精選版 日本国語大辞典 「蔵人所」の意味・読み・例文・類語
くろうど‐どころ くらうど‥【蔵人所】
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令外官司(りょうげのかんし)の一つ。天皇の家政機関。810年(弘仁1)嵯峨(さが)天皇は初めて殿上(てんじょう)の侍臣を蔵人所に置き、機密の文書などをつかさどらせた。蔵人所の新設は薬子(くすこ)の変と関係があり、平城(へいぜい)上皇方に機密が漏れるのを防ぐため、腹心の藤原冬嗣(ふゆつぐ)、巨勢野足(こせののたり)らを蔵人頭(くろうどのとう)に任命したといわれる。以後、もっぱら天皇に近侍して、詔勅を諸司に伝達し、令制(りょうせい)の内侍(ないし)、中務(なかつかさ)、少納言(しょうなごん)、侍従などの職務にも関与し、殿上の諸事を切り回すようになった。その職員には別当1人、頭2人、蔵人8人、非蔵人4~6人、雑色(ぞうしき)8人、所衆(ところのしゅう)20人、出納(すいのう)3人、小舎人(こどねり)6~12人、滝口(たきぐち)10~30人、鷹飼(たかがい)10人などがある。別当は897年(寛平9)に大納言(だいなごん)藤原時平(ときひら)がなったのが初見。当初は中納言以上の公卿(くぎょう)が任命されているが、のちには一の上(かみ)がなるのが一般である。頭は殿上の諸事を切り回す事実上の担い手で、四位の殿上人をもって任命した。弁官より選ばれたものを頭弁(とうのべん)、近衛次将(このえのじしょう)から選ばれたものを頭中将(とうのちゅうじょう)という。頭は劇務であったが、参議への昇進も早かった。蔵人は888年(仁和4)位階によって分け、五位蔵人2人、六位蔵人6人とした。平安後期には五位3人、六位5人となる。非蔵人は蔵人の事務見習いのようなもの。雑色は非蔵人とともに六位蔵人に進む。所衆は殿上の雑事に従事し、また雑色、小舎人らとともに諸使を勤める。出納は蔵人所から発給する牒(ちょう)、下文(くだしぶみ)などの文書を作成し、署名する。滝口は主として内裏の警護にあたる。
[渡辺直彦]
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内裏校書殿(きょうしょでん)におかれた令外官(りょうげのかん)。810年(弘仁元)3月設置という。平城(へいぜい)上皇と対立した嵯峨天皇が,弁官局・衛府・式部省・中務(なかつかさ)省などの実務官人を殿上に常侍させて,訴訟・人事・軍事などの実権を掌握し,詔勅の速やかな伝達と機密保持を図ったもの。その後は,宮廷社会の管理・運営を担う機関として機能し,令制以来の内廷諸官司や新設の宮廷諸機関である禁中の各所(ところ)を統轄し,その活動を支えるために禁野・御薗(みその)・御厨(みくりや)などを領有した。11世紀後半以降は,諸種の供御人(くごにん)の本所的存在としてその特権を保証するとともに,彼らへの課税を重要な財源とした。職員には別当・蔵人頭・五位蔵人・六位蔵人・非蔵人・所雑色(ところのぞうしき)・所衆(ところのしゅう)・出納(しゅつのう)・小舎人(こどねり)などがあり,蔵人所牒・蔵人所下文などの文書を発給した。
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…身舎は一部を塗籠(ぬりごめ)とし,書籍を中心とする御物を収蔵したので,一名文殿(ふみどの)とも称する。西廂には北に蔵人所(くろうどどころ),南に校書所をおく。蔵人所では収蔵の書籍の校定や漢籍の講書を行うことがあった。…
… 貴族の住いである寝殿造は,所有者の地位や財力によって建築の規模も棟数も大きく違ってくるが,共通して見られる特徴を要約すれば次のようになる。(a)主人の居所である寝殿,家族の居所である対屋(たいのや)や庭園観賞のための釣殿(つりどの),泉殿(いずみどの),内向の施設である蔵人所(くろうどどころ),侍所(さむらいどころ),随身所(ずいじんどころ),車宿(くるまやどり),台盤所(だいはんどころ)など,独立した建築群から成り立っている。(b)それぞれの建物は廊または渡殿(わたどの)でつながれる。…
…
[供御人支配と公家新制]
律令制の弛緩,変質,荘園公領制の形成とともに,この二つの支柱のあり方も大きく変化する。権門,寺社の占取によって狭められた山野河海に対する支配は,この時期には交通路に対する支配として機能するようになり,天皇はそこをおもな活動の舞台とする商工民,芸能民などの非農業民に対し,天皇家の直属機関として設置された蔵人所(くろうどどころ),検非違使(けびいし)等を通じてその支配を及ぼした。遍歴して交易に携わらなくてはならない商工民,芸能民は,それまでにかかわりをもっていた内蔵寮,掃部寮(かもんりよう),造酒司(さけのつかさ)等のいわゆる内廷官司や,御厨子所(みずしどころ),納殿(おさめどの)のような小官衙を通して,各地の関,渡,津,泊(とまり)等における課税免除,自由通行権の保証を求め,供御人(くごにん)の称号を得て過所を与えられたが,この過所を発給したのはこれらの官司,小官衙を統轄した蔵人所であった。…
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