デジタル大辞泉
「臍ヘルニア」の意味・読み・例文・類語
さい‐ヘルニア【×臍ヘルニア】
へその部分に起こったヘルニア。へその部分に腸などが入り込んでとび出した状態。小児では生後3か月くらいに起こることが多く、ふつう、ひとりでに治る。
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さい‐ヘルニア【臍ヘルニア】
- 〘 名詞 〙 ( ヘルニアは[ラテン語] hernia ) 臍(へそ)の部分の抵抗が弱いために、そこから腸管などが皮膚の下に出た状態をいう。出べそ。〔医語類聚(1872)〕
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臍ヘルニア
さいヘルニア
Umbilical hernia
(子どもの病気)
小児では外鼠径(がいそけい)ヘルニアの次に多い病気で、小児期特有の病気です。
臍帯付着部の臍輪閉鎖不全が原因です。臍輪の下方には正中臍靭帯、外側臍靭帯があり、上方には肝円靭帯があります。とくに臍上部が弱く、出生までに臍輪が閉じられない場合に、激しく泣くことや、怒責(腹部に力を入れてりきむこと)などの腹圧上昇因子が関係して臍ヘルニアが発症します。
発症には人種差があり、有色人種に多い傾向にあります。正常新生児の5~21%、未熟児は出生体重1000~1500gで84%にみられるといわれています。
安静時に円形のヘルニア門を臍部に触れます。啼泣、怒責によりヘルニア門を通り、皮下に腸管が脱出します。
指で圧迫すると、腸管はグル音(腸管が腹腔内にもどる時の音)を伴って容易に還納できるので、これで確定診断ができます。臍ヘルニアで痛みがある場合は、大網がヘルニア嚢に癒着していると考えられます。小児の臍ヘルニアの嵌頓(腸管がヘルニア嚢内に陥入し、腸管血行障害を起こすこと)は極めてまれです。
乳幼児期に自然に治る可能性が高いので、まずは手術はせずに外来で経過観察します。生後1年以内に80~95%が自然に治ります。2歳までに治らなければ外科的治療を行います。成人の場合は、臍ヘルニア内に腸管嵌頓が起こる頻度が高いので、発見次第、外科的治療をします。予後は合併症がなければ良好です。
藤原 利男
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家庭医学館
「臍ヘルニア」の解説
さいへるにあでべそ【臍ヘルニア(出べそ) Umbilical Hernia】
[どんな病気か]
臍(へそ)の緒(お)が乾燥してとれた後、臍の根元が十分に閉鎖(へいさ)されていない場合、泣いたりいきんだりしたときに内臓が皮下まで脱出して臍がふくらんだ状態になるものです。小腸(しょうちょう)や大網(たいもう)(胃の周囲の脂肪組織)が脱出していることが多いのですが、指で押すと容易に腹腔(ふくくう)に戻せます。鼠径(そけい)ヘルニアのように嵌頓(かんとん)をおこすことはほとんどありません。
[検査と診断]
飛び出た臍を指で押し戻すと、皮膚のすぐ下の腹壁(ふくへき)に小指ないし人差し指が通るくらいの欠損部(けっそんぶ)(孔(あな))があります。臍の出っ張り具合よりも、この孔の大きさが自然治癒(しぜんちゆ)と関係しています。
[治療]
90%くらいは1歳までに腹壁の孔がしだいに縮まって自然に治ります。放置しておいてもかまいません。
腹壁の孔(ヘルニア門)が2cm以上と大きい場合や、2歳以後の臍ヘルニアは自然治癒が期待できず、手術(図「臍ヘルニアの手術」の手術後)が必要になります。手術の傷は臍のしわに合わせるので、目立ちません。
[日常生活の注意]
よく十円玉を臍に当てて絆創膏(ばんそうこう)で圧迫する人がいますが、自然に治る場合の治り方に差が出るわけではありませんし、皮膚かぶれをおこしかねませんから、やめたほうがよいでしょう。
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臍ヘルニア(その他,腹膜疾患)
(3)臍ヘルニア(umbilical hernia)
いわゆるでべそのこと.出生後臍帯が脱落した後は横紋筋膜で覆われて臍となるが,この筋膜による被覆がうまくいかないとその欠損部から腸が脱出し臍ヘルニアとなる.5%くらいの乳児にみられ,大半は1~2歳までに自然治癒し,合併症を伴うことはまれ.診断は視診,触診で容易.たいていは無治療で問題ないが,スポンジによる圧迫法も行われる. 成人の臍ヘルニアは自然治癒傾向に乏しく,手術治療の対象になるものが多い.[藤沢聡郎・松橋信行]
■文献
Debrock G, Vanhentenrijk V, et al: A phase II trial with rosiglitazone in liposarcoma patients. Br J Cancer, 89: 1409-1412, 2003.
