練・煉・錬・邌(読み)ねり

精選版 日本国語大辞典 「練・煉・錬・邌」の意味・読み・例文・類語

ねり【練・煉・錬・邌】

[1] 〘名〙 (動詞「ねる(練)」の連用形の名詞化)
[一] (練・煉)
① ねること。こねまわすこと。また、そのもの。
② 生絹(きぎぬ)膠質(こうしつ)を除去してしなやかにすること。また、それをほどこした糸や織物
※東遊(10C後)駿河舞「禰利(ネリ)の緒〈略〉の 衣の〈略〉 袖を垂れてや」
※浮世草子・西鶴諸国はなし(1685)二「菊梧の地無の小袖をかさね、帯は小の唐織に、練(ネリ)の薄物を被き」
③ すりつぶして練った餌(えさ)。練り餌。
④ 「ねりざけ(練酒)」の略。〔日葡辞書(1603‐04)〕
⑤ 火にかけてこね固めること。また、その具合
※滑稽本・七偏人(1857‐63)初「煉(ネリ)とも付かず蒸(むし)とも付ず変な味ゆゑ」
⑦ 巧みなことば。美辞麗句
万葉(8C後)四・七七三「事問はぬ木すらあぢさゐ諸弟(もろと)らが練(ねり)のむらとにあざむかれけり」
⑧ 牛が反芻(はんすう)すること。
咄本狂歌咄(1672)四「名にしおふ里は桂のあめ牛や月の夜すからねりをかむらん」
[二] (錬)
金属を精製すること。金属をやききたえること。また、その具合。
② 「ねりかね(錬鉄)」の略。〔十巻本和名抄(934頃)〕
[三] (練・邌)
公家行事庭上をねり歩くこと。ねり方に序・破・急があり、早練(はやねり)、遅練(おそねり)などという。練歩(れんぽ)
江家次第(1111頃)一「練作法有二」
祭りなどで列をなしてゆっくりと行進すること。ゆっくりと行進する行事。ねりもの。また、その行進する人。
[2] 〘接尾〙 (動詞「ねる(錬)」の連用形から) 錬りきたえたものを数えるのに用いる。
※水戸本丙日本紀私記(1678)神功鉄鋌(ねりかね)四十枚(よそネリ)

ね・る【練・煉・錬・邌】

[1] 〘自ラ五(四)〙 (練・邌)
① 静かに歩く。おもむろに歩く。
神楽歌(9C後)採物・剣「〈本〉奈良の都を 禰留(ネル)は誰が子ぞ」
※浮世草子・傾城色三味線(1701)江戸「太夫とおなじ顔して、練(ネッ)てゆくもおかし」
行列を整えてゆっくり進む。
※文明本節用集(室町中)「遅歩 ネル
③ あっちへ行きこっちへもどりなどして歩く。
[2] 〘他ラ五(四)〙 (練・錬・煉) 固いものやあらいものなどを、伸ばしたり固めたり煮たりして、やわらかいもの、使えるもの、質の良いものなどにする。
① 生絹の膠質(こうしつ)を除去して、しなやかにする。
※霊異記(810‐824)中「夫に随ひ柔(にこや)かに儒(やはら)かにしてりたる糸綿の如し」
② 木や蔓(つる)などをたたくなどしてやわらかくし、曲がりやすいようにする。
拾遺(1005‐07頃か)恋三・八一三「かのをかに萩かるをのこ縄をなみねるやねりそのくだけてぞ思ふ〈凡河内躬恒〉」
③ 皮類を撓(いた)めつくる。なめしがわにする。
④ 金属を焼いて鍛える。
⑤ こねまぜて、ねばるようにしたり、固めたりする。
※太平記(14C後)一八「泥に粘(ネラレ)たる魚の如にて」
⑥ 精製する。精錬する。
※夫木(1310頃)二五「伊勢のあまのねるやうしほのいくかへりからきおもひに身を焦がすらん〈藤原家良〉」
⑦ 詩文などの字句を十分に推敲(すいこう)する。計画、案などを何度も考えて修正・改良する。
※俳諧・物種集(1678)「今年大かた百に成もの 独吟をねりたいほとに練りつけて〈正信〉」
※小説神髄(1885‐86)〈坪内逍遙〉上「美妙巧緻の文章をもて其の模範となし師表となしもて其文を練(ネ)るべきなり」
⑧ 学問・技芸を練磨する。修養・経験を積む。また、肉体や精神をきたえる。
※ささめごと(1463‐64頃)上「仏法に最上醍醐味といへる、いかにもねれる心をいふなるべし」
[3] 〘自ラ下二〙 ⇒ねれる(練)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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