精選版 日本国語大辞典 「脹・膨」の意味・読み・例文・類語
ふくら【脹・膨】
〘名〙
※正倉院文書‐東大寺奴婢籍帳・宝亀三年(772)一二月三〇日「編首婢小䒾女 年廿一 鼻左福良黒子」
② 物の中心の部分。まんなか。中央。まっぷくら。
※玉塵抄(1563)五「冬のまん中ふくらの心ぞ」
※太閤記(1625)四「旗を立、物ふかう、勢のふくらを隠し備し処に」
※中原高忠軍陣聞書(1464)「一ふくらといふ事は弓一張のこと也」
⑤ 刀の切っ先に丸みのあるもの。
ふくら・む【脹・膨】
[1] 〘自マ五(四)〙
※石山寺本瑜伽師地論平安初期点(850頃)九八「青瘀想を初と為、脹(ほてフクラム)想を後と為」
※名語記(1275)五「おほきに、こえふくらみたればなるべし」
※滑稽本・続膝栗毛(1810‐22)八「おもひふくらみをっても、あんだのかだのと、おそくなったもんだんて」
[2] 〘他マ下二〙 ⇒ふくらめる(脹)
ふくれ【脹・膨】
〘名〙 (動詞「ふくれる(脹)」の連用形の名詞化)
① ふくれること。また、ふくれたところやもの。
② 刀身の地鉄の合わせ目に空気がはいってふくれあがっているもの。傷の一つ。
③ 狂言面の一つ。醜女をあらわす「乙御前(おとごぜ)」の一種。頬が特にふくれあがっていることによる名称。「比丘貞」「庵の梅」の老尼にも用いられる。
※わらんべ草(1660)四「狂言の面は、能の面をくづしたる也、笑尉を、のぼりびけにし、しゃくみを、ふくれになをし」
ふく・れる【脹・膨】
〘自ラ下一〙 ふく・る 〘自ラ下二〙
① 内から外へ張り出す。内が充満して外側に丸みを帯びて大きくなる。ふくらむ。
※竹取(9C末‐10C初)「風いとおもき人にてはらいとふくれ」
② 数量や規模が大きくなる。ふくらむ。
※ブルジョア(1930)〈芹沢光治良〉四「各テーブルは知合ひを集めて、脹(フク)れる」
③ 頬を、ふくらむようにする。ふくれっつらをする。不機嫌や怒りを面に表わす動作にいう。むっとする。
※俳諧・珍重集(1678)「しのびよる局の前にて是をなげき〈宗因〉 くひの八千世にふくれけるぞや〈葎翁〉」
ふくらみ【脹・膨】
〘名〙 (動詞「ふくらむ(脹)」の連用形の名詞化) ふくらむこと。また、ふくらんだ部分や程度。
※今昔(1120頃か)二九「先づ此の袴複らみの検非違使の装束を」
ふく・る【脹・膨】
〘自ラ下二〙 ⇒ふくれる(脹)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報