Saab S, Hernandez JC, et al: Oral antibiotic prophylaxis reduces spontaneous bacterial peritonitis occurrence and improves short-term survival in cirrhosis: a meta-analysis. Am J Gastroenterol, 104: 993, 2009.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
臍ヘルニア【さいヘルニア】
小児臍ヘルニア,臍帯ヘルニア,成人臍ヘルニアの3種がある。小児臍ヘルニアは,いわゆる出臍(でべそ)で,新生児期の腹腔の容積が内容物に対して小さいため,臍帯の通っていた臍輪から腹圧が加わったときに腸がとび出て,その部分の皮膚が嚢状にふくらんだもの。生後1〜2ヵ月で目立つ。大きなもの(径5cm以上)でないかぎり,放置しても1年前後でなおる。絆創膏(ばんそうこう)や銅貨をあてる素人(しろうと)療法は,皮膚の炎症の原因となり,効果もないため避けたほうがよい。大きいものは医師の手当,手術を要する。成人臍ヘルニアは女性に多く,妊娠,腹水,肥満などの腹壁拡張が誘因となる。
→関連項目出べそ|ヘルニア
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臍ヘルニア
さいへるにあ
臍帯(へその緒)は出生と同時に結紮(けっさつ)され、生後1週前後で乾燥して脱落するが、臍帯が脱落した跡の臍輪はしばしば閉鎖が不完全で、大声で泣いたりいきんだりして腹圧が加わると、臍輪から皮膚に覆われた腸管が突出してくる。これを臍ヘルニアといい、俗に「出べそ」ともよばれるが、発生異常で臍帯内に腸管が脱出している臍帯ヘルニアとは異なる。
生後1~2週で発生し、5~6か月ころまでに自然に治癒することが多い。程度に差はあるが、新生児の5~10%にみられるといわれ、未熟児、とくに極小未熟児では高率にみられ80%に達する。放置しても前述のように自然治癒することが多いので、治療は原則としては行わない。硬貨を当てて絆創膏(ばんそうこう)で固定するのは、接触皮膚炎をおこしたりして益がない。ただし、非常に高度なものに対しては特殊な絆創膏固定が考慮され、2、3歳になっても治癒しない場合は手術が考慮される。
[山口規容子]
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臍ヘルニア
さいヘルニア
umbilical hernia
臍 (へそ) の突出したもので,いわゆる出べそ。分娩時の臍帯切断の際の過誤または体質により臍部筋膜の裂口が大きくて,そこから小腸が皮下に出るヘルニア。手術が必要なことが多い。いったん臍輪部が閉鎖したのち,妊娠や肥満など臍ヘルニアが起る成人型のものもある。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の臍ヘルニアの言及
【ヘルニア】より
…外ヘルニアとしては[鼠径(そけい)ヘルニア]が最も多く,ヘルニアの代表的疾患で,子どもに多くみられるが,成人に発生することもある。臍(さい)ヘルニアumbilical herniaは,弱い部分であるへそに腸がとび出す,いわゆる〈出べそ〉で,乳幼児に多くみられる。生まれつきの大きな臍帯の中に内臓が脱出するのは臍帯ヘルニアomphalocele herniaで,皮膚が欠損しているため外から内臓を見ることができる特異なヘルニアである。…
※「臍ヘルニア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」