脹・膨(読み)ふくら

精選版 日本国語大辞典 「脹・膨」の意味・読み・例文・類語

ふくら【脹・膨】

〘名〙
ふくらんでいること。ふくれていること。また、その部分やそのもの。
正倉院文書‐東大寺奴婢籍帳・宝亀三年(772)一二月三〇日「編首婢小䒾女 年廿一 鼻左福良黒子」
② 物の中心の部分。まんなか。中央。まっぷくら。
※玉塵抄(1563)五「冬のまん中ふくらの心ぞ」
太閤記(1625)四「旗を立、物ふかう、勢のふくらを隠し備し処に」
③ 弓の上下の湾曲した部分の名。〔名物六帖(1727‐77)〕
④ 一張りの弓の長さ。弓場馬場などの縦横の長さや施設配置の距離を計る時の単位として用いる。杖。
※中原高忠軍陣聞書(1464)「一ふくらといふ事は弓一張のこと也」
⑤ 刀の切っ先に丸みのあるもの。
⑥ 植物「そよご」の異名
※俳諧・本朝文選(1706)三・賦類・閑居賦〈汶村〉「樟ふくらの名木求む

ふくら・む【脹・膨】

[1] 〘自マ五(四)〙
① 物が、その内部からの力によって外側に丸みを帯びて大きくなる。ふくれる。
※石山寺本瑜伽師地論平安初期点(850頃)九八「青瘀想を初と為、(ほてフクラム)想を後と為」
名語記(1275)五「おほきに、こえふくらみたればなるべし」
② 考えや計画の規模が大きくひろがる。また、芽生えた気持度合が大きくなる。「計画がふくらむ」
朝霧(1950)〈永井龍男〉「良英の選んだ女性は又とない人だといふ確信が、良英への友情と共々、日増しに私の胸にふくらんで来た」
③ 動詞の連用形に付けて補助動詞的に用い、その動作のはなはだしいことを表わす。
滑稽本・続膝栗毛(1810‐22)八「おもひふくらみをっても、あんだのかだのと、おそくなったもんだんて」
[2] 〘他マ下二〙 ⇒ふくらめる(脹)

ふくれ【脹・膨】

〘名〙 (動詞「ふくれる(脹)」の連用形の名詞化)
① ふくれること。また、ふくれたところやもの。
万葉(8C後)一六・三八二一「美麗物(うましもの)何所飽かじを尺度(さかど)らが角の布久礼(フクレ)にしぐひあひにけむ」
② 刀身の地鉄の合わせ目に空気がはいってふくれあがっているもの。傷の一つ。
狂言面の一つ。醜女をあらわす「乙御前(おとごぜ)」の一種。頬が特にふくれあがっていることによる名称。「比丘貞」「庵の梅」の老尼にも用いられる。
※わらんべ草(1660)四「狂言の面は、能の面をくづしたる也、笑尉を、のぼりびけにし、しゃくみを、ふくれになをし」

ふく・れる【脹・膨】

〘自ラ下一〙 ふく・る 〘自ラ下二〙
① 内から外へ張り出す。内が充満して外側に丸みを帯びて大きくなる。ふくらむ。
※竹取(9C末‐10C初)「風いとおもき人にてはらいとふくれ」
② 数量や規模が大きくなる。ふくらむ。
※ブルジョア(1930)〈芹沢光治良〉四「各テーブルは知合ひを集めて、脹(フク)れる」
③ 頬を、ふくらむようにする。ふくれっつらをする。不機嫌や怒りを面に表わす動作にいう。むっとする。
※俳諧・珍重集(1678)「しのびよる局の前にて是をなげき〈宗因〉 くひの八千世にふくれけるぞや〈葎翁〉」

ふくらみ【脹・膨】

〘名〙 (動詞「ふくらむ(脹)」の連用形の名詞化) ふくらむこと。また、ふくらんだ部分や程度。
※今昔(1120頃か)二九「先づ此の袴複らみの検非違使の装束を」

ふく・る【脹・膨】

〘自ラ下二〙 ⇒ふくれる(脹)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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