平安朝以来の幼学書であった唐の李瀚撰(りかんせん)『蒙求』諸話の約半数を句題に和歌を詠み、原注を和訳して添えた作品で、1204年(元久1)源光行(みつゆき)が著す。将軍源実朝(さねとも)に献上したか。同年『百詠和歌』、『楽府(がふ)和歌』(散逸)とあわせて三部作とした。14巻。四季と、恋、祝、旅、閑居、懐旧、述懐、哀傷、管弦、酒、雑と14部に構成。中国の詩句を題に和歌を詠むことは平安朝初期より行われたが、『蒙求和歌』は、和歌より、原作の注を翻訳した説話に重点が移行しており、中世に盛行した説話が漢籍を多く摂取していくうえでの先駆的役割をも果たしている。また、当時の日本人が読み、いまや佚亡(いつぼう)の状態に近い古注『蒙求』を知るうえでの重要資料でもある。
[池田利夫]
『池田利夫著『日中比較文学の基礎研究』(1974・笠間書院)』
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