温帯低気圧(読み)オンタイテイキアツ

デジタル大辞泉 「温帯低気圧」の意味・読み・例文・類語

おんたい‐ていきあつ〔ヲンタイ‐〕【温帯低気圧】

温帯寒帯で発生する低気圧前線を伴う。
[類語]気圧高気圧低気圧熱帯低気圧移動性高気圧気圧配置気圧の尾根気圧の谷西高東低南高北低圧力

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精選版 日本国語大辞典 「温帯低気圧」の意味・読み・例文・類語

おんたい‐ていきあつヲンタイ‥【温帯低気圧】

  1. 〘 名詞 〙 温帯で発生した低気圧。日本付近では春や秋に頻繁に通過する。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「温帯低気圧」の意味・わかりやすい解説

温帯低気圧
おんたいていきあつ
extratropical cyclone

中・高緯度で発生,発達する低気圧東西波長は数千km。地球のような回転球面上の大気では,南北に温度傾度があると鉛直に平均流のシアー風速風向がある方向,たとえば垂直または水平に変化している割合)が存在する。このような状態は,流体力学的に不安定で,最も発達率の大きい(2~3日で波の強さが 2倍になる)波長数千kmの波動(渦)が発達する。これが中・高緯度の移動性高・低気圧の発達機構で傾圧不安定性といわれる。このような波動(渦)に伴って南側の暖気は上昇しつつ北上し,北側の冷気は下降しつつ南下する。すなわち,最初同じ高度に南側の暖かくて軽い空気と,北側の冷たく重い空気が並んでいる状態は位置のエネルギーを余分にもっているが,不安定波動発達の過程で位置のエネルギーは一部解放されて,運動エネルギーに変わり,さらに渦を強め発達する。これらの渦運動は南北の空気を入れ替えることによって,熱を赤道側から極側に運び,今日の中緯度における南北温度傾度を実現している。つまり,この高・低気圧渦は水平対流ということができる。傾圧不安定理論,すなわち温帯低気圧の発達理論は,1947年アメリカ合衆国のジュール・チャーニー,1949年イギリスのエリック・イーディにより,それぞれ独立に完成され,第2次世界大戦後の気象力学の発達につながった。

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改訂新版 世界大百科事典 「温帯低気圧」の意味・わかりやすい解説

温帯低気圧 (おんたいていきあつ)
extratropical cyclone

亜熱帯高気圧帯よりも北方南半球では南方)でみられる低気圧で,発生する領域,条件,発達に際してのエネルギー変換台風などの熱帯低気圧と異なるので,この名称で区別されている。その大きさは日本付近では半径700~1500kmのものが最も多い。温帯低気圧の発生する領域では偏西風が高さとともに増大していて,この西風の増大率は南北の温度差に比例していく。このような流れの中では,南北の温度差が作る位置のエネルギーが運動のエネルギーに変わって,特定の大きさの低気圧が形成されることが理論上示されている。温帯低気圧は,この理論上の低気圧に対応するとすると,その大きさ,低気圧の通過する周期などがよく説明される。発達中の温帯低気圧は南下する寒気塊と北上する暖気塊で構成されていることも特色の一つである。
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百科事典マイペディア 「温帯低気圧」の意味・わかりやすい解説

温帯低気圧【おんたいていきあつ】

温帯または寒帯に発生する低気圧。ふつう低気圧といえば温帯低気圧をさす。寒暖両気団の境目の前線上で発生するため前線性低気圧ということもある。初め水平方向に相接した寒暖両気団のうち,寒気団が沈降し暖気団が上昇して垂直方向に重なり合う際の位置のエネルギーの減少分がエネルギー源となる。等圧線は長円形。熱帯低気圧より大きい。夏よりも冬のほうが多く発達し強い。前線上に温帯低気圧が発生すると,中心の東側に温暖前線,西側に寒冷前線ができ前線が波を打った形になる(波動性低気圧)。低気圧が発達すると寒冷前線が温暖前線に追いつき,中心付近で閉塞前線ができ始め,やがて閉塞前線が不明瞭になり,低気圧は前線をもたない渦巻(うずまき)になって衰弱し消滅する。次々に発生した低気圧が一つの前線上を進むと幼年期から老年期の低気圧が並ぶ。これを低気圧家族という。
→関連項目低気圧閉塞前線

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「温帯低気圧」の意味・わかりやすい解説

温帯低気圧
おんたいていきあつ

中緯度または高緯度で発生する低気圧。周りに比べて気圧が低くなっていて、その中心に向かって風の吹き込んでいるところが低気圧である。低気圧のうち、熱帯の洋上に発生するものを熱帯低気圧という。熱帯低気圧以外のものは普通は単に低気圧とよばれるが、これをとくに熱帯低気圧と区別する必要がある場合に温帯低気圧とよぶことがある。

 たとえば、熱帯低気圧が発達して台風となって北上し、やがて熱帯産としての特質を失うに至ったとき「台風第○○号は、温帯低気圧になった」というように用いる。略して温低とよぶこともある。熱帯低気圧との区別に用いる限りでは「熱帯外の低気圧」とよぶほうがより正確な用語法であり、温帯低気圧はもともとあいまいな用語といえる。熱帯低気圧が同一気団中の擾乱(じょうらん)であるのに対し、温帯低気圧は異なる気団の接する前線上の擾乱であると、通常は定義されている。なお、日射による加熱などで局地的に発生する小規模な低気圧は、その発生地が温帯であったとしても、温帯低気圧とはよんでいない。

[平塚和夫]

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世界大百科事典(旧版)内の温帯低気圧の言及

【低気圧】より

…今日では気象衛星を使って大気圏の外から,低気圧に伴う雲,つまり低気圧の外観をとらえることができる。 低気圧は温帯から極の間にできる温帯低気圧と熱帯地方にできる熱帯低気圧に分類されている。これは単に発生域の地理的な違いだけでなく,その構造,成因も異なるからである。…

※「温帯低気圧」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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