・岩波書店)』▽『フィードラー著、岩崎允胤訳『自然科学と社会科学の統一』(1971・大月書店)』▽『ライヘンバッハ著、市井三郎訳『科学哲学の形成』(1955・みすず書房)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…また,論理実証主義の哲学者として,ウィーン学団の創設にあずかった。はじめ,マルクス主義的経済学を唱えたが,やがて,社会科学全体を物理学と同一方法による時空的経験科学とする物理主義へとおもむき,〈統一科学〉という運動を推進した。科学哲学国際会議を創始し,統一科学協会をハーグ(現在はボストンにある)に設立し,科学哲学の普及に尽くした。…
…その思想内容の特質は以下の諸点に要約されよう。(1)科学的世界把握 ウィーン学団の最初のテーゼは〈統一科学Einheitswissenschaft〉であった。すなわち,19世紀以降細分化の一途をたどってきた諸々の学問を統一し,その上に立って過去の多くの形而上学的世界観とは異なる〈科学的世界把握〉を行おうとするものである。…
※「統一科学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